隣恋Ⅲ~ひねもす~ 2話


※ 隣恋Ⅲ~ひねもす~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 ~ ひねもす 2 ~

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 顔の緩みは、バイト先でも発揮された。

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「すーちゃん、気持ち悪い」
「なんとでも言ってください。私はご機嫌なんです」

 スタッフルームで店長にひどい言葉を浴びせられたけれど、めげない。
 今日ばかりはもう、何を言われても許せそうな気がする。
 そのくらいに、愛羽さんとのラブホデートは楽しみなのだ。

 人生初のラブホを彼女と一緒に行けるというのも嬉しいし、もちろん、”致す”ことだって楽しみすぎる。

 好きにしてもいいか、と尋ねたときに、狼狽えた彼女は随分可愛いかったなぁと思い出す。
 明日までにご褒美を考えておくと言ってくれたけれど、一体何と言うのだろうか。

 私はただあの場で、頷いてくれるだけで満足したのだけど。

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 そういえば、媚薬。
 あれをどうしよう。

 愛羽さんにバラしてしまったしなぁ……と思う一方で、家に置いていても、微妙な気もする。
 ラブホにはカラオケも置いてあるくらいに、防音が優れているらしいと聞く。
 だから声の心配とかもなく、愛羽さんに乱れに乱れてもらおうと計画しているのだけど……内緒で持って行っておくか。

 飲まなかったら持って帰ってくればいいし。
 一度雰囲気に呑まれたら結構いう事を素直に聞いてくれる愛羽さんだ。

 飲んでと冷ややかに見下すように命じてみれば、すんなりと飲むかもしれない。

 以前媚薬を知らないうちに盛られた愛羽さんは随分、積極的だったし、可愛いかったよなぁと思い出して、また顔がにやけた。

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 そんな楽しい内心で接客をしていたのだが、どうも凹みに凹んだお客さんが一名いらして、まるでゲームの中に出てくる呪文のエナジードレインを食らったかのように、私にあった楽しい気持ちは奪い去られていった。

 なにせそのお客さん、面倒くさいのだ。
 最近はしばらく来ていなかったのに、昨日から二日連続で来店。しかも、夜の開店と同時にだ。

 ここに来るよりも前に、どこかでお酒をひっかけてきているみたいで、昨日と同様にお酒臭かった。

 バーテンダーたるもの、お客様の話に耳を傾け、愚痴を受け止め、心地良い空間を演出しなければいけない。
 だけどここまでべろべろに酔っ払われると、こちらとしても手の打ちようがない。
 自分の言いたいことだけを繰り返しお話されるのでほとほと困ってしまうけれど、私が一度、休憩をとるためにスタッフルームに引っ込んだ間に、お帰りになられたそうだった。

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 休憩が終わってバーに顔を出して、彼の姿が見えず、お帰りになったのだと知って、正直、ほっと胸を撫で下ろした。

 そんな私の肩をぽんと叩いて労ってくれた店長は、「アタシも休憩行ってくるからよろしく」と店の奥の扉の向こうへと姿を消した。

 失礼ながら、やはり面倒なお客様はスタッフ全員の体力を奪っているようだった。

 夜が濃くなると、お客様の数もだんだんと減り、手が空いてくる。
 そんなときは大抵グラスを磨いて過ごすのだが、今日ばかりは、グラスを磨きながら妄想に耽ってしまう。

 楽しみ過ぎて、今夜寝れるかな。
 いやいや明日の為にちゃんと眠って、明日は2限からだから、9時くらいまでしっかり寝よう。
 寸止めの仕返しをしている愛羽さんがやってきてもいけないから、ベランダの鍵はしっかり閉めて。

 まぁ、玄関から合鍵で来られたら終わりなんだけど、その時はその時で、冷静に対処だ。

 うきうきわくわくと、遠足前夜の子供のように、私は様々な妄想を繰り広げつつ、グラスを磨いた。

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