隣恋Ⅲ~ブラジャーの日 後日談~ 3話


※ 隣恋Ⅲ~ブラジャーの日 後日談~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 だかだか指の1本で、わたしは貴女の思うままになる。

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~ ブラジャーの日・後日談(2019年加筆修正版) 3 ~

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 何も、されていない。
 愛撫されている訳でも、濡れた舌で舐められている訳でもない。
 熱い吐息が触れる距離でもない。

 なのにどうして。

 こんなにも心音が速いのか。

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 ベッドに腰掛けたわたしは、見下ろしてくる雀ちