※ 隣恋Ⅲ~ひねもす~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ ひねもす 29 ~
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よしよし、と頭を撫で始めた愛羽さんに、さすがに、焦りを感じ始めた。
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だって、完全に、私が愛でられる立ち位置になっている。
さっきまでは、いちゃいちゃしててどちらが攻守か分からないくらいの感じだったのだが、私の「名前呼んで好きって言ってほしい」発言から、愛羽さんが私を愛でる対象として撫で始めたのだ。
――これは、マズイ。
セックスの雰囲気からだんだん離れ始めているじゃないか。軌道修正しなければ最悪いつの間にか私が抱かれてしまう結果になりかねない。
愛羽さんのSスイッチはいつ入るのか不明な部分があるので、警戒しておかなければ。
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もう、不自然でも恰好悪くてもなんでもいいや。と腹を括り、私はベッドの足元方向へずりりと下がった。
「ん?」
愛羽さんが軽く首を傾げているが、構わずもう少し、後ろへさがる。そうすると必然的に、私の首に回されていた愛羽さんの腕が解けてしまう。
解けた腕をぱたんと膝の上におろした彼女は、相変わらず枕の上に座っているが、距離をとった私が手を差し伸べると、ベッドの真ん中あたりまで来てくれた。
「愛羽さん」
「うん?」
一体この子は何をしたがっているんだろう? そんな目で私を見てくる。
何をしたいってそりゃセックスしたいんだけど、そうはっきり言えるものでもないので、またいい雰囲気というものを構築しなければいけない。
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「大好きです」
私の告白の後2秒くらい、きょとんとしていた彼女は花が咲くみたいに笑って、「なぁに? 改まって」と可笑しげに、でも嬉し気に、目を細めた。
「この数日愛羽さんと一緒に居られなくなった時間も多かったですけど……その分、やっぱり愛羽さんが好きだなぁって再確認したので、改めて言っておこうかなと」
「そっか。なるほどね? 寂しかった……?」
車で会社まで送ったあと、一人で帰るのが寂しくて、ちょっと涙ぐんでしまったのは、秘密にしておく。
だけど、寂しかったと頷くのは、頷いておく。
また、あんな思いは、出来ればしたくないから。
「ごめんね、ひとりにして。わたしも雀ちゃんの事、大好きよ」
じん、と広がる好きの波。
「貴女が、好き」
鼓膜を震わせる愛羽さんの声が、一層、甘やかに溶けた。
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どきりとして、薄暗い中、目を凝らして彼女の瞳を見つめると、愛羽さんは優しい色をそこに湛えていた。
吸い込まれるように見つめたまま、どちらからともなく、キスをする。
好きだと言葉で伝えても、それでも足りない分を補うように、行為で示す。
重ねた唇はソファに居たときより、少しだけ冷たい。
なんで。と疑問を抱きながらも、それを啄んで、もしかして汗をかいてそれが冷えて? と思い浮かぶ。
中途半端に興奮させて、発汗したものが逆に体温を奪ってしまったのかもしれない。
「愛羽さん……」
重ねた唇が離れた瞬間、思わず名前を読んでみるけれど、すぐに、彼女に口を塞がれた。
話す暇も与えられない甘い口付けに胸を震わせながら、せめてもと、彼女の頬へ手を添えてみるとやはり、冷たい。
照れて頬を染めた彼女をベッドに来ても何度もみていた。そんな見た目に騙されて、彼女の本質を見抜けていなかった自分を不甲斐なく思いつつ、私は、彼女の肩に手をかけた。
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「っ、……ん」
後頭部を片手で支え、もう片手で肩を押して、彼女の体を倒す。
すこし荒業だったかもしれないが、これ以上彼女の体を冷やしてしまうのは絶対にさけたい。
枕に彼女の頭を預けて、唇を離す。
自分の背中に掛布団を引き上げてから、そっと、彼女の体に覆いかぶさった。
「愛羽さん、寒いならちゃんと言ってください」
「そんな寒くないよ」
「でも冷たい」
手の甲で頬に触れると、私の手が温かいというのもあるが、それを差し引いても彼女の頬はやはり冷たかった。
「風邪引いたらどうするんですか」
「ひかないよ。大袈裟だし心配性ねぇ、ほんと」
呆れたように眉尻を下げつつ見上げてくる愛羽さんは、寒くないと言いつつも、私の温かい手が気持ちいいのか、自分の手を添えて、頬を押し当ててくる。
「まぁそれだけ、大事にされてるんだなーって思うけどね」
柔らかく微笑む彼女が、見透かしたように言うものだから、憮然として私は彼女の体をぎゅっと抱き締めた。
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