※ 隣恋Ⅲ~ブラジャーの日 後日談~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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徐々に膨らむ瞳の炎。
それを見てわたしは、更に燃え上がればいいと思ってしまうのだ。
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~ ブラジャーの日・後日談(2019年加筆修正版) 7 ~
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気が付いたら、唇は離れていた。
わたしは肩で息をしながら、俯いて。まるで力の入らなくなっている両手でなんとか雀ちゃんの肩を掴んで自身の体を支えている。
心臓はバクバク鳴り続けているし、顔は熱くてたまらないし、何より、心臓の奥がキュウキュウと鷲掴みにされている感覚が終わらなくて戸惑う。
――……なんで、こんな。キスだけなのに。
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こっちから仕掛けたのに。
キスだけでこんなにも翻弄されて。
悔しくなる反面、やっぱり好きで惚れ込んでいる事を再確認させらるとどうにも……”好き”が更に増して、もっと彼女が欲しくなってしまう。
こんな状態で求め始めてしまうと、さっきまで頭にあった魂胆だとか計画だとかは完璧に吹き飛んでしまう自信がある。
彼女の落ち込んだ気持ちを解消させ、心に滲みが残らないようにする。という目的が一番でなくなって、好意を交わす事が一番になってしまう。
それはそれで、いいのだろう。だけど、いいのだろうかと思う。
常々年上として、リードしなくては、という思いはあるから。
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心中を葛藤で悩ませながら、俯けていた顔を少しだけあげ、彼女の顔を確認しようと視線をあげた。瞬間、狙っていたかのようにわたしの顎が、ク、と上げられる。
ちょ……待って、この手はさっきわたしの後頭部を支えていたはずの手なのにいつの間に……。
親指を顎の下に、残り4本指を頸動脈へあてるよう手を添えて、上向かされたわたしの首筋。
そこに、雀ちゃんが顔を埋めた。
え、と思った時にはもう遅く、彼女の熱い舌がわたしの肌を舐める。
言うなれば、一舐め。それだけなのに。
「ンっ、ぁ」
自分でも戸惑うくらいに、上擦った甘い声。蕩けて、明らかに、感じているのが判るそれ。
その上、喘いだ拍子に……というか、舐められた拍子に、彼女に縋っていた左手が外れて体が傾ぐ。
そんなわたしをどう思ったのか、雀ちゃんは笑うよう小さく息を吐いて、また、ぬるりとした感触をわたしに与える。
「ふぁ……っ」
やはり、漏れ出る声。
これに察する。
今日は……我慢、できない。
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考えてみれば、お風呂の前からわたしの性欲は焚きつけられ続けていた。
その後のゴタゴタで忘れていたけれど、そういえばそうだ。
だから、こんなに声が……と考えが辿り着いた所で、雀ちゃんの舌が鎖骨に。
「んゃ、ァ……っ」
待って、と言えない程に咄嗟に出た喘ぎ声。
彼女の肩に縋る片腕でへたり込みそうな体を支え、快感の走る背骨や後頭部に脳が痺れる。
こんな調子では縋っている手も外れてしまいそうだと危ぶんだ瞬間には視界がぐわんと揺れて、一体どんな早業なのか。抱き上げられていた。
いわゆる、お姫様だっこ。
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「ちょ、雀ちゃん……っ!?」
一気に高さの上がった視界で自分は恋人に抱き上げられたのだと認識。
慌てて落ちないよう彼女の首に腕を回すけれど、重いと思われたくなくて、おろしてと頼むけれど。
「むりです」
だそうで。
嫌でも駄目でもなくて、無理と言うあたり、余裕がないのかと察する。
ソファから離れて、ベッドへ歩く雀ちゃんを見上げて、また、胸が鷲掴みされてしまう。
……さっきまで泣いてたくせに、こういう所だけしっかりするって卑怯すぎるわ。どきどきするに決まってるじゃないの。
胸中で漏らしている間にもベッドの上へと体を横たえられ、わたしを跨ぐように馬乗りになった雀ちゃんを真上に見上げて、なんだか泣きたくなるような切なさを伴う好意が胸に溢れた。
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わたしの肩の横に両手を着く彼女を見上げ、好きが募って思わず、その頬へと手を伸ばす。
ああもう、本当に、忘れてしまいそうだけれど、わたしにはさっきまで計画があったのに。
……忘れてしまっていいかもしれない。
なんて思うのは、駄目なことかしら。
わたしが見上げる雀ちゃんにこうして見下ろされていると、そんなものは忘れて、思うままに求めてしまいたくなる。
「愛羽さん」
名を呼ばれて、その声がいつもよりも低めで囁くように掠れたものだと、心臓はより速く、血を全身に巡らせようとする。
「もっと、愛羽さんが欲しいです」
熱く真っ直ぐに見つめてくるその瞳は炎が宿っているけれど、いつもよりはいくらか小さい炎。
彼女の心中を察すると、わたしは彼女の頬へあてがっていた手を首へ滑らせてうなじを手のひらに抱えた。
熱い。
二人ともお風呂に入ったばかりなのに、彼女の体温の方が高い。
―― くっつきたい。
うなじに掛けた手で恋人を引き寄せ、わたしも枕から少し頭を持ち上げて口付ける。
数回の啄むキスで離れると、彼女の瞳の炎は少しだけ、燃え上がっていた。
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