※ 隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ 過去現在未来。嫉妬 31 ~
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帰宅してから数分か数十分、玄関で過ごしていた。
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その時間を正確に測ることは出来ないが、靴を脱ぎベッドを目的地に歩きだした時に若干足に違和感を覚えた程には、立ちっ放しだったようだ。
片手の指を絡ませて、愛羽さんが私を誘導するように前を行く。
二人分の足音が私の部屋に響いて、狭い部屋ではすぐに、目的地に到着した。
これから何をするのか理解している二人がベッドに向かう道中、愛羽さんはどんな心境だったのかは分からないが、少なくとも私は異様に心臓の音が大きかった。
人生で未だ、ラブホテルという場所に足を踏み入れた経験はないが、もしかすると、今みたいな心境になるのかもしれない。
期待と下心と相手への好意が入り混じった落ち着かない気持ちだった。
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愛羽さんに手を引かれてベッドの横に立つ。私を見上げた彼女との視線の高さに、玄関に居たときよりも広がりを感じる。
ヒールを脱いだ彼女の身長が、数センチ低くなっているからだ。
やはり人間小さいものや人には無条件に愛らしさを感じてしまうのだろうか。ほっこりするものを感じて、彼女の頭を撫でようかと手を上げかけた。
その瞬間、私は、強く腕を引かれて、バランスを崩してベッドに横向きに倒れ込んだ。
一瞬、状況が分からずに目を白黒させたが、どうやら、繋いでいた手を引っ張られて、同時に反対の手で肩を横方向に押され、強引すぎるやり方で、ベッドに寝かしつけられたようだ。
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いつの間にか、繋いでいた手も解かれていて、なんだか人をベッドに鎮めることに慣れているように思えた。それは経験値の差であり、また、その経験を積むにあたって関係をもった人物の数を思わせる。
と、そこで思い出す、蓉子さんの存在。
「ちゃんと、教えてくれるんですよね?」
右肩を下にして横向きに倒れていた体勢から、顔を上げて尋ねる。私の視線の先に居た愛羽さんは、タイトスカートがずり上がるのも気にせず、ベッドにあがり、膝をつく。
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私を見下ろしたその人は、家に戻ったにも関わらずジャケットも脱いでいない。
愛羽さんは基本的に家に帰るとすぐにお風呂に入って部屋着になるので、こうしてスーツ姿で居るのは朝の出掛ける準備に忙しなくしているときくらいだ。
よく知っている人なのに、服装が珍しくて少し緊張する。
「蓉子さんとの関係って言っても、特になにもないのよ」
何もないのなら、どうしてあんなにも親しげだったのか説明がつかない。
私や店長にとって畏怖の存在でもある蓉子さんに易々とボディタッチできるだなんて、ただならぬ関係としか思えないのだ。
思考が疑いの目を彼女に向けてしまったようで、愛羽さんは困ったように眉尻を下げつつ、手を伸ばして私の左肩を押した。
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押されるままに、ころんとベッドに仰向けになる。
「社会人になりたての頃に、蓉子さんのバーに行って、そこからずっと通ってるってだけよ?」
社会人になりたての頃というと、もう数年前の事ではないか。
つまり、私以上に、関係が長い。
愛羽さんは、「んーしょ」と仰向けの私を跨ぐ。
斜め上に、未だ疑いの視線を送ると、彼女は困ったように首を軽く傾げた。
何をどう言えば信用してもらえるかと思案しているのだろう。
「ああほら」
思いついたように握った拳から人差し指一本を立ててみせる。
「蓉子さんと付き合ってたとしたら、女の人と恋愛する事悩んだりしないでしょう?」
女の人と言いつつ、立てた人差し指をこちらに向ける愛羽さんは、自信ありげにしているが……。
「蓉子さんはオトコですよ」
私の一言でカックリと項垂れた。
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