隣恋Ⅲ~急ぐ鼠は雨にあう~ 29話


※ 隣恋Ⅲ~急ぐ鼠は雨にあう~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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  ~ 急ぐ鼠は雨にあう 29 ~

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 今のは、と言いながら、私は目を細めた。

「誰と比べて言ったの?」

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 まぁ確かに。確かに確かに確かに。
 苛め過ぎたのは認めよう。
 私の勝手な欲求を満たすために、愛羽さんにドコソコが気持ちいいからもっと触って、とか言わせたがって、意地悪を沢山してしまったことも認めよう。
 しかし、だ。彼女の発言。

 暗に、愛羽さんが”童貞の子”と致した事があると言われた気がした。

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 愛羽さんの両腕を押さえつける手に、無意識に力が加わる。
 もしかしたら、手を外せば赤くなっているかもしれない、と頭の隅で思うけれど、力を抑えられない。

 だって、愛羽さんの顔には「しまった、失言した」と書いてある。
 この手を拘束されていなければ、口元を手で覆い隠すジェスチャー付きだったかもしれないくらいには、”やってしまった”感満載だった。

 つまりそれは、愛羽さんが過去、どこぞの童貞君を相手したことがあるという事実。

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 愛羽さんが過去に身体を重ねた相手が男でも女でも、私は嫉妬すると思う。

 しかし、童貞君となると、さらに、嫉妬度合が高まる。

 だって、こんな美人のお姉さんに、初めてを優しく指導されてみろ。羨まし過ぎるじゃないか。
 その童貞に別れを告げたのが、愛羽さんの方であっても、童貞君は幸せな初体験を味わったのだからフラれても良いだろうと思う。いや、良しとしないといけないとさえ、思う。

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「え、っと雀ちゃん違うの」
「何が違うって? そんな顔しておいて」

 そう。”失言してしまった”と言わんばかりの表情をしておいて、何が違うのか。それこそ、そうやって言い訳をしようとしている時点で、過去の体験を認めているようなものだ。

「いいよ。愛羽さんが言う通りにしてあげる」
「?」

 言う通り? と言いたげに愛羽さんが片方の眉を軽く上げる。
 以前愛羽さんから何かの話の折に、社会に出て人と喋る機会が増えるようなら、表情豊かな方がなにかと得をするから、意識的に今からやっておくといいわよ。と勧められたけれど、今、それは仇になっている。

 彼女がなにをどう思っているのか、大体表情から読める。
 だから手のひらで転がしやすくなっている。

 何事も、時と場合によるものなのだ。

「一応、貴女の身体はよく知っているから、童貞じみたことはもうしない。安心して」

 にっこりと間近で笑顔を浮かべてみせると、愛羽さんは顔を引き攣らせた。
 そんなにも私の笑顔は怖かったのだろうか。

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 仕切り直しのように、ナカから指を引き抜く。

「ひん…っ」

 入り口からさほど深くは入っていなかったのに、そんな名残惜しそうな声を出して。
 そんなに私を誘いたいのだろうか。

 嫉妬心を滾らせた私の脳裏にふと過ぎる邪推。
 あぁ私を怒らせたくて「童貞」などというワードを出して来たのか。
 それならば、やはり先程愛羽さんにも宣言した通りに、私が知る限りの性感帯を襲い尽してあげよう。

 そうして、私を怒らせた事を、快感の渦の中で後悔すればいい。 

「どうしようか。気を失うまでやってみようか」

 抜いた指で入り口の左右のヒダをゆっくりと撫でる。私の指が濡れているのか、それともナカから溢れ出た愛液がヒダまでも濡らしているのか。
 つるりと滑りの良いヒダを撫でつつ、愛羽さんの揺れる瞳を見下ろす。

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 まったく本当にけしからん事だ。
 「童貞」なんていうキーワードを出して「しまった」の次は、「どうしよう」と戸惑いをみせておいて、さらにその後、「期待」を滲ませた彼女の瞳。

 気を失うまでやるだとか、狂気の沙汰だ。それなのに、Sっ気のある言葉に興奮したのか、愛羽さんはもの欲しそうな目をしている。

 可愛いにも程があるし、エロいにも程がある。

「愛羽さんの気持ちいいトコ、全部、触ってみようか」

 やってやろうか、と口では言うのに、指はまだヒダを辿るのみ。
 その差のもどかしさに愛羽さんが腰を揺らし始めた頃、私は目を眇めた。

「誰が動いていいって言った?」

 さすがに、そんな台詞を浴びせられるとは、思っていなかった彼女の瞳は、大きく見開かれた。

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