隣恋Ⅲ~急ぐ鼠は雨にあう~ 2話


※ 隣恋Ⅲ~急ぐ鼠は雨にあう~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※

※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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  ~ 急ぐ鼠は雨にあう 2 ~

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「……じゃーぁ」

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 愛羽さんは私の意図を理解してくれたようで、唇で軽く弧を描いた。
 ソファの背もたれに片手を着いて、余った方の手で私の頬をさらりと撫でる。

「いたずら、しちゃおっかな」

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 笑みを含んだ声で「Trick」の宣言をしたかと思うと、愛羽さんは軽く顔を傾けて、私と唇を重ねた。
 この柔らかい唇が先程、私の耳を挟んだのかと想像すると、もうちょっと、その感触を堪能しておけばよかった、なんて後悔さえ過る。
 だって、ふわふわでやわやわで、しっとりしてて、気持ちいい。

 何度も何度も、小さく啄んでくる温かな感触が心地よくて、こちらからも応えて啄もうと唇を開きかけた瞬間に、愛羽さんはスッと口付けを解いた。

「ぇ……」

 いい所だったのに、という内心が小さな声となって半開きの口から零れ落ちた私と、彼女の唇の距離は10センチもないだろう。
 そんな近くで愛羽さんがふっと笑みを零せば、その吐息が、軽く湿り気を帯びた私の唇を撫でては霧散した。

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 ぞくん、と首の後ろが、痺れた。

 それは、唇を吐息が撫ぜたからかもしれないし、私の目を、悪戯の光を強く宿した瞳がおかしそうに覗き込んでいるからかもしれない。いや、それとも、もしかすると、頬に添えられていた手が奥へずれて、耳を撫でて、耳の裏まで包むように握り込んできたからなのかもしれない。

「いたずらされてる人は、うごいたら、だぁーめ」

 やけにゆっくりと喋る愛羽さんの声は、普段よりも砂糖が多めだ。
 そんな声を、間近で見つめられながら聞かされては堪らない。

 第二波とばかりに、また、首の後ろが痺れた。

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 しかも今度は困ったことに、痺れの範囲が広がった。
 うなじから、後頭部にかけてが、じいぃぃん、と愛羽さんの色気にやられている。

 そんな私の心境なんて、彼女は手に取るように掴めたのだろう。
 悪戯っぽい笑みを濃くした瞳はやけに、楽しそうだ。
 そしてその「さも楽しいのだ」と言わんばかりの雰囲気を隠すこともなく、くすくすと小さな笑みを鼻から零しながら、再度私の唇を奪う。

「う」

 色気にやられて、動きをとめていた私の口は半開きだった。その口の間に丁度良く自身の下唇を差し込んだ愛羽さんが、私の上唇をちぅと吸う。

 わざと……なのだろうか……?
 彼女の色気が増したのは。

 短いながらも婀娜をたっぷりと含んだ愛羽さんのリップ音が、私の鼓膜を揺らす。が、左右で音の聞こえ方に差があって、それもまた、どきどきしてしまう。

 彼女の手によって覆われた耳は、くぐもったリップ音を。
 逆の耳は、クリアなリップ音を。
 容赦も遠慮もなく私の脳に届けてくる耳は、各自、自分の役割を淡々と果たしていた。

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 いつの間にか、今度は私の下唇がターゲットになっていた。
 動くなという忠告を忠実に守っている私は、脳内でさっき本で見たカクテルのレシピを必死に思い浮かべていたんだけれども、それすら見抜かれたのだろうか。
 耳を握り込む指の爪が、キ……、と耳の裏をひっかいた。

 別に、痛いという程ではないが、驚いて、目は開けてしまうレベル。

 バチリ、と愛羽さんと、視線がぶつかった。

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