隣恋Ⅲ~あなたを独占したいんです~ 3話


※ 隣恋Ⅲ~あなたを独占したいんです~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※

※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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「い、いい……遠慮しとく今日は」

 焦ったように彼女は断る。

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~ あなたを独占したいんです 3 ~

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 愛羽さんの焦ったような一言に、なんとなく、キスの余韻が無くなってしまったように感じて、私はゆるりと身体を持ち上げた。

「雀ちゃん……?」

 何をするのかという目で見てくる彼女。
 何を、だなんて、これからすることはひとつしかないのに。

 私は彼女の下半身へと手を伸ばして、スカートをたくし上げると彼女のストッキングに手をかけた。

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 手をかけたといっても、それを脱がすように手をかけている訳ではなく。
 内太腿の伝線している箇所に、指をひっかけているのだ。

「っ、雀ちゃん……!」

 多分、愛羽さんは私が何をしようとしているのか、察したのだろう。
 焦って体を起こそうとしているけれど、私は彼女の肩を押さえて阻止。

 引き攣る顔についつい笑みが浮かんでしまうけれど……きっと悪いカオをしているんだろうな自分は。

「激しくしてとか、ちゃんとしてとか、言ってたじゃないですか」
「そっ……れは……言った、けど……」

 あの状況だからこそ告げたのであって、ふと我に還ってみればとんでもなく恥ずかしい。
 そんな様子を見せる愛羽さんが尻すぼみぽそぽそと言葉を失ってゆくのは可愛い。けど、可愛いからってこの指の行動変更をするつもりはない。
 私が笑うように目を細めると、愛羽さんは小さな声で、「破るの……?」と問う。

「今日出かけた時にトイレで伝線したって聞きましたけれど?」
「……それも……そうなんだけど」

 今度は少し拗ねた様子。
 次々と、抵抗を封じられるのが悔しいらしい。
 負けず嫌いの彼女らしいと言えばらしいが、今はできるだけ、大人しくしてくれた方がありがたい。

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 まぁでも。
 そうは言っても、だ。

 恋人のものと言えど、伝線して使えなくなったものと言えど、相手の持ち物を破るというのは無断でしていい事ではない。
 だから私はすこしだけ丁寧に尋ねた。

 ――こういうのって、結構勢いとかムードとかがないと興奮しないのかもしれないけど……。

「コレ、引き千切っていいですか?」

 聞くのは今更だし、破る気満々ではあるけれど。

「変態って言うから」
「言うだけならいくらでも」
「変態って思うから!」
「思うだけならいくらでも」
「叫ぶから!」
「開いてる窓ないですし、大丈夫ですよ」

 あれもこれもと理由を出してくる彼女の唇に、私はそっと人差し指をあてた。

「ストッキング破られたら、私の事を変態って言うけど……愛羽さんは、どうなんです?」

 わざと、すぅ……と目を細めて貴女を見つめる。

「少しも……ドキドキしないんですか?」

 大きく一度揺れたその瞳が、何よりの証拠だ。

「ちょっと期待したとか、ないですか?」
「な、い」
「どんなふうに破られるんだろう、とか」
「……」
「そこからどんなセックスになるのかな、とか」
「……」

 こちらがあからさまな単語を口にすれば、彼女はカッと頬を羞恥に染める。
 それまでのキスで愛羽さんの肌が紅潮していなかった訳ではないけれど、一瞬でその赤みを増したのは間違いなく、単語から連想をしたからだろう。

 初めこそ威勢よく貶していた私の要求に僅かでも期待した。それを言い当てられて、言い返す言葉が浮かばないのだろう。
 ぐぅと唸りそうなくらいに私を睨む彼女の口はきつく引き結ばれている。

「ねぇ、愛羽さん」

 ねっとりと呼び掛けると同等なくらい、緩慢な動きで脚を撫でる。
 細くて、柔らかくて、穿いたストッキングに一筋のほころびを走らせている下半身をゆっくり、たっぷり、撫でていく。

 脱がせてもいないスカートの中へ差し込んだ手で、膝から太腿にかけてを幾度も往復しながら彼女の欲を煽れば、睨みつけていた瞳が弱り始める。

 伝線部分は、内太腿。
 そこに触れるだけでもなかなか際どい刺激だけれども、そのほころび部分を通り過ぎて脚の付け根にまで指先が迫れば、愛羽さんの抵抗の手が伸びてきた。

「ちょ、っと……」
「なんですか?」

 なんですかじゃない。という台詞さえも途切れ途切れにして、私に煽られる欲をなんとか堪えようとする愛羽さん。
 彼女の手は、スカートの上から私の手を逮捕しようと試みるも、覆い被さる私の方が自由を有していて上手く動けないでいる。

「雀ちゃん……もう……っ」

 怒ったようなセリフを吐かれるのは心外だ。
 だって、私をベッドに連れてきたのは愛羽さんだし、したいようにしていいと言ったのも彼女だ。

 ”ストッキングを破る”
 そういうアブノーマルなセックスに抵抗があるのだろうけれど、私はそれがやりたい。
 既に渡した許可を取り上げるのは、あまりにもヒドイと思うのだが、こちらの主張が間違っているだろうか?

