※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ 二つの封筒 11 ~
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抱き締めたまま頭を撫でていると、腕の中で雀ちゃんが身動ぎした。
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彼女の温もりにまったりしていたので、なんとなくまだ離し難くて、背に回した腕はそのままで、彼女の顔を覗き込む。
「ん?」
「う」
間近な顔と顔の距離に少し赤面した雀ちゃんは、いつもの癖を発揮した。
いつまでそんな初心な反応を見せ続けてくれるのだろうかと思う一方で、そろそろ慣れてもいいのに、だなんて正反対のことを考える。
顔を覗き込んだわたしがこつんと額同士をくっつけて、雀ちゃんの泳ぐ視線を捕まえると、彼女は怯んだ様子を見せた。
それでも、腕を緩めて解放はしてあげない。
「ぁ、愛羽さん……」
困り果てたとその瞳が語っているけれど、わたしは小さく笑って「なぁに?」と鼻先と鼻先を擦り合わせてみせる。
ノーズキスというやつで、あまり日本では主流ではないが、海外だと普通にする。
この至近距離で見つめ合いながら、キスするかしないかの瀬戸際を楽しむと同時に、期待を高めるのがノーズキスだ。
「嫌だった?」
「い、嫌とかじゃなくて……」
きっと、この後に続くのは、「恥ずかしくて」という言葉だろう。
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いつも読み取れる雀ちゃんの心境に、わたしは高を括っていた。
そんなわたしに、罰が当たるかのように、雀ちゃんは若干潤んだ瞳に色欲を滲ませて、片方の手をわたしの膝上にそっと乗せた。
「……明日の夜から泊まるって事ですよね」
「ん、うん」
雀ちゃんは「嫌とかじゃなくて」の続きを口にせず、デートの確認をし始める。と同時に、ストッキングのさらりとした感触を楽しむみたいに、膝頭を手のひら全体でゆっくりと撫で始めた。
その手はたまに、偶然を装ってスカートの裾の内側へ入り込むけれど、すぐに布の下から出てゆく。
さも、偶然といった具合が、この性欲の溜まった身体にはなんとももどかしい。
「授業終わったらすぐ帰ってきますから」
「……うん。わ、たしも残業なしで帰ってくる」
じり、と手が這い上がってきて、完全に膝上まできた。
いつの間に、この場の空気を掌握する人間が、わたしから、雀ちゃんに移行したのだろう。
つい、数分前まではキスされそうになって、狼狽えていた雀ちゃんなのに、今となっては、逆の立場だ。
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手のひらは膝上にのせられて、指先は完全にスカートの中。
「ちょ……と」
「だって、明日まで我慢したら、愛羽さんとの時間とれるのに、それよりも早く愛羽さんが誘うんですもん」
「さ、誘ってない……」
ただちょっとキスくらいはしたいなと思っただけで。と言い募ろうとした瞬間、彼女の手が、じり、と内太腿へと近付いた。
「我慢してる人間には、どんな行動だって、誘ってるように見えるもんですよ」
知らなかったんですか? と額をぐりと押してくる彼女に、思わず、惚れた弱みで、ときめいてしまった。
どうも最近のわたしはM属性が強くなってきていて、いけない。
強要されると、ときめいてしまう。
「ご、ごめん……なさい」
「謝ってほしいわけじゃなくて、責任を取って欲しいんですよ」
じりじりと上へあがってくる指に耐えかねて、名前を呼んだ。自分でも驚くくらい、切なそうで、欲しそうな声。
それを聞いた彼女は、ニヤリと笑みを残して、額を離して、手もスカートの中から抜き取る。
突然、取り上げられた温もりに、喪失感が大きくて、わたしは呆然と雀ちゃんの顔を見返すことしかできなかった。
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