隣恋Ⅲ~ひねもす~ 24話


※ 隣恋Ⅲ~ひねもす~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 ~ ひねもす 24 ~

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 重ねた唇は、いつも通り柔らかい。

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 だけど少しだけ冷たい気がして、触れるだけのキスをした唇を僅かに離した。
 長い睫毛が影を落とすその光景が色っぽいなんて考えながら、私はひそりと囁いた。

「愛羽さんの唇、冷たい。寒いですか?」

 離れた距離は僅かで、鼻先同士が触れ合うほど。
 まるで内緒話のように問うと、愛羽さんは閉じていた瞼を震わせて、その奥から瞳を覗かせた。

「んーん、へいき」

 彼女がお風呂をあがってから、私がここへ戻ってくるまでに時間が経ちすぎて湯冷めしてしまったのかもしれない。
 空調はしっかり効いているから、暑くもなく寒くもなく、と感じていたが、それは私にとっての気温設定であって、彼女にとってはすこし、寒かったのかもしれない。

 彼女の平気という言葉に遠慮が含まれているかもしれない。そう考え始めたとき、愛羽さんの手が、私の脇腹あたりの浴衣をくいと引いた。

「でも冷たいなら、雀ちゃんがあっためて?」

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 どうして、そんなエロい台詞がすんなり出てくるのか。
 ぞくりとした項に後押しされるみたいに、唇を重ねる。

 彼女が掴んでいた浴衣から手を放し、私の手へそろりと指を絡めてきた。それだけで、鳥肌の立った項は、それを波及させるように痺れてくる。

 ――あ、ぁ……やば、い。

 つい、がっついてしまいそうになる。
 優しくしたいと思うのに、溜まっていた欲求が溢れ出しそうだ。

 ――あっためてとか、駄目だろ。
 

 こういう時恋人が何を言おうと、駄目も良いもないんだけど……燻る種火にガソリンでもぶちまけられた気分だ。

 愛羽さんの唇はしっとりしていて、押し付けた私のそれよりも幾分か冷たい。やわやわと啄み、熱を移すことを目的としてゆっくり動く。
 唇同士を触れ合わせていて、本当に体温が移り、あたためることになるのかは少し不安だ。不確かな事をするよりも、彼女を抱き上げて、向こうのベッドへ運んで布団にくるんであげたら、この唇はより早く体温を取り戻すのかもしれないが……。

「……ん……」

 いつになく、色っぽい声を鼻から抜いて、私のキスに応じる彼女。そのひとの指がきゅうと絡まっている手を解きたくなかった。

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 静かな室内には、テレビの音だけが、響いている。
 家にあるような秒針の音の目立つ時計はないし、防音設備の整った部屋で他の音はまったく聞こえてこない。

 テレビの音だって、私があの時さげたボリュームのままなのだろう。とても小さい。それに加えて、物静かなシーンの所為か、二人の俳優さんが車の中で語り合っている会話だけがぽつり、ぽつり、と耳に届く程度だ。

 だから愛羽さんの息遣いや、漏らす色声がよくわかる。

「は、…ふ………」

 ちぅ、と吸って放した唇がぷるりと震えて、静止する。その僅かな間だけで、今し方啄んだ唇がまた欲しくなる。
 今度は首をもう少し傾けて、薄く開けた口から舌を覗かせ、伸ばす。
 少しだけ、私の体温に近付いた気のする彼女の唇に舌先をあててぺろりと舐めた。そのとき。

「ぁ、む……」

 愛羽さんが、舌先を咥えた。

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 吐息と声を混ぜながら上下の唇で、私の舌を挟んだ彼女の鼓動は速い。
 首筋にあてた4本の指が、それを知らせてくるのだ。指の腹を押し返す脈動は、多分、私のものよりも速いから、彼女も緊張なのか興奮なのか……きっと両者だろうけれど、いつもみたいに余裕はないらしい。

 考えてもみれば、お預けされたお預けされたと私は主張していたけれど、愛羽さんの体だってお預けは食らっていたのだ。
 でなければ、普段ならまだ唇も綻ばせてくれない段階なのに、こうして自ら私の舌を咥えてくれる訳がない。

 彼女は唇で捕まえた舌をちゅうと吸ってすぐに離したけれど、私の頬を熱く撫でた吐息が「まだ足りない」と訴えた気がした。

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