 その答えを否と信じて疑わない私には謎の余裕があり、さらに、彼女にはそれがない。正しく言えば、脚への愛撫で余裕を失いつつある状態。

 どちらに軍配が上がるのか。
 それは明白だ。

「したいように、していいんでしょう?」

 ぐっと身体を寄せ口を被せて、間近に見つめながら確認を取ると彼女は口籠る。
 きょろきょろと狼狽えて左右に彷徨う視線を遮るように再度口付け、今度は舌を扱くような深いキスで彼女に甘声を零させた。

 スカートの中、伝線した薄生地の上。少し力をこめた指の腹でそこを撫でれば、まるで弦を弾くような感触と共に、ほころびが増す。

「す、ず……」
「破いていいですか?」

 口付けに蕩け、動揺に震えた瞳を見据えたまま、私は愛羽さんからの返事を待つ。
 心臓はトクトクと逸るけれど、堪え、潤んだ瞳に視線を注ぎ続ける。

「…………、愛羽さん」

 小さく息を呑む音がして、彼女の唇が一瞬だけ力む。
 その様子から、ただ黙っているように見える彼女の心では随分と葛藤がなされているのだと窺えるけれど、……けれど私だって、それは同じ。

 
「だめなんですか?」

 絶対に嫌なら、早くそう言って欲しい。
 狼狽えて、迷っている様子を見せつけられると、期待が膨らんでしまうから。

「……」
「……愛羽さん」

 問うてもなかなか返ってこない回答に、私は焦れた。
 もうこれ以上待ちたくない、と脳の中には明確な意思が出来上がっており、ますます指が力んでしまう。

 名を呼ぶ声にもその堪えきれていない情欲は入り込み、私はついに、やってしまった。

 伝線部分にかけていた指が力み過ぎ、それを僅かにビビと裂いたのだ。

 ストッキングというものを意図的に破いたのは生まれて初めてだったけれど、なるほど。これは……背徳的というかなんというか……うん、興奮、するかもしれない。

 妙な納得が胸の中に落ちてきて、それが跳ねて、心音が急ぎだす。
 興奮によるものなのか、耳も、なんだか熱くなってきた。

「……愛羽さん……」

 吐息混じりに彼女を呼べば、やはり、愛羽さんも少なからず何かの興奮は覚えているようで、なんとも言えない顔をしている。

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――そういう顔するから。

 自制心がゴリゴリ削られるんだって……。

「ねぇ……」

 私だけのせいじゃないぞ。

 なんの意味もない責任逃れを胸中で呟きながら更に力を加えると、ビ、ビ……と小さな音を立ててストッキングは穴を大きくした。
 見つめ続けていた彼女の瞳がまた揺れて、狼狽えながらも愛羽さんは私の手を止めさせようとする。

「……だ、駄目だってば……」

 くい、と腹辺りの服を引く手の握力も弱く、本当に本気で駄目と思っているのか? と訊き返したくなる消極的な抵抗。

 大きく空けてしまったストッキングの穴から指を挿し込めば、ぐわりと胸に込み上げる背徳感。すこしざらつくストッキングとは全く違う感触の素肌に触れ、揉みこむようにゆっくりとなぞる。

 ……。

 どうしよう。
 めっちゃ気持ちいい。

 つるっつるのさらっさら。
 女のひとの内太腿って、こんな気持ち良かったっけ……?
 いや、でも、自分も女だけど、こんなに手触り良くないぞ……?

「……ちょっ、……と」

 じわりと這い寄る快感で完全に抵抗しきれていない声で、愛羽さんは私を諫める。だが、それを無視してさらに彼女の脚を撫でると、「……ん」と小さな小さな喘ぎ声。
 聞きつけたその瞬間、自分の目が不敵に光ったと思う。

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「ねぇ……愛羽さん」
「ん、な、何?」

 また小さな喘ぎを漏らしながらも、何事もなかったかのように彼女は強がる。

「どうしてストッキングを破られて興奮してるんです?」
「こっ……っしてない……!」

 また、言い返してくる彼女。
 懲りないひとだなと内心苦笑した私は腕立ての要領で体を起こしながら、彼女の下半身の方へゆっくり重心を移動させた。
 もちろんストッキングの穴へ差し込んだ指で、ゆるゆると肌を堪能しながら。

「こうして破られた所から撫でられると、気持ちいいんでしょう?」

 この行為が気持ちいい、と思うのは、お互い様だろう?

