※ 隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ 過去現在未来。嫉妬 27 ~
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とす、と胸に額を預けた愛羽さんが、蚊の鳴くような声でぽつり。
「ごめんなさい」
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泣きたいのはこっちのほうなのに、愛羽さんが泣きそうな声で謝るもんだから、私はその体に両腕をまわして、抱き締めた。
エレベータの扉が閉まり、上昇時特有の圧が体にかかる中、私は彼女のふわふわの髪に唇を押し当てる。
「ごめん。調子に乗った」
「うそつきはきらいです」
チン、とエレベータの扉が開いた。
名残惜しくも彼女を抱き締める腕を緩めて、手をとり指を絡ませる。そのまま歩きだしてエレベータから降りると、大人しく後ろをついてくる彼女。
二人分の足音がマンションの廊下に木霊する。
私は彼女の手を握ったまま愛羽さんの部屋を通り過ぎて、ポケットから鍵を取り出した。
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施錠を外して、扉をくぐり、彼女を扉の内へと引き込む。
「ごめんね雀ちゃん」
靴も脱がずに再び謝罪を繰り返そうとした愛羽さんの手を離し、言葉を遮るように肩を押して壁にその背を預けさせる。
横ではパタンと扉が閉まる音がしたから、そちらに目も向けず鍵を閉めた。
さっきまで彼女の手の温もりを感じていた手を壁について、驚いた瞳で見上げてくる愛羽さんの唇を奪う。
シャムに居た時からのさまざまな感情をぶつけるようなキスで、多分、息継ぎの間も与えていなかったと思う。
けれど、そのくらいはさっきの嘘の代償だと言い訳をつけて、私は愛羽さんの唇を堪能した。
もちろん、堪能したのはその柔らかい唇だけではなくて、その奥に潜む熱を帯びた舌もだ。
まだ足りない、と思うものの、さすがに、愛羽さんが苦しげに私の肩をタップしてくるものだから、仕方なくキスを解いた。
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どうやら、私が思っていた以上に、愛羽さんに息継ぎの間を与えていなかったようで、100メートル走を全力疾走してきたみたいな荒い呼吸で酸素を貪る彼女を前にして、さすがにやりすぎたかと反省する。
「蓉子さんとの関係、ちゃんと教えてくれたら、さっきの嘘は許してあげます」
「ちょ……いま、の……キスは……?」
嘘の代償だと愛羽さんも思っていたようで、途切れ途切れにこのキスで嘘を許してはもらえないのかと訴えてきたが、こちらとしては蓉子さんとの関係性を白日のもとに晒してもらわないと、消滅した私の自信は戻ってこない。
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「駄目。今夜はもう、絶対、いう事は聞いてもらいます」
彼女にしてみれば、嘘の罪の代償にしては大きすぎる要求。だけど、曲げる気はない。
そんな内心を、瞳からのぞき込んだ愛羽さんは、諦めたように、溜め息をひとつ。それから、眉尻を下げて申し訳なさそうな表情をうかべた。
「雀ちゃんのやきもちが可愛くて欲張り過ぎた罰ね」
先程肩をタップした手が私の頬をするりと撫でてから、項へと回る。
「ごめんなさい」
引き寄せられた私は、彼女の囁きを耳にすると同時に、唇を重ねた。
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