※ 隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ 過去現在未来。嫉妬 15 ~
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蓉子さんが愛羽さんをカウンター席へとエスコートする。
ちゃっかり店長の真正面の席を陣取るのは相変わらずだ。
ああやって、よく分からないプレッシャーを与えてくるのが蓉子さんの常套手段。
本人曰く、『いざって時のために、こういう圧に耐える訓練はしておかないといけない』らしい。
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「すーちゃん、呼んだの?」
うーん。蓉子さんが居るとなると、いつもみたいにまったりと愛羽さんのお酒の相手は出来ないぞ。
すこしだけ残念に思っていると、横からさも嫌そうな声音を隠しもせずに、店長。
愛羽さんと蓉子さんが連れ立ってやってきたから、私の差し金かと思ったんだろうけれど、まったく身に覚えはない。
そもそも、愛羽さんと蓉子さんが知り合いでつながりがあっただなんて、知らなかったんだから。
なんなら今すぐにでも愛羽さんに「どういうご関係で?」と尋ねたいくらいなのに。
「いいえ?」
知らない知らないと首を横に振ってみせると、店長も二人の関係に疑問をもちその答えを求めたくなったのだろう。
気持ちを切り替えるように深く息を吐いた。
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それから一度瞬きをした店長は、流石だ。
顔付きをいつものシャムを取り仕切る店長の顔に変えて、席に着いた二人を見比べ、愛羽さんに視線を落ち着けた。
「まさか、アナタがアタシの師匠と知り合いだっただなんてね」
店長の台詞に同調するように、私は横でおしぼりの準備をしながら小さく何度も頷いた。
驚いた様子の愛羽さんはすぐさま、隣の席でコロコロと笑う蓉子さんを責める。
まぁもちろんのこと、悪びれる様もなく「聞かれなかった」という理由で片付ける蓉子さん。
だけど、愛羽さんはその意地悪な返答にムッとして、なんと、蓉子さんの肩を小突いたのだ。
いや、そんな大したものではない。
表現するならば、”ちょん”とか”ぽん”とかその程度のものなんだけど、店長や私から見れば「師匠に手をあげるだなんて……!!」と悲鳴をあげたくなる状況だった。
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まさか、店長や私が蓉子さんを小突くだなんて事は今まで一度もあったことがない。
だから蓉子さんがどんな反応を示すのか、予想も出来なかったんだけど……。
特に気分を害す訳でもなく蓉子さんはクスクスと笑い続けていた。
あんなことをしても許される関係、ってこと?
……ますます、二人の関係性が分からない。
「愛羽にバーテンの彼女が出来たって聞いた頃は、どこの店のどの子かしらって思っていたんだけれど、まさか、怜の所の雀だっただなんてね」
蓉子さんはカウンターに肘をついて手に頬を預ける。
「言っておくけれど、確信したのはさっき信号待ちしてた時よ?」
と付け加えながら私と店長を交互に眺めてくる視線は、なんだか色っぽい。
どうも愛羽さんとは長い付き合いのようで、私と彼女が付き合い始めたときから知っていたようだ。
そんな人物が居ただなんて、なにかこう、むずむずする。
気恥ずかしさもあって、はにかみながら蓉子さんに、熱いくらいだったおしぼりを広げて軽く冷まして差し出した。
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次は愛羽さんにおしぼりを、と思っていると、彼女はまたもあろうことか、蓉子さんを横目でにらむ。
「……確信したのはさっきでも、見当ついていたのはいつ?」
「内緒」
「……絶対相当前でしょ」
ど、どうしてこんなにも強気なんだ愛羽さん。
蓉子さんにここまで食って掛かる人、今まで見た事ないぞ。
いつ蓉子さんの怒りを買ってしまうかとハラハラしながら、私は愛羽さんにおしぼりを差し出した。
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私からおしぼりを受け取った時には、一瞬こちらを見て微笑んでくれる愛羽さん。細められた瞳に”ありがとう”と言われたみたいで、それまでとのギャップに心臓が跳ねた。
そんな私の内心など、露知らず、愛羽さんは軽くため息をついた。
「ほんと、いじわるなんだから」
「ほら、すきなコほどいじめたくなるっていうじゃない?」
「それすると好きなコから嫌われやすいって知ってる?」
「愛羽は私を嫌いになれないもの」
当たり前の事を告げるように、蓉子さんがサラリと言ってのけた。
若干、唇を尖らせているものの、否定もせず頬を軽く染めている愛羽さんのカオが、蓉子さんの台詞を肯定していた。
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