※ 隣恋Ⅲ~ひねもす~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ ひねもす 18 ~
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いぐさの香りに包まれた小さな部屋で、私達はしばらく、無言で過ごした。
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ぽつ、ぽつ、と会話というか、言葉を零すというか、
「おなかいっぱい……」
「ですね」
とかそんな程度は言い合うのだけど、二人とも若干緊張してきているのか、会話が弾まない。
そんな事でいいのだろうかと思うが、ここで妙に楽しい会話を繰り広げたからといって、ベッドに行く時間が早まるわけではなく、逆に遅くなる。
だけど、眠たそうにうとうとしている愛羽さんに、「早くお風呂入ってセックスしましょう!」だなんて誘える訳もない。
昨日はしっかり眠れたんだろうけれど、まだ徹夜の疲れが残っているかもしれないし、もしかしたら、私と同じく、今日のデートが楽しみで眠れなかったかもしれないんだから。
むしろ、座椅子に凭れてお腹の上で指を組んで、こっくりこっくりと舟を漕いでいる彼女の姿を見れるのはなんだか貴重で、私は正面の座椅子に座り、机に頬杖をついて、じっくりと彼女を眺めることにした。
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やっぱり疲れているなら眠らせてあげた方がいいかな……。いやでも、……セックスしたいしな……。
私の中の善意と悪意が喧嘩を始めるけれど、その喧嘩を仲裁したのは、他でもない愛羽さん本人だった。
「寝てた……っ」
「最近それ多いですね」
叫びながら起きた彼女に小さく笑った口元を頬杖の手で隠すけれど、見咎められる。
むぅ、と頬を膨らませた愛羽さんは机に両手をついて、立ち上がった。
「お風呂いこ」
「いってらっしゃい」
「あれ? 一緒に入らないの?」
意外、という顔をされて、ラブホテルでは一緒に入浴するのが一般的で当たり前なのかと心配になるけれど、まぁ他所は他所、うちはうち。
「だって、まだ一緒に入れる機会は沢山ありますから、最初くらいは別々で入っておいた方が楽しみが増えるかなと思いまして。お先にどうぞ」
ガラスの向こうに見えているお風呂場を手で示したのが、失敗だった。
あわよくば、ここに居て覗いてやろうと画策していたのに、「ふぅん?」と私の言い分にとりあえず納得した彼女は、和室の外を、指差した。
「ここ以外の場所で、待っててね」
「……」
しれっと目を逸らす。くそぅ……覗き計画がバレた。
「待っててね」
再度、びし、と指差されて、仕方なく立ち上がった。
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一緒に和室を出て、きっちり障子を閉めた愛羽さんが、ソファに座った私を微妙な顔付きで見下ろす。
「雀ちゃんってむっつりすけべだよね」
「むっつりでもなくすけべですよ」
脱ぐの、手伝いましょうか? と言いつつ彼女に手を伸ばしてみれば、逃げられた。
広い部屋はこれだからいけない。
「だめ。脱がすのはベッドまでお預け」
「最近お預けも多いですねぇ」
寝てたっ、ていう台詞もよく聞くけど、我慢しなきゃ……と強いられる場面もなかなかに多い。
ため息交じりにぼやいて見せると、愛羽さんはこちらへ近付いてきて、私の両肩に手をのせた。
「?」
ソファに座る私の方が、畳に立つ彼女よりも視線が低い。
何故肩に手を…? と見上げた私の額に、小さくキスが降ってきた。
「もうちょっとだけ、おあずけしてて」
ね? と首を傾げられると、頷くしかできない。
だけど、その可愛い仕草がまた、私に我慢を強いているのだと、彼女は理解しているのだろうか。
理解して、その上でやっているのなら、物凄く悪女だ。
そうでないとしても、なかなかの悪女なのだが。
「早く、よしって言ってくれないと、暴走してしまいそうですよ」
肩から零れ落ちた髪の一房を手に取って、気障ったらしくキスを落とした。
それを見た愛羽さんの顔が真っ赤になってゆくのを眺めるくらいはさせてもらわないと、このおあずけは”もうちょっとだけ”でも、耐えられそうにないのだから。
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