隣恋Ⅲ~急ぐ鼠は雨にあう~ 34話


※ 隣恋Ⅲ~急ぐ鼠は雨にあう~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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  ~ 遅ればせながら 34 ~

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 私が頷くのを見ていたはずなのに、愛羽さんはじっと、まだ私を見つめ続ける。

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 数秒かけて、それが催促のサインなのだと理解して、軽く咳払いをした。

「…えと…、……欲しい」

 改めて問われると言いづらい。
 そのうえ、私の口からどんな言葉が紡がれるのか理解していながら、なおもそれを聞きたいと視線で訴えてくるひとが目の前に居る場合は余計に。

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「んふふ、そっかぁ」

 私の両頬を包み込んだ手が嬉しそうに肌を撫でる。
 語尾のあがった台詞からも愛羽さんが喜んでいるのだと分かるけれど……。

「嬉しいの?」

 散々、乱暴とさえ言えるような快感を与え続けられて、何度もイカされて、それでもまだ、もう1ラウンドしようかと機会をうかがっているようなヤツを目の前にして、喜ぶだなんて。

 愛羽さんは生粋のドMなのだろうか……?

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「そりゃあ、ね?」

 喜ぶのはもちろん当然のこと、と言わんばかりに笑顔を見せるけれど、こちらからすればどうも納得いかない。

 憮然としたまま、右手をゆっくりと引く。

 なんというか、不意打ちで仕掛けたり、もしくは若干嫌がられたり「もうカラダが追い付かないから……」とか拒否されているのを押し切って快感に落とし込むのが楽しいのであって、こんなふうに、ウェルカムばっちこいと構えられるとどうも、調子が狂う。

 なんとなく揶揄われているような気配もするし、ここらで愛羽さんの余裕を崩しておきたい。

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 三本指を引き抜くフリをして、どこかのタイミングで再び挿入してやろう、と狂暴な考えを抱く私の胸中を知ってか知らずか、愛羽さんは下腹部の疼きに軽く眉を寄せた。

「は…っん…ん……」

 私が暫く右手を動かさなかったから、油断していたのかもしれない。
 思わず、と言ったふうに息を吐き出して、快感を耐えるみたいに私の耳の後ろの髪をきゅうと握った。

 くしゅと髪が擦れる音を聴きながら、微かに震える指に口元を緩める。
 こんなにも素直に、まだ私からの快感を受け入れてくれる彼女には、もっと快感を与えなくてはいけない。

 そう思い、引き抜きかけた右手の三本指を押し込もうとする寸前。
 愛羽さんに名前を呼ばれた。

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「好きよ」

 甘ったるいその声に、優しさが混ぜ込まれていて、さらに、私を見上げる瞳が大好きなのだと伝えてくるものだから、私の心臓がギュッとなる。

「そうやって意地悪しながらでも、わたしのこと、求めてくれるの…すごく嬉しいの」

 耳裏の髪を握っていた手が緩んで後頭部へと回り、引き寄せられる。

「わたしのこと、好きって言ってくれてるみたいで」

 嬉しいの。
 と続ける愛羽さんの瞳から、目が逸らせない。
 挿れようとしていた指は当然のようにその動きを止めていて、私は引かれるままに、彼女に顔を寄せた。

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 重なる唇が甘いと味覚すら錯覚を覚えて、身体が震えた。
 私が上で覆いかぶさっている体勢で、私が攻めている側だった筈なのに、瞼をきゅっと閉じて身体の芯に走る快感に小さく震える私が今、ここにいる。

 お返しと言わんばかりに、唇を啄んで、舐めて、こちらの口内に舌を挿し込んで絡めてくる愛羽さんのキスはさっきの私がしたキスとまったく同じ手順。
 違うのは舌を絡める動き方くらいなものだったけれど、どうして愛羽さんにかかると、こんなにもえろくなるのか。

 いや、もう、えろい、というよりはイヤラシイと表現した方がいいような、ねっとりとした動き。
 私は急いて快感を求める感じのキスだけど、愛羽さんのは余裕と色気が半端じゃなく盛り込まれているキスだ。

 絡めていた舌がゆっくりと口内から抜けていく。それも舌同士を擦り合わせながら出てゆくのだ。追いかけて、縋って、再びキスしたくなるような名残りを置いていく。

 大人の余裕とテクニックを見せ付けられて、私は翻弄されるしかなかった。

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