※ 隣恋Ⅲ~ひねもす~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ ひねもす 5 ~
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『おかえりなさい。帰ってますよ』
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このメッセージを打つのも2回書き直したくらい、緊張していた。
頬についたソファの痕のことも忘れてケータイを握り締めていると、既読がついて、そのすぐあとに、
『雀ちゃんもおかえり。もうちょっとだけそのまま待っててね』
と。
私と違って、メッセージを打つ手に緊張など握ってはいないのだろう。
いつもと同じスピードで返事をくれた彼女は、話の端々からラブホテルは未経験ではない様子が見て取れた。
いや、未経験だなんてとんでもない。
あの感じだと……結構行ってる……と、思う。
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そ、そりゃ愛羽さんだって20代半ばだし、色んな恋人がいたのだろう。
社会人となれば経済力もあって、高い高いと学生の友達皆が言うラブホテル代もひょいと出せるのだろう。
「……いやそもそも、女性はホテル代は出さないのか」
冷静な見解を呟くけれど、その胸中では嫉妬のような羨望のようなものが渦を巻く。
単純にいいなぁと思う。
愛羽さんと恋人になれた人達のこと。
年齢が違うし、育った地域も違うだろうから、私が一番最初の恋人になれなかったというのは当たり前と言えば、当たり前だ。
そもそも、あのエロ目でサラサラヘアーな元カレの存在が無ければ、私達は付き合っていなくて、ただのお隣さん。挨拶をする程度の顔見知りの関係が続いていたことだろう。
だから過去の恋人達に対して、「いいなぁ」と思うけれど、羨ましくて妬ましくて仕方ないという程でもない。
そして、そんな恋人達と行ったのであろうラブホテルに対しても、同じような感想を抱く。
「いいなぁ」とは思うけど、うっすら嫉妬が湧くくらい。その気持ちも、”嫉妬”というにはおこがましい程薄っぺらい気持ちなので、ついこの間蓉子さんに嫉妬した時とくらべれば、100分の1にも満たない。
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ただ沸き上がったその薄っぺらい嫉妬を誇張して、愛羽さんにぶつけてみるのは、アリかなと思っているんだけど。
女性は嫉妬されるのが多少なりとも嬉しいと聞くし、この間、「嫉妬していいし、それを素直に言ってもいいんだからね?」と諭されたばかりだ。
――多分、えっちの最中に言えば、愛羽さんは燃えるタイプだろうし……。
なんとなく、そんな気がする。
強すぎる嫉妬はなんとも言えないだろうけれど、多少仄めかすくらいだと、逆に、燃えるのではないかと思う。
――そもそも最近、結構Mっ気が強くなってきてるしなぁ。
唇の端が自然とあがる。
記憶の引き出しから、ゆらりと漏れ出してきた愛羽さんの欲しがる顔や声に、項が少しだけ、ざわついた。
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――あー…………やばい……落ち着け落ち着け。
大きく息を吸って、吐く。
落ち着け落ち着け。
ホテルに行く前にどこかで食事するかもしれないし、ホテルに入ったからといってソッコーできる訳でもないんだから。
私としてはそんなの気にしないのに、といつも思うのだけど、彼女はそういう事をする前にシャワーを浴びたがる。
だから、今日は彼女をすんなりバスルームに行かせてあげようと思うのだけれど、いまいち、信用のない自分の理性。
数日前からのお預けで、我ながら、興奮すると今夜は何をするか分からないなぁと呑気に思うのだが、どうしたらいいものか。
他人からすればそんなのどうでもいいと言われるような悩みを抱えている私の家の玄関から、カチャン、と鍵が外れる音がした。
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