※ 隣恋Ⅲ~ひねもす~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ ひねもす 11 ~
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「それだわ」
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愛羽さんが言うには、この部屋には妙に統一感がないらしい。
和テイストを目指したいけれどそれが何かに邪魔されているような感じだという。
で、その何かというのは、育ってきた環境だと、腕を組んだ愛羽さんが言うのだ。
「わたし達日本人が、アメリカの人の家の中再現してみて、って言われても困るでしょう?」
「まぁ……確かに」
家の玄関で靴を脱がないとか、冷蔵庫が滅茶苦茶大きいとかそんな事くらいしか思いつかない。
だから、海外ドラマとかそういうもので得た知識を総動員して、”アメリカの家”を作り上げたとしても、きっとアメリカ人からみたら、違和感が多くて居心地の良くないものが出来上がるだろう。
「それと同じで、この部屋を外国人の経営者さんが設計したのなら、露天風呂の違和感もこの部屋の造りの違和感も納得できるわ」
ウンウン、と一人満足そうに愛羽さんは頷きながら私に近付いてきて、わしゃわしゃと頭を撫で回した。
「よく気が付いたわね」
偉い偉い、とくしゃくしゃに髪をかき回された私は片目を瞑りながら、彼女の両手首を捕まえた。
「愛羽さん」
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「お腹へりました」
「へ、ぁ、お腹、そっかそっか。そうよね。ご飯注文しよっか」
両手首を掴む力を弱めると、スルリと逃げ出した彼女は、私の横を抜けて超巨大ベッドの横にあるサイドテーブルに近付いた。電話の横に立て掛けてある黒いファイルをとりあげてページを捲っている姿から、あれがメニューなのだろうと分かる。
私は小さく口角を上げた。
だって、さっき。私がわざと真面目な顔をしてみせた時。
彼女が怯んだのだ。「ついに、この時が来たか」なんて表情を見せながら。
あれは確実に、愛羽さんもいつ行為が始まるのかドキドキしているんだろう。
もしかすると彼女は、部屋に入った途端襲われるかもしれないと考えていたかもしれない。
確固たる証拠はないけれど、そんな気がする。
「雀ちゃんは何食べたい?」
「どうしましょうねぇ」
食事のメニューも何にしようか悩むけれど、貴女をどうしてあげようかも、悩みますね、と心の中で付け加えた。
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結局私は目に留まった唐揚げ定食。愛羽さんはハンバーグ定食にした。
ちょっと待っててね、と電話の受話器をとりあげて、フロントに電話してくれる彼女は、ベッドに腰掛けている。
ベッドよりも少し低い位置のサイドテーブルから受話器を取り上げたせいで、さらりと長い髪が零れている横顔は、ラブホテルの一室に居るからなのか、とてもエロく見える。
そもそも、今日はちょっと長めのスカートなのが、なんともエロいではないか。
短くて際どい長さのスカートが悪いという訳ではないが、そういう格好でラブホテルを訪れると……なんとなく、セックス目的と誇示しているような気がしてしまう。
けれど今日の愛羽さんの格好は眺めのスカートに上はブラウス。”OLさんの休日”というテーマがぴったりのようなその服装で、この非日常的空間に居る存在がもう、エロかった。
電話で受け答えする少し高くなった声が可愛い。
うちの母親も電話対応でちょっと声が高くなるけれど、それは女性なら誰だってそうなるのだろう。私でもなるもんな。
と見つめながら、ぼんやり考えていると、いつの間に電話を終えたのか、愛羽さんの顔がこちらを向いた。
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「なぁに? じっと見て」
首を傾げる彼女が可愛いくて、つい、手を伸ばす。愛羽さんみたいにベッドの端に腰掛けている訳ではなく、ベッドの上に完全に乗っている私は、軽く膝立ちになった。
零れていた髪を掬って耳にかけてあげて、そのまま膝でにじり寄って、細い体を横から抱き締めた。
「15分くらいでご飯くるって言ってたけど?」
悪戯っぽく言う彼女から漂ってくる余裕の気配。
食事が運ばれてきたら、今から始めても中断せざるを得なくなると、理解しているから余裕なのだろう。
自分が、快感に翻弄される前に、行為にも満たない戯れが終わるだろうと踏んでいるから。
なんとも計算高い、したたかさ。
キスの一つでもしたいけれど、してしまったらそれこそ歯止めが利かなくなりそうで怖い。
ご飯が来るまで暇だし、愛羽さんとイチャイチャしたい。だけど、もうすぐご飯が来るし始めてしまうのは……。
ジレンマに苦しむ私は、彼女に額をぐりぐりと押し当てる。
このもどかしさの吐き出し口が欲しい。だけど、それがないのも、理解している。
――くぅぅ……ツライ。
とびきりのご馳走があるのに、手の届く位置にいるし、もう邪魔なんて入らないはずなのに、食べられないなんて。
拷問以外のなんでもない。
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