隣恋Ⅲ~ひねもす~ 26話


※ 隣恋Ⅲ~ひねもす~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 ~ ひねもす 26 ~

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 私の肩口に頭突きをする彼女の顔色はもちろん窺えない。

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 だけど、その耳が、真っ赤なのは、見える。
 愛羽さんの顔はきっと、これ以上に赤いんだろうけれど、私も負けないくらいには赤いと思う。

 ただでさえ、まだ深いキスもしていないのに彼女の色気にあてられて、更に、その彼女当人から、催促されるだなんて。
 もう、たまらない。

 私の目の前から、紳士の道が、ガラガラと音を立てて崩れ去った。

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「愛羽さん」

 私の左隣に座っていた彼女が、額を押し付けた肩が左側でよかった。これなら、やりやすい。

 名前を呼ぶと肩から少し重みが減るけれど、それでいい。離れられるのは少し寂しいしその可愛い仕草をずっと見ていたかったけれど、体を少し離してもらわないと、抱き上げるのが難しい。

 ベッドに彼女を運ぶため、愛羽さんの膝裏と背中に腕を回す。落とさないようにゆっくりと立ち上がると、彼女は悲鳴を上げた。

「お、おろして……!」
「駄目ですよ」
「だって重いよ!」
「好きにしていいって言ったのは愛羽さんじゃないですか」
「う、い、言ったけどそれとこれとは」
「違わないですよ」

 なんて言い合いをしている内に、ベッドに到着。
 先程私達がこの上で転がったため、少し皺ができている掛布団を眺めつつ、内心舌打ちした。
 食事の前にこの掛布団を足元の方まで捲っておくべきだったなぁ。枕のところまですっぽり覆われていて、愛羽さんを寝かせるところがない。

 まぁぼやいても仕方ない。
 とりあえず、彼女がフロントに電話をかけた時座っていた場所。ちょうどベッドの右端枕寄りな所にそっと下ろして、腰掛けさせた。

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「あれ、顔真っ赤じゃないですか」
「いいい言わなくていいの……!」
「いいい言わなくていいですか」

 揶揄うと愛羽さんは恥ずかしさのあまり、拳を振り上げるけれど、それが振り下ろされるなんてことは無いので、私は掛布団に手を伸ばして、ばさりと捲った。
 ベッドも大きいが布団も大きい。
 左側のほうまで捲れなかったけどまぁいいや。愛羽さんが寝られる場所さえ確保できたら。

「じゃあ、続きしましょうか」

 にこやかに笑顔を向けてみせると、愛羽さんは焦ったようにベッドの中央のヘッドボード付近に設置されたボタンいっぱいのパネルに手を伸ばした。

 なんのパネルかなぁとは思っていたのだが、どうやら、照明らしい。

「雀ちゃんはテレビ消してきて」
「いいですけど、戻ってきたときに真っ暗にしてたら全部の照明つけて抱きますからね」
「なっ……」

 絶句する彼女にニヤリとした笑みを残して、私はソファに戻ってリモコンを取り上げた。

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 ド派手なアクションシーンを流す映画をプチと消して、ソファにリモコンを投げ置いて、代わりに転がっていたお茶のペットボトルを持って、踵を返した。
 その頃には随分と照明が落とされていて、うすぼんやりとした中、サイドテーブルにペットボトルを置く。

 映画の音に紛れてよくわからなかったけれど、部屋に妙な音が流れている。
 愛羽さんがパネルを弄り始めてから鳴ってるみたいだから、彼女が犯人だろう。大方、自分の喘ぐ声を掻き消したくてBGMをつけたのだろうと見当はつく。

「その催眠術みたいなBGMいらないですから切ってください」
「こ、これがある方が盛り上がるかもよ?」
「駄目」

 ピシャリと言ってみせると、唇を尖らせて、BGMを切る彼女。
 まったく、どうしてそういう無駄な抵抗をするのか。

 パネル前で女の子座りをしている愛羽さんの背後に膝立ちになって、彼女の手元を覗き込めば、照明の明るさは無段階で調整できるツマミを回すボタンのようだ。

 いくつもあるツマミの中から”寝室”という項目を見つけてそれを回す。
 指先で摘んだそれをじりぃと回せば、ベッドの上の照明が明るくなった。

「あ、なんで明るくするのっ」
「暗すぎて愛羽さんの顔もロクに見えませんもん」
「やだやだ、こんな明るかったら恥ずかしいからっ」

 私がツマミを回す手に両手をかけて、阻止しようとする愛羽さんは必至だ。

「うーん、じゃあこうしましょうか?」

 私が一旦ツマミから手を離すと、愛羽さんは大人しく、提案しようとする私に「ん?」と首を傾げた。

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