※ 隣恋Ⅲ~急ぐ鼠は雨にあう~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ 遅ればせながら 35 ~
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「みたい、じゃなくて。好きだから」
悔し紛れに、言い返した。
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彼女とは生きてきた年数も違えば、付き合った人数だって違う。
どちらも上回る愛羽さんに勝てるのは、彼女の理性が半壊して快感に溺れているときだけだ。
まるきり私と同じようなキスを繰り出してきたと思ったら、最後に、私の下唇を軽く噛んで吸って放すという……こう……なんと言えばいいか分からないエロさを上乗せしてくる。
またそれにドキドキして振り回されたから、悔し紛れを吐いてしまうけれど……。
「嬉しい」
と、華麗に、甘やかに、受け止めて、包み込まれた。
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「でもね? 雀ちゃん」
私の後頭部にまわっていた手が髪を梳き撫でながら、離れていく。
引き寄せる手がいなくなると寂しさを覚えてしまうのは、もう、完全に愛羽さんの魅力に負けているからだろうか。
離れた手はどこへ向かうのかとその行方を、シーツの擦れる音で窺う。どうやら、布団の中へ向かうらしい。
肩から上が布団の外にあるから、寒くなったのかもしれない。
「いっぱいして、飽きられちゃうとこまるから」
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彼女の言葉を理解すると同時に、そんなことある訳ないと反射で言い返そうと口を開いた瞬間。
右手首を掴まれた。
「っ」
驚きに口を噤むと、愛羽さんはうっすらと目を細めて、私の手首を握る指に力を込めた。
「今日は、おしまい」
中途半端な位置で彼女のナカに留まっていた指を、愛羽さんが自ら、引き抜く。
ぬ…る、と彼女の力加減でゆっくりと外へ出される三本の指。
「……ふ…ぁ…ッ…」
ゾクゾクする。
どうしよう。
どうしよう。
止まらない。
だって、目の前で、愛羽さんが。
自らの手で私の指を引き抜いて……まるで、何か大人の玩具を使っているみたいに。
自分のタイミングで抜いている筈なのに、上擦る声を漏らして。
それまでじっと私を見上げていたくせに、声を漏らす自分を恥じるみたいに少し視線を逸らして、切なそうに吐息をこぼして。
そんな姿を見せておいて、「今日はおしまい」だなんて。残酷すぎる。
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愛羽さんを抱くことに飽きるだなんて、ありえない。
何回したって、何回イク姿を見たって、飽きたりしない。
だから……。
抱きたい。
「愛羽さん」
つ、ぷ。と彼女のナカから指が完全に抜けるのと、私が彼女の名を余裕のない声で呼ぶのは、同時だった。
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抜け落ちた指を、また、彼女のナカへ戻したい。
また、犯して、声を上げさせて、私を、求めさせたい。
「だぁめ」
ドス黒い狂暴な性欲がふつふつと腹の底に溜まり始めたとき、愛羽さんの右手の人差し指がピトリと私の唇に触れた。
「駄目」
二回も駄目と言われても、煽ったのは愛羽さんだ。責任をとってもらわなくては。
「その気持ちは、次にとっておいて」
「?」
何を、とっておけって?
欲しくて欲しくて欲しくてたまらないひとが、目の前に居るのに。
どうして手を伸ばしてはいけないのか。
たぶん、責めるような目つきをしたのだろう。
愛羽さんは優しい苦笑を浮かべてから、私を宥めるみたいに指の甲で頬を撫でた。
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「わたしね?」
諭すような言い聞かせるような、柔らかい声音。
「雀ちゃんに求めてもらえるの、すごく好きなの」
「だったら」
抱かせて、と言う前にまた、唇に指を当てられる。
しかも今度は「しーー」という音声つきだ。
不満な顔をしつつも黙った私に小さく笑みを浮かべた愛羽さんは、甘い視線をこちらへ投げて寄越す。
「次のえっちも、いっぱい愛して欲しいから、次まで、その”欲しい気持ち”とっておいてくれないかなぁ?」
あああ神様。どうして、彼女に、こんなにも可愛い部分と、策士のような強かな部分を与えてしまったんですか。
こんな。
……こんな、可愛いことを言われてしまったら……、背を走る悪寒に似た快感や、腹の底に溜まっている性欲を、握り潰して蹴とばして、彼女を抱き締めるしか、できないじゃないか。
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