※ 隣恋Ⅲ~急ぐ鼠は雨にあう~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ 急ぐ鼠は雨にあう 24 ~
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枕の上に広がる乱れた髪の間を縫って、私の意地悪極まりない吐息が、愛羽さんの弱点を襲った。
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「ひっ、んン……ッ」
首を竦めて、身体を強張らせた彼女の声に酔いしれる。
たまに、家で仕事の電話をしている愛羽さんの真面目で凛とした声とは大違いで、私の前ではこんなにも蕩けてくれるのだと思うと、支配欲が満たされて、熱いものが胸に込み上げてくる。
「……可愛い……」
心の声がつい口から零れるけれど、いつものように言い返してくる声はない。
どうやら愛羽さんは今、それどころではないようで、弱点を襲われて生じた快感を体内で処理することに精一杯のようだった。
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愛羽さんは正直、物凄く感覚が敏感な部類なんだと思う。
だって、こんなにも感じ易かったら、日常生活で困るだろう。
例えば彼女は満員電車に毎日乗るけれど、あれは混雑具合によっては他人の息が首や耳にかかることだってある。それに毎回反応していたら……と思うとどこかから嫉妬が込み上げると同時に心配になってくる。
格好の、痴漢の餌食じゃないか。
大学の授業がある私が、会社まで送迎するのは無理だし、愛羽さんに満員電車にならない時間帯に、早起きして通勤してくれとも言えない。
この悩みは解決することはないんだろうかと内心溜め息を吐いていると、ふいに、愛羽さんの腕に、力がこもった。
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私の後頭部にあてがわれていた手。くしゃりと髪を掴むみたいに指が曲げられて、頭を引き寄せられた。
逆らう理由もないので、されるがままに彼女に寄り添うと、か細い声が耳に届く。
「おねがい……」
乱れた息の合間に強請る言葉は、聞くだけで私をゾクリとさせて、このひとの色気は底なしなのかと危ぶむほどだ。
「……指…動かして」
その上、タイミングというものを弁えて、狙ったように次の行為を催促してくるのだから、この先在り得ない事だが、例え愛羽さんとのセックスを嫌いになろうとしても、無理な話なのだ。
こんなにも、心を鷲掴みにしてくるのだから。
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動きを止めていた指を、壁が絡みつくように包んでいた。
抵抗を感じながら奥へゆっくりと挿し込んでゆくと、愛羽さんは上擦った声で、堪え切れない快感を零す。
麻薬のように私を犯してくるその声に、喉を鳴らして、沸き上がった欲求を、断られるのを予想しつつも素直に口にした。
「愛羽さんの顔が見たい」
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「……っだ、だめ……」
分かっている。そう言われると思っていた。
だから次の要求もきちんと用意してある。
「じゃあ、この指でどうして欲しいか、言って?」
「な、んで……っ」
「じゃなきゃ、顔、見るよ?」
理不尽。
その言葉に尽きるだろう。
愛羽さんはどちらの要求にも応える義務はない。
なのに、さも彼女が私の言う事に従うべきだ。それが正しいと言わんばかりに迫る。
こんな状況でなければ、愛羽さんが私を言い負かすなんて造作もないのに。
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私は指を最奥まで到達させると、動きを止めた。
無言の重圧を愛羽さんにかけていると、彼女は観念したように、やっと、その唇を開いた。
「1つだけ、約束して」
「?」
「今からすっごい恥ずかしい事言う代わりに、朝になったら、絶対全部忘れて。記憶にあったとしても、口に出さないこと」
これを守ってくれるなら、雀ちゃんの言う通りにするから。
若干甘さの残る声色で、抜かりの無い要求をする愛羽さんに舌を巻く。
やっぱり、愛羽さんはこんな状況でも、抜かりはなかった。
さすがだ。
「分かった」
「その約束守ってくれなかったら、雀ちゃんのゲーム、全部捨てるからね」
「う」
さすが。愛羽さんは抜かりが、ない。
ゲーマーとして大切なゲームを人質にとられては、彼女に従う以外の道はなかった。
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