※ 隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ 過去現在未来。嫉妬 5 ~
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わたしが口を開きかけた時、目の前にぱっと開いた手が出された。
「待って。ここじゃなくて囲炉裏行きましょう」
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ピザ職人の由香理さんが来るからなのか、マスターの言葉で席を移動したわたしたち。
靴を脱いで囲炉裏の傍へ座ると、さっきまでは黒々しかった炭が、赤々と燃え始めていて、暖かかった。
「それで? 何がどう変わって不安なの?」
不安……ふあん、なのかしら、わたし。
マスターの言葉に自分の知らない心理を言い当てられたのか、軽く、心が揺れた。
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つい先日の、雀ちゃんとのえっち。
わたしから誘った……と言うのだろうかアレは。
というのも、前日立ち寄った雑貨屋さんで見たハロウィン仕様の店内にちょっとだけウキウキしてしまって、そのままのテンションで雀ちゃんに悪戯をしかけてしまったのだ。
まぁ……元々いちゃいちゃしたいなぁとは思っていたんだけど。
下剋上というか、どんでん返しというか。
わたしの詰めが甘いとでも言うのか。
あ。と気付いた時には、雀ちゃんが優位に事を進めていた。
でも、うん、まぁ、そこまではいい。
そこまでは。
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けれど、雀ちゃんときたら、ストッキングを破ってもいいか、だなんて、若干、アブノーマルな世界への扉を開きかけた要求をしてくるんだもの。
まぁ穴も開いていたし、いいか、と軽くOKを出してしまったわたしもわたしなんだけど……。
破られるストッキングの音。
穴の開いたそこから入り込む指。
果ては、服を脱がず、破られたストッキングを履いたまま下着を横にずらしてのアソコへの愛撫。
着衣セックス、と表現しても過言ではないその行為に……興奮した自分が居た。
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そのあと、ベッドへ移動してからの行為の中でも、雀ちゃんからの要求に応える形であったとしても、今までのわたしでは出来なかったこともするようになった。
他にも、自ら、彼女を求める言葉を淫らに、誘うように、甘えるように、口にした。
行為の最中、理性を凌駕する性的欲求があったとはいえ、例えば前の彼氏との行為ではあんなこと……出来なかった。
なのに、雀ちゃんとだと……。
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ぽつぽつと話をして、あらかたの事情の説明がおわる頃には、先程店に入ったピザ職人の由香理さんが香ばしい香りを店内に漂わせ始めた。
さっきからピザ職人ピザ職人と言っているが、由香理さんはもともとここで働いているバーテンダー。
ピザ好きが高じて、自宅でも本格的なピザを焼くほどになったそうだ。
「なるほどねぇ……」
しみじみ、という言葉がしっくりくる程しみじみと呟いて、マスターは組んでいた腕を解いた。
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「愛羽からそういう類の話を聞くのは、前の彼以来かしらね?」
「よく覚えていらっしゃる」
数多の客からこんなふうに悩み相談されているだろうに、よく記憶にあるものだ。
驚きと称賛の目を向ければ、なんの自慢げもなく鼻で笑われた。
「取引先の人間の好みくらい、愛羽も覚えていられるでしょう? それと同じよ」
「マスターとは対応人数の規模が違うってのはよく知ってるわ」
こっちは名刺の裏に書いておくって手もあるけれど、多分、マスターはそんなものはなくて、自分の記憶ひとつで、百人以上のお客さんの特徴、お酒の好み、趣味、悩み、タブーな話題を把握している。
わたしなら絶対無理だ。
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「私の話はいいのよ」
由香理さんが焼きたてのピザの皿を持ってきてくれて、マスターが受け取る。
わたしが会釈をすると、ほんわりとした笑顔を浮かべて「ごゆっくり」とカウンターへ戻っていった。
あれぞ、癒し系女子といった感じだけど、九州出身で、かなりのザルらしい。
「はい。しっかり食べなさい。あなた痩せたでしょう?」
「え」
言ってない。仕事が忙しくて痩せただなんてこと、雀ちゃんくらいにしか。
なのにズバリ言い当てて、ピザをずいずいと勧めてくるこのひとの洞察力や観察眼には感服する。
「顔の肉が落ちて老けて見えるわよ」
「食べます」
即答して、わたしは出来立てアツアツのピザに手を伸ばした。
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