※ 隣恋Ⅲ~急ぐ鼠は雨にあう~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ 遅ればせながら 33 ~
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汗ばんだ肌から熱が立ち昇る。
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二人を覆う布団の中は、もう随分と暑い。
ソファからこっちに来たときには布団が冷えていて、寒いくらいで風邪の心配をするほどだったのに、いつの間にこんなに温度があがったのか。
未だに激しく胸を上下させながら呼吸を整えようとしている愛羽さんを見下ろしつつ、自分の背中が汗を刷いているのを感じる。
じっとりと濡れた肌に吸水性の悪い毛布が触れて、妙な不快感が生まれる。
けれど今の私は、絶頂の余韻に浸る愛羽さんの姿を目に焼き付けることに意識が行きすぎていて、濡れた毛布の不快感など些末なことだった。
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「ふ…ぁ……」
整える呼吸に伴って漏れる声が、甘ったるい。
まるで1杯のコーヒーカップに角砂糖を5個とミルクをたっぷり入れたみたいだ。
もう少し落ち着くのを待ってあげたほうがいいのは解っている。
解っているのだけど、心が、待てないと駄々をこねる。
イッたばかりよりは随分と落ち着いてきたけれどまだ乱れた呼吸をしているその唇を、今すぐ奪ってしまいたい。
そんな甘ったるい声を聞かされると、また、腹の底から加虐心が沸きあがってきてしまいそうになる。
だから……。
だから、甘ったるい声を出させなくするために、口を塞ぐのだ。
言い訳を胸中に置いて、私は愛羽さんに顔を寄せた。
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「へ? んっ…む……」
ぼんやりとしていた所に突然私の顔が近付いたように思えたのか、すこしだけ驚いた顔をした愛羽さんの唇を奪った。
くぐもった声をあげる愛羽さんに構わず、唇を啄み、舌先で撫でる。
余韻があるのか、すぐに唇を薄く開いて受け入れてくれた彼女の口内へと侵入して、舌を絡めた。
「……ふ…、ぅん……」
ああ……駄目だ。
これは、いけない。
脳内に警鐘が鳴り響くけれど、舌に触れる柔らかな感触とキスで余計甘ったるくなった声に侵食された理性が正常に働かない。
眼裏に焼き付いた扇情的なあの姿を、もう一度、見たいと欲望が頭を擡げそうになる。
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「……、っ」
枕に広がる髪や濡れた瞳。縋りつくようにシーツを引く手、浮き出る鎖骨。
風呂あがりのように上気した頬、堪え切れず嬌声を漏らす唇。
思い出せば思い出す程、興奮がよみがえり、欲してしまいそうになる。
「……っ、は……っ」
キスの合間、私から漏れた声。
まさか、想像…というか回想だけで軽く喘いでしまうとは。
驚くと同時に、これが最後のチャンスだとばかりに、ほんの僅かに残った理性を総動員させて、彼女と距離をあけた。
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いつの間にか閉じていた瞼をあけて、彼女を見下ろせば、ちょうど同じように瞳をこちらに向けたところだった。
とろりとした婀娜を湛えて私を映すその瞳に見惚れて目を逸らせずにいると、愛羽さんのその瞳がゆっくりと弧を描いた。
「もっと欲しそうなカオ、してる」
「うっ……」
ご名答。言い当てられて、狼狽える。
そんなに物欲しそうな顔だったのか……。
すでにあんなに何度も彼女を頂いたあとに厚かましいと思われてしまっただろうか。
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焦りと決まりの悪さに狼狽えている私の頬に、愛羽さんの手が触れた。
包み込むみたいに両の頬を両手で挟まれて、うろついていた視線が自然と愛羽さんの方を向く。
「あんなにしたのに、まだ欲しいと思ってくれるの?」
「え……」
責めるでも叱るでも怒るでも嫌うでもない。
そんな声色が意外で、きょとんとしてしまう。
「欲しい?」
どことなく彼女は嬉しそうな目をしていて、さらにそれを、優しく細める。
そんな様子から多分、愛羽さんが悪い気は抱いていないんだろうなと察することが出来て、私は小さく頷いた。
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