隣恋Ⅲ~ひねもす~ 12話


※ 隣恋Ⅲ~ひねもす~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 ~ ひねもす 12 ~

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 私のもどかしいジレンマに苦しむ心境を理解しているのか、愛羽さんは頭を撫でてくれた。

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「ねぇ、雀ちゃん」

 私を撫でる手が優しかったので、ちょっとの間大人しく撫でられていたら、愛羽さんは私の名を呼んだ。
 あぁもう少し撫でられたかったなと思いつつ、顔をあげてみれば、想像以上に距離が近い。

「ぅ」
「多分聞いたあとに、今言わないで欲しかったなぁって言う雀ちゃんが想像できるようなコト、言ってもいい?」

 なんだかちょっと難しい言い回しだったけれど、つまり、だ。
 愛羽さんには言いたい事がある。
 それを聞いたら私は「今それ言わないで欲しかった……」と言いそうだ。
 そんなあなたが予想できるけど、言いたい事があるの、と愛羽さんは宣言しているのだ。

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「なんかずるい言い回しですね……」
「でしょう? だからお伺い立ててみてるんだけど」

 半眼になってみせると、愛羽さんはそれすら承知だと悪戯っぽく笑う。
 そして自分の体を抱き締める私の腕ごとベッドへ倒れ込んで、彼女の下敷きになった腕を引き抜いて両手で握り、ころりとこちらへ寝返りをうって、私に向き直った。

 まったくもって、卑怯なひとだ。

 ベッドに向かい合わせに横向きに寝て、私の手を両手で大事そうに包む恋人が目の前に居て、どうしてそのお願いを拒否できようか。

「なんですか? 聞きますよ」
「ありがとう」

 おねだり上手というか、甘え上手というか。
 軽く嘆息をついて、私は愛羽さんの策に落ちた。

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「あのね? 昨日言ってた、雀ちゃんのご褒美の話なんだけど」
「ご褒美?」

 私が聞きたくない内容だと言うから、何か悪いことかと思ったけれど、ご褒美の話か。
 なんだそんなことか、とほっとしながら、頷く。

「ここ数日間、雀ちゃんにはお世話になりっ放しで、車で送ってもらったり、迎えにきてもらったり、ご飯作ってもらったり、体調の事心配してもらったり、あと……たくさん、我慢させたり」

 確かに。仰る通り物凄く我慢してる。数日前から溜まりに溜まった性欲を、今も必死に我慢してる。

「だから……ね? このホテルから出るまでは……」

 さっきから、もじもじとわたしの指を彼女がいじっていたが、その手が、止まった。

「雀ちゃんの、いうこと、聞く」

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 雀ちゃんのいうこと聞く。

 そう彼女は言った。
 頬を赤くしながら、私の目を見て。

 つまり……。

「……好きにしていいんですね?」

 元々の、私の要求を繰り返してみせると、見る間に真っ赤に顔を染めて、愛羽さんは口をへの字にした。
 困ったように寄せられた眉も、可愛らしくて、笑みを誘うものであったけれど、ここでちゃんと問い詰めておかなければ。

「愛羽さん」

 真面目な顔を作って、両手で包み込まれていた手で、逆に彼女の手をがしりと握る。
 少し潤んできた目をじっと見つめて放さないでいると、観念したのか、愛羽さんは唇を薄く開いた。

 すぅ、と息を吸う音まで聞こえるこの距離でも、少し聞き取り辛いほど小さい声で、彼女は言った。

「すきにしていいよ」

 と。

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