隣恋Ⅲ~急ぐ鼠は雨にあう~ 35話


※ 隣恋Ⅲ~急ぐ鼠は雨にあう~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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  ~ 遅ればせながら 35 ~

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「みたい、じゃなくて。好きだから」

 悔し紛れに、言い返した。

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 彼女とは生きてきた年数も違えば、付き合った人数だって違う。
 どちらも上回る愛羽さんに勝てるのは、彼女の理性が半壊して快感に溺れているときだけだ。

 まるきり私と同じようなキスを繰り出してきたと思ったら、最後に、私の下唇を軽く噛んで吸って放すという……こう……なんと言えばいいか分からないエロさを上乗せしてくる。

 またそれにドキドキして振り回されたから、悔し紛れを吐いてしまうけれど……。

「嬉しい」

 と、華麗に、甘やかに、受け止めて、包み込まれた。

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「でもね? 雀ちゃん」

 私の後頭部にまわっていた手が髪を梳き撫でながら、離れていく。
 引き寄せる手がいなくなると寂しさを覚えてしまうのは、もう、完全に愛羽さんの魅力に負けているからだろうか。

 離れた手はどこへ向かうのかとその行方を、シーツの擦れる音で窺う。どうやら、布団の中へ向かうらしい。
 肩から上が布団の外にあるから、寒くなったのかもしれない。

「いっぱいして、飽きられちゃうとこまるから」

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 彼女の言葉を理解すると同時に、そんなことある訳ないと反射で言い返そうと口を開いた瞬間。
 右手首を掴まれた。

「っ」

 驚きに口を噤むと、愛羽さんはうっすらと目を細めて、私の手首を握る指に力を込めた。

「今日は、おしまい」

 中途半端な位置で彼女のナカに留まっていた指を、愛羽さんが自ら、引き抜く。
 ぬ…る、と彼女の力加減でゆっくりと外へ出される三本の指。

「……ふ…ぁ…ッ…」

 ゾクゾクする。
 どうしよう。
 どうしよう。
 止まらない。

 だって、目の前で、愛羽さんが。
 自らの手で私の指を引き抜いて……まるで、何か大人の玩具を使っているみたいに。
 自分のタイミングで抜いている筈なのに、上擦る声を漏らして。

 それまでじっと私を見上げていたくせに、声を漏らす自分を恥じるみたいに少し視線を逸らして、切なそうに吐息をこぼして。

 そんな姿を見せておいて、「今日はおしまい」だなんて。残酷すぎる。

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 愛羽さんを抱くことに飽きるだなんて、ありえない。
 何回したって、何回イク姿を見たって、飽きたりしない。

 だから……。

 抱きたい。

「愛羽さん」

 つ、ぷ。と彼女のナカから指が完全に抜けるのと、私が彼女の名を余裕のない声で呼ぶのは、同時だった。
 

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 抜け落ちた指を、また、彼女のナカへ戻したい。
 また、犯して、声を上げさせて、私を、求めさせたい。

「だぁめ」

 ドス黒い狂暴な性欲がふつふつと腹の底に溜まり始めたとき、愛羽さんの右手の人差し指がピトリと私の唇に触れた。

「駄目」

 二回も駄目と言われても、煽ったのは愛羽さんだ。責任をとってもらわなくては。

「その気持ちは、次にとっておいて」
「?」

 何を、とっておけって?

 欲しくて欲しくて欲しくてたまらないひとが、目の前に居るのに。
 どうして手を伸ばしてはいけないのか。

 たぶん、責めるような目つきをしたのだろう。
 愛羽さんは優しい苦笑を浮かべてから、私を宥めるみたいに指の甲で頬を撫でた。

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「わたしね?」

 諭すような言い聞かせるような、柔らかい声音。

「雀ちゃんに求めてもらえるの、すごく好きなの」
「だったら」

 抱かせて、と言う前にまた、唇に指を当てられる。
 しかも今度は「しーー」という音声つきだ。

 不満な顔をしつつも黙った私に小さく笑みを浮かべた愛羽さんは、甘い視線をこちらへ投げて寄越す。

「次のえっちも、いっぱい愛して欲しいから、次まで、その”欲しい気持ち”とっておいてくれないかなぁ?」

 あああ神様。どうして、彼女に、こんなにも可愛い部分と、策士のような強かな部分を与えてしまったんですか。

 こんな。

 ……こんな、可愛いことを言われてしまったら……、背を走る悪寒に似た快感や、腹の底に溜まっている性欲を、握り潰して蹴とばして、彼女を抱き締めるしか、できないじゃないか。

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