隣恋Ⅲ~急ぐ鼠は雨にあう~ 8話


※ 隣恋Ⅲ~急ぐ鼠は雨にあう~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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  ~ 急ぐ鼠は雨にあう 8 ~

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 疑うべくは、私だけではないのかもしれない。

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 ひとが履いているストッキングを破いて、イケナイ事に興奮を覚える自分を危ういかもしれないと疑ったものの。
 私の正面でソファに座って、私を見下ろしている彼女も、同じように興奮を覚えている様子。

 性的嗜好が危ういのは、私だけでなく、彼女も同じかもしれない。

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 私を見下ろす瞳がいま、何色なのかは窺うことができない。暗闇と、私の体勢が問題だ。

 蕩けた色をしているんだろうか。
 それとも、焦れた色をしているんだろうか。

 想像するけれど、正解は分からない。

 顔を上げて、その瞳を窺ってみようかと思うけれど、ここで少しばかり欲がでてくる。

 もっと彼女の脚と、ストッキングを破くこの背徳感とを、味わってからにしよう、と。

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「ん」

 愛羽さんが小さく声を漏らしたのは、私の手が太腿へと伸びたからだ。感覚の敏感な、性感帯として優秀な内太腿を指で引っ掻くようにして撫でる。
 ストッキングの上からだから、痛くはないだろうし、もしそこに爪が引っかかって穴が開いても構わない。開いたら開いたで、指を挿し込み、肌を撫で、ストッキングを更に引き裂くだけだ。

 パリパリパリと軽く引っ掛かる音を立てながら滑ってゆく指。そう簡単に爪なんて引っ掛からなくて、私は存分にその柔らかな肌とストッキングの手触りを楽しんだ。

「……ね、ぇ……っ」

 さて、今度は反対の脚の内太腿を。だなんてのんきに考えている最中に、声がかかる。
 私を呼ぶ声は少し震えていて、気を抜けば荒くなってしまいそうな呼吸をなんとか抑えて我慢しているような、そんな息遣いを感じさせる。

 自分の肩や二の腕あたりにザワリと鳥肌が立つのを感じながら、私は静かに応える。

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「なんですか?」

 顔を上げずに問い返しながら、膝にキスを落として、さらにその奥の太腿へと口付けたい欲求が湧きあがる。
 太腿を撫でる予定だった手を両膝にあてて、大きく開くように外へ向けて押す。

「……触って」

 あぁ……どうしよう。可愛いすぎる。恥ずかしいけれど、強請らなければ私が愛撫を止めてしまうとでも思ったのだろうか。それとも、こんな軽い愛撫ではなくて、もっとねっとりといやらしく、アソコが疼いて仕方がないくらいに舐めまわすような愛撫を求めているんだろうか。

 どちらにせよ、彼女が、自ら強請ってきたことが快挙である。

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 快挙だ、と思うのにも関わらず、さらにステップアップした事をさせようとする私は鬼畜だろうか。
 でも、なんだか今日ならいける気がするし、愛羽さんも、なんだかんだ乗り気な気配が窺えるのだ。

 そう考えた私の口は、意地悪を吐く。

「触ってるじゃないですか」

 と。

 案の定、喉の奥で息を詰まらせた愛羽さんは私の髪へと手を触れさせて、焦れたみたいに髪を握り込む。
 痛みはない程度の力だけど、自分の方へと引き寄せようとする動きに、また私の心は踊る。

 もっと、もっと、私を求めてください。と胸の中だけでお願いする。
 だって、表面上はどうしようもなくなった愛羽さんから求めたみたいに、見せかけたいのだから。

 私がどれだけ愛羽さんを焦がれて欲しているかなんて、今は伝わらなくていいのだ。

 愛羽さんの羞恥と情欲をかきたてる為だけに、張りぼてでいいから、愛羽さんからイケナイ事を求めさせたいのだ。

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「……だ……」

 彼女の唇から発せられた小さな音が空気を震わせるけれど、私の鼓膜までには届いていない。

「なんです?」

 私の眼前で開かせた脚。膝からゆっくりと奥へ奥へと撫でて、辿ってゆく。行っては引き戻し。引き戻ってきては行く。
 愛撫をもったいぶる気もあるし、愛羽さんの脚の感触を楽しみたい欲求もある。その二つは、利害が一致していて、なかなか奥までは辿り着かない。

「……や…ァ…、だ……」
「嫌?」

 行為の拒否や否定の意味で使っていないのは分かりきっているのに、私は聞き返すと共に、脚を撫でる手を引く。

 すると、頭を振ったのか、愛羽さんの長い髪の先がふるふると震えたのを視界の端で捉える。

「……ぃじわる……」

 息遣いが興奮を伝えてきて、私にもそれは伝染する。
 本当は、もっともっと、時間をかけて焦らそうと思っていたのに。胸中で、自分の堪え性の無さに嘆息をもらした。

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 ついに顔をあげて愛羽さんのその蕩けた瞳の色を、表情を、拝むときがやってきた。
 嬉しく思いつつも、この脚の感触を名残惜しく思う。

 顔をあげたらストッキングが瞬時に消え失せる訳ではないのだけれど、愛羽さんのそんな可愛くて仕方ないカオを見たら、確実に私の理性はほとんど死に失せる。

 だからこうしてゆったりとストッキングやその柔肌の感触を比べるように触ったり、いじったり、撫でたりするのは、これが最後と思ってもあながち間違ってはいないと思う。

「もっと、いっぱい……触って……」

 ……あ……。

 訂正、だ。

 愛羽さんの顔を見上げなくても、こんな可愛い発言をされたら、私の理性は消え失せる、と。

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