※ 隣恋Ⅲ~ひねもす~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ ひねもす 32 ~
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こ、く……と愛羽さんの喉が小さく鳴った。
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私が今から何をしようとしているのか、きっと彼女は理解している。
だからこそ、生唾を飲み込んだのだろうし、私が押さえつけた左手がきゅっと拳の形に握られたのだ。
私は、幾度も薄れた紅華に口付けを繰り返しながら、愛しいひとの名前を呼んだ。
「抵抗しないってことは、いいんだろうなって勝手な解釈しますけど」
いいんですね? と念を押した。
だって、いつも暗黙の了解になっている禁止事項を、今、破ろうとしているのだから。
普段の10分の1にも満たない残された理性で、彼女に問い掛ける自分を褒めてやりたい。本当なら今すぐ、彼女の了解を得る工程もすっ飛ばして、この紅華を濃く、鮮やかなものに更新したいのだ。
それを我慢している理性を、褒めてやりたい。
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そんな私の決死の問い掛けに、愛羽さんは微かに息を乱しつつ、反抗的な返答を寄越した。
「手、押さえてるから、したくても、で、きないでしょ……っ」
震える声が、何度も身体を重ねた記憶を呼び起こして、さらに私の理性を溶かしてゆく。
――分かってない。自分がどういう立場に居るのか。ほんと……分かってない。
そんな中途半端な、抵抗にもなっていない反抗で、事が好転するとでも思っているのか。甘い。甘すぎる。
彼女とのキスのように甘い考えの持ち主の、首の痕に舌先をぐいと押し付け、肌を軽く押し込む。
この痣を付けられた時の記憶を思い起こせとばかりに強く、熱の篭った舌先で抉った。
「く、…ふ……っ」
部屋を暗くする代わりに、声を堪えないその約束すらもう忘れて、彼女は声にならないような声を、あげる。
「両方とも、そうしてる訳じゃないのは、分かってるでしょう?」
私が、押さえているのは、片腕のみ。
本当に、見える場所にキスマークを付けられたくないのなら、抵抗できるはず。なのに、それをしてない彼女は……。
「付けられたいのに、素直になれないんですか?」
息を呑んだ彼女の喉は、びくんと一度大きく震えた。
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しようと思えば出来る抵抗もせず。
抵抗しない理由をひとの所為にして。
息を乱し、声を震わせながら私の行動を待ち、敏感になっているその真意。
素直になれない。
それは当たらずとも遠からず、といったところなのかもしれない。
私はもう一度、愛しいひとの名前を呼んだ。
首筋の薄れた紅華に口付け、そのまま唇で肌を上へと撫で上げる。
行き着いた先は、耳の付け根。
ココはよく香水をつける場所だと言われるが、今そのことを思い浮かべても、彼女の肌からはボディソープの人工的な香りしかしない。
明日の朝にでも、もう一度ここに顔を埋めてみようか。
そんな場違いな考えを抱きながら、私はそっと囁いた。
「好きにしていいって、言いましたよね?」
「……、っ……」
軽く覗かせた舌先で肌を舐められて、熱い吐息を零す彼女。
「愛羽さんが嫌な事はしませんから、嫌なら抵抗してください。だけど、それ以外は、私の言う事を聞いてください」
鼻先を耳たぶに摺り寄せながら、彼女の視界には入らないそこで、私は口元に笑みを浮かべた。
これから、彼女は、どんな甘い台詞をその唇から零してくれるのかと期待して。
「私が命令するから仕方なく、って常に思ってていいから」
だから。と続けた。
「して欲しいこと、全部、隠さずに教えてください」
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