隣恋Ⅲ~ひねもす~ 8話


※ 隣恋Ⅲ~ひねもす~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※

※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 ~ ひねもす 8 ~

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「どの部屋にする? 空いてる部屋ならどの部屋でもいいって」

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 ――座るのか……? あの尖った部分に座るの? 座れる?

 と木馬を凝視しながら脳内で疑問を渦巻かせていた所に、愛羽さんの声。
 びくっと肩を飛び上がらせて「愛羽さんはどれがいいとかあります?」と尋ねるが、首を横に振られた。
 そしてラブホテル初心者には厳しい言葉である「決めていいよ」の攻撃。

「ええっと、じゃあ」

 パネルの電気が点いていないのは、きっと使用中という意味なんだろう。丁度停まっていた車と同じ数だけ暗いパネルがある。
 なら、それら以外で気になる部屋は……。

「温泉宿でお願いします」

 いつか、ゴールデンウィークに愛羽さんと一緒に行った温泉旅行を思い出して、その和テイストの部屋をチョイスした。

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「では温泉宿を二泊でよろしいですか?」
「はい」
「かしこまりました。退室なさるまで清掃はございませんので申し訳ございませんがご了承ください。こちらがお部屋のキーとなっております」

 窓口から差し出されたのは、カードキー。

「お部屋に入られたすぐ左の壁にキーを挿し込んで頂く場所がございます。キーを挿し込んで頂きますと、お部屋の電気等点く仕様になっておりますので、ご利用中はキーをそのままにしておいてくださいませ。原則、お部屋から出られませんがお車にお忘れ物等ございましたら、フロントまでお電話ください。対応させていただきます」

 それから一通りの説明を終えた店員さんから何か質問はございませんかと問われるも、特になく。

「お部屋は4階、エレベータ降りられて右側となっております。どうぞごゆっくりお寛ぎくださいませ」
「ありがとうございます」

 カードキーを愛羽さんが受け取って、奥のエレベータへと私達は進んだ。

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 ボタンを押せばすぐに開いたエレベータの扉。乗り込んで4階を押す。
 扉が閉まってから、独特の浮遊感に包まれる中、カードキーを眺めている愛羽さんを見下ろした。

「なんか普通のビジネスホテルみたい」
「こんな感じなんですか? ビジネスホテルって」

 学生時代、部活の遠征とかで泊まったホテルはもっとぼろっちかったけどなぁ。
 愛羽さんは出張とかで最新のビジネスホテルに泊まっているから分かるもんなのだろうか。

「うん。カードキーの所もあれば、部屋のキーにくっついてるガラス棒みたいなのを挿し込んだら電気がつくとかね」
「へぇぇ」

 おもしろそう。このカードを挿し込んだら電気が付くなんて。
 目を輝かせていたのがバレたのか、4階に到着したエレベータから降りた愛羽さんが私に差し出した。

「やる?」
「やりたいです!」

 両手でキーを受け取るも、彼女はキーを握る手を緩めてくれない。
 不審に思ってカードキーから愛羽さんの顔へと視線をあげてみると、首を傾げられた。

「車に忘れ物ない? 部屋から出られなくなるよ?」
「鞄も財布も鍵もケータイもあります。大丈夫。愛羽さんは?」
「鞄も財布も鍵も携帯電話もある。大丈夫」

 よし。という言葉と共に、彼女の手がキーから放れた。
 まるで犬じゃないか。

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 そんな扱いをされても、カードキーという未知の玩具を手にした私はうきうきと、4階の右側、ドアにでかでかと「温泉宿」と書かれている前に立った。

 ドアノブの上に、細い溝があって、ここにカードキーを入れるのだということは分かる。だけど……。

「これって挿れるだけでいいんですか?」

 首を傾げた私に、愛羽さんはちょっと笑って、

「挿す、抜く、がちゃ」

 と動作つきでお手本を示してくれた。
 ちなみに、「がちゃ」はドアノブを回して扉を開ける仕草だった。

 彼女に教わった通り、カードキーを細い溝に挿れて、抜くと、赤いランプが青色に変わった。それと同時に、かちゃんと鍵の開く音。
 ドアノブを回して扉を引くと、キッと小さく蝶番が音をたてて、開いた。

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