隣恋Ⅲ~ひねもす~ 27話


※ 隣恋Ⅲ~ひねもす~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 ~ ひねもす 27 ~

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「愛羽さんが選んでいいですよ」

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 私が提案した内容はこうだ。

 部屋を暗くして、愛羽さんが喘ぐ声を我慢しないと約束するか。

 部屋を明るくして、愛羽さんが喘ぐ声を我慢するか。

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「なにそれ。わたしが声だすのは必然なわけ?」

 赤い顔で反抗的に言う様は可愛いのだけど、その言う内容は自分が普段喘がされていると自覚していないのかと疑問に思うほど不遜なもの。

 ふむ。自分の立場が分かっていないようだ。

「好きにしていいって言ったのは、愛羽さんですから、全部の照明つけて両手縛り上げて口おさえられないようにして抱いてもいいんですけど?」

 あぁあと、両脚も縛ってみても面白いかもしれないですねと続けて笑顔で言ってみせると、彼女は「わかった! ごめん、ごめんなさいどっちか選ぶから許して」と慌てた。
 今更、自分の言った台詞の威力を痛感し始めたらしい。

 数日間迷惑をかけたことや我慢させたことを本当に申し訳なく思っていてくれたから、ああいう台詞は出たのだろうけれど、随分と大きなお礼を頂いてしまったものだ。
 まぁ本人はこうなると予想せずこのお礼を差し出したのだろうけれど、貰ったものはもう返せないし、もう返す気もないし最大限有効活用させてもらおうと思っているが。

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「決めました?」

 部屋の暗さを取るか、喘ぎ声を堪える自由を取るか。

 私としては、喘ぐ声なんて最後まで我慢できるものではないと思っているので、愛羽さんが「部屋を明るくして、喘ぎ声を我慢する」案をとってくれると、一番うれしい結果になるのだが、彼女はどう出るのだろうか。

 待っている間に手持無沙汰なので、愛羽さんの頭を撫でていると、視線を泳がせた彼女が、天井を指差した。

「暗くするなら、真っ暗……?」
「うーん、本当に真っ暗にされると、この部屋月明りも入ってこないし困ります。最初愛羽さんが落としてたくらいでどうです? あれなら本当、表情も見えなかったですよ、さっきは」

 この部屋、窓が無いんだもん。
 全部の照明落としたら、本当に何も見えなくなってしまう。
 せめて、うっすらと何かみえないとイロイロ困るのだ。

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 腕を組んで、うーんと唸った彼女にとって、部屋の明るさというのは随分と重要なことらしい。
 喘ぐ姿や、感じている表情を見下ろす快感を知っているので、出来れば明るい所で抱きたいのだが、恥ずかし過ぎるというのなら譲歩してあげたくもなる。
 惚れた弱みというやつだ。

「じゃあ……」
「はい?」
「部屋、暗くして、する」
「はい」

 私にとっての最良ではない選択がされたのだけど、それはそれで、彼女の我慢しない喘ぎ声が聴けるとか、部屋を明るくしたままセックスする後の楽しみが増えたとか、そんなことを考えながらにっこり笑ったのがいけなかったのかもしれない。

 赤い顔で睨まれた。

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 自分の素直な表情筋に苦笑しつつ、ツマミを操作して部屋を暗くするよう愛羽さんを促した。

「え、わたしがしていいの? さっきより暗くするかもしれないよ?」
「そこまで暗くしたがってるなら、無理強いするのは良くないかと思いますし。どうぞ」

 さすがに真っ暗にされたら多少はアップさせるけど。と心の中で言うけど、口には出さない。
 すると私の心の声を知らない彼女は、表面上の優しさに絆されたのか、若干明るめの設定にして、ツマミから手を放した。

 意外すぎて目を丸くしていると、愛羽さんはフイと顔を背けつつ、「優しい事言われたらこうしたくなるのは当然でしょ」と、恥ずかしそうに言い捨てた。

 ――まったく……このひとは。

 年上だなぁとその大人びた所に惹かれる時もあれば、こうして子供みたいに恥ずかしさと意地を惜しげもなくみせる時もある。
 私は結局そのどちらを目にしても、可愛いなと思ってしまうのだけど、そのギャップで、さらに、彼女のことを好きになってしまうのだ。

 どこまで私を惚れさせたら気が済むのだろうか。

 のめり込めばのめり込むほど、貴女の存在を失うのが怖くて、臆病になってしまうのに。

 失うのが怖いから、好きになるのは控えよう。そう考える事すら出来ない程、今は貴女が好きで好きで、仕方ない。

 苦しくなる程に溢れる想いを伝えたくて、私は彼女に、手を伸ばした。

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