隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ 26話


※ 隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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  ~ 過去現在未来。嫉妬 26 ~

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「ふふ」

 酔っ払いというのは基本的に楽しそうだけど、愛羽さんはさらに1滴、愉快を混ぜたような声で小さく笑った。

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 つん。と頬に人差し指があてられる。

「雀ちゃんあかーい」

 そして、更に実況までされる。
 自覚はある。だって、顔が熱いんだもの。

 恋人に、二人きりだと安心して余計酔いが深くなると言われて、嬉しくない人なんてこの世の中いないと思うんだ。

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「……帰りますよ」

 酔っ払いにここまで翻弄されるとは……、なんて頭で思いつつ、口を一文字に引き結ぶ。
 愛羽さんの掴まっている腕から、その指が解けないように気遣いながら、私はやはり、家路を急いだ。

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 そろそろ自宅のあるマンションが見えてこようかという時。
 私は隣を歩く愛羽さんの酔いがすこし醒めてきたのだと覚る。彼女の足取りが、しっかりしたものに変わってきたからだ。

「そういえば、愛羽さん」

 私は少し前に発した言葉と同じそれを口から零して、彼女のふわふわの髪を見下ろした。

「んー?」

 間延びした声が応えて、あぁ今はほろ酔い気分なのだと知る。
 その程度の酔いならば、会話は意味を成すだろう。

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「愛羽さんと蓉子さんの関係って?」
「……んん?」

 彼女達2人がシャムに姿を現した時からずっと気になっていた。
 それを口にした途端、我慢して抑えていたどす黒い感情が腹の底から解放されて、つい、愛羽さんを見下ろす瞳に熱が篭った。

 ちょうど、マンションのエントランスをくぐったところだったので、灯りはばっちり。夜道とは違って、私の表情もよく観察できたことと思う。

 こちらを見上げた愛羽さんは微かに目を見開いた。

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 そんなふうに、驚いた反応を返されると、自分の顔がどれだけ嫉妬に染まっていたのかと恥ずかしくなり、私はエレベータを呼ぶボタンを3度ほど連打した。

「ねぇ、雀ちゃん」
「なんですか」

 あぁだめだ。こんな、拗ねたみたいな声で応えちゃ。あからさまに、嫉妬してますって言ってるようなものじゃないか。
 自分の幼さに、穴があったら入りたいほどに恥ずかしい。

 愛羽さんの顔も見れずに、エレベータの階数表示のパネルを見上げる。

「蓉子さんと、何があったか、知りたい?」

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 エレベータ前の少し広い空間での発言は、エコーがかって、私の耳に届いた。

 ……どうして、そんな言い方をするのか。それは、何かあったと明言しているようなものじゃないか。

 血の気が引くような感覚。

 ちっぽけだけど、私の中に存在した”愛羽さんの恋人である自分の自信”が急速に縮んでゆく。いや、縮むと言うよりは消滅していくと表現したいくらいだ。

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「ごめん、嘘」

 チン、とエレベータが到着してその扉が開く。
 エレベータの到着音と重なった愛羽さんの声は確かに、嘘と言った。
 だけどまだ、私のちっぽけな自信は消滅し続けているし、彼女の「嘘」だという発言も信用できるものがない。

「蓉子さんとは何もないから」

 やけに真剣な声が、嘘臭く聞こえてしまうくらいには、私は、動揺しているみたいだ。
 エレベータに乗り込み、奥の鏡前まで足を進めて、くるりと180度反転する。

「……」
「……」

 どうしてそんな嘘をつくのか。
 本当はどういう関係なのか。

 色々言いたいことや聞きたいことはあるけれど、とりあえず。
 エレベータが閉まるかもしれないのに、その前で立ち尽くして、酔いも醒めたような顔をしている愛羽さんに向かって両手を広げた。

「うそつきは、きらいです」

 ハグ待ちの私の腕の中に、彼女は静かに歩いてきて、胸に額を預けてきた。

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