「よ、くない……んぁ……っ!」

 口で否定されようと、見ていれば判る。
 さらに愛羽さんは親切にもこちらへその快感の証拠とも言える嬌声を可愛く提示してくれて、私はにやりと口角を持ち上げた。

「いま、何か言いました?」
「言ってない……っ」

 ……ほんと、たまにすごく意地っ張りになるよなこのひと……。
 呆れると言うよりは、可愛いなと思う質なので構わないけれど、だからと言ってそれをスルーできるほど私は大人でもない。
 愛羽さんにしてみれば迷惑でしかない話だが、そこを基点にいじめてやろうと思ってしまう。

「ならいいですけど、静かにしてくださいね?」

 喘ぎ声に言及すれば彼女はカッと面を赤くして私を睨む。
 そんな表情をすれば可愛いだけなのに。

 静かにしてと言いつけた私は彼女に膝を曲げさせた。
 すると当然スルリとスカートが脚の付け根まで落ち、愛羽さんの手が慌てて裾を戻そうとする中、ストッキングの穴が開いた部分へ顔を寄せた。

「ちょっ……!」

 待て待て待てと云わんばかりに私の頭を手が掴む。が、小さな手一本でどうにかなるものではなくて、力比べの後私は無事にストッキングの穴の元へ到着。柔肌へ直接口付けた。

 せめてもと、急いでスカートの布で下着辺りを匿う愛羽さんの脚がぴくんと跳ねる。
 目の前でそうなったのだから、見えていない訳がない。

 が、私はその可愛い反応を素知らぬふりで遣り過ごす。
 彼女の脚の間へ蹲るなんとも間抜けな自身の体勢や格好も、気付いていながらどうしようもなく知らん顔しか出来ないが、……まぁそれは、誰に詰られるものでもないから良いとしよう。

 スカートの裾を押さえ、軽く状態を起こした彼女の素肌。ツルリとしていてもちろんのこと、舌触りも最高に良い。
 唇の間から少し覗かせた舌で幾度か味わえば、ついに、彼女の口から「ん」と声が漏れた。

 堪えきれず、という雰囲気のある声は好きだ。
 ぞくとする程可愛くて、もっとその声を聞きたくなる。

「静かに、って言いましたよね?」

 喘ぎ声を聞きたくて仕方がないのに、彼女の羞恥心を煽るためだけの文句を投げ、スカートの裾から離した手を自分の口へあてがって耐える愛羽さんに、どこか充足感を覚える。

 ――かわいい。

 けど、まだまだ、足りない。

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 私の言葉に従順な姿勢の愛羽さんから内太腿へ視線を戻せば、嫌でも興奮する光景。

 私が穴をあけたストッキング。素肌の部分と、まだストッキングの中にある肌の部分。その境目がぷくりと盛り上がり、彼女の柔らかさを唱えている。

 魅惑的な境目へ舌を伸ばし、ゆっくりと穴を辿るように舐めてやると、頭上から「ひぁ」と短い声。
 口では諫めないけれど、そのつもりで彼女の柔らかな肉へと噛みつけば、言い訳じみた口調の彼女。

「……だって……こ、んなのっ」

 普段、こんなシチュエーションなんか体験しないだろう。
 まぁ、普通の神経の持ち主なら、ストッキングが伝線したらすぐに脱いで捨てるだろう。
 今日はデート中ということと、普通にしていれば隠れて見えない位置の伝線だったから愛羽さんは穿いてた訳で、そのうえ、帰って来て即行で私が襲い掛かったおかげで捨てる暇もなかった。

 ただそれだけの理由でこの伝線ストッキングはここに在ったのだが、だからと言って普通は、破いてもいいか? とはならない。

 けれど……今日、恋人が告白されるのを目の前で見せつけられている私は……。
 この普通ではない状況を作り上げてでも、この嫉妬心を愛羽さんに見せ付けて、分かって欲しかった。

 異様な程貴女が欲しいのだ。
 貴女の目をすこしでも奪われたくなくて、電車で数分奪われただけでも嫌だったのだ。
 あの高校生よりも私は特別な存在で、こんな事をしても許される存在なのだと、言って欲しかった……のかもしれない。

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 そんな考えを巡らせていると、記憶というものは再生されるらしく、電車の中で見せつけられたあの光景が甦る。

 私の恋人が、告白される、あの光景。

 ……私が、嫉妬深いのだろうか?
 世の中の人は皆、あんな光景が目の前で広がったとしても、「自分がこの人の恋人だから」と優越感に浸って、嫉妬もなにもせず、いられるのだろうか?

 高校生の告白をきちんと断ってくれた今となっては余計な考えだと思うけれど……。
 考え始めるとどうにもならなくて、つい、力がこもった。

 ビ、と音がして、自分の指がまだ伝線していない脚のストッキングを破いたことに気が付く。
 マズイ。しまった。と瞬時に焦った私の耳へ、

「……はっ……ぁ……ん」

 届く乱れた呼吸と、微かな喘ぎ。
 明らかに感じている声に、うなじの産毛が逆立って、眉間にぐっと皺が寄る。下腹部に妙な火照りを感じるような催淫性の強い嬌声。

 続けて破いていいのか、と自問するが、彼女の様子に後押しされた私は……再びストッキングを大きく破いた。

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