隣恋Ⅲ~急ぐ鼠は雨にあう~ 6話


※ 隣恋Ⅲ~急ぐ鼠は雨にあう~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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  ~ 急ぐ鼠は雨にあう 6 ~

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 我ながら変態だとは思う。
 けれど、一生に一度はやってみたいことでもある。

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 私の申し出を聞いた愛羽さんの顔が、予想していた通り歪む。

「……言ってもいい?」
「何言われるか大体分かってるから遠慮しときます」
「変態」

 私が辞退したのにも関わらず、渋い顔でそんな事を言ってくる愛羽さん。だから遠慮するって言ったのに。
 しぶい、しぶーい顔で、変態な申し出を言った私に、まるで痴漢した犯人を見るような目を向けてくる。

「だって」

 言葉を区切りながら、己の口元に浮かんでしまう笑みが隠せないことに困る。

「こういう機会でもないと、あんまりやれないじゃないですか」

 ストッキングの穴に突っ込んでいた指に力を加えると、ビリ、と聞きなれない音が耳に届いて、それと同時に、指が自由に動く範囲が広がった。
 昔、やった事があるけれど、やっぱりこれは結構昂るものがある。

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「……、いいって言ってないんだけど」
「そうでしたっけ」

 素っ気無いというよりは、白を切る感じで返す。そんな私の目には暗闇でも見えていた。
 愛羽さんの、微妙な表情の変化が。

 スカートの中でまた、ビリ、と音を立てながら、彼女の腰に回していた手でそこを撫でる。ゆっくり、ゆっくり、円を描くように。

「駄目だと思うなら……なんでもっと怒ったり、嫌がったりしないんですか?」

 言葉に詰まったような息遣いに、私の笑みが濃くなる。
 まったくどうして、こんなに可愛くて、こんなに分かりやすい性格をしているのだろう。ことさら、夜の情事において彼女は素直すぎるくらいに、顔や態度に出る。

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「もう破っちゃったんだから仕方ないでしょ」
「ふぅん?」

 どうしても、”自分は仕方なしにストッキングを破られている”というスタンスを崩したくないらしい。
 撫でる手を、腰から尻へと下げて、スカートの上からまたゆっくりと撫でる。

「じゃあ……なんでそんなカオしてるんですか?」

 今度は強めに指を引いてみると、ビリリリとかなり大きくストッキングが裂ける音がした。もう指だけでなくて手全体で愛羽さんの生脚に触れられるくらいだ。
 さわさわと脚を撫でている自分の姿は、スカートに手を突っ込んで本当に痴漢のようだと内心苦笑するけれど、そうされている目の前の愛羽さんはというと……やっぱりまんざらでもないみたいだ。

 眉をきゅっと切なそうに寄せて、唇は薄く開いて若干の呼吸の乱れ。
 私の肩辺りに置かれた手は、込み上げる何かを堪えるように服をぎゅうと掴んでいて、私がストッキングを引き裂く毎に、ピクッと反応を示すのもまた可愛い。
 唯一の反抗心の残りがその瞳に宿ってはいるけれど、うっすらと潤んでいるようで可愛らしさを増長しかしてない。

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 私の指摘にハッとしたみたいに我に返っているけれど、もう遅い。そんな反応をみせている時点で、愛羽さんは認めているようなものだ。

「もっと、破いて欲しいとか、思ってないですか?」

 わざと低くした声に反応したのか。
 それともその内容に反応したのか。
 私の予想ではそのどちらもだけど、重要なのは、そこではない。

 尻を撫でていた手を彼女の後頭部へと回して、そっと引き寄せる。
 薄く開いたままだった唇に、触れるだけのキスを一度。
 すぐに離した唇をまたくっつけて、今度は軽く啄む。いつでも柔らかいし、温かいこの唇が私だけのものだと思うと、脳がジンと痺れる。

 そのくらい、愛羽さんを独り占め出来ている事実は嬉しいのに、欲深な私はもっと欲しいと思ってしまうのだ。

 変態、と詰りながらも、その行為に興奮している貴女をもっと見せて欲しい。
 反抗的であった貴女が、自らこの行為の先を求めて欲しい。

 もっと、貴女を求めたいし、求めて欲しい。

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 啄むキスがいつの間にか、深いキスへとすり替わっていた。舌同士を絡ませ合い、唾液を交換する。
 いや、今回のキスは体勢的に私が全て引き受ける形になっているか。

 愛羽さんのと、自分のと、混ざって溜まった唾液をごくんと音を立てて飲み込む。上向いた状態だと空気も一緒に飲み込んでしまうから、どうしても大きな音が立つ。

 他人の唾液を飲むだなんて普通に考えればおかしい事だ。
 だけど、好きな人のものだというだけで、汚くも思わないし、むしろ、喉を流れてゆくその感触に、ゾクリとした興奮を感じてしまうのだ。

 お互いにキスで頭が蕩けた頃、やっと唇を離す。
 愛羽さんが蕩けたのは頭だけじゃなくて、瞳も表情も、そうだった。

 かわいい、と胸中で呟いて、ストッキングに引っ掛けている指を少しだけ動かしてその存在を主張する。

「今しか出来ないこと、もっとしてみませんか?」

 これを変態行為ととるか、軽いSMプレイととるかは人次第だけど、今しかできないのだ。出来れば後者としてとって欲しいし、この行為を受け入れて欲しい。

 けれど、無理強いはしたくない。だから、私は愛羽さんを見上げて、小首を傾げてみせた。

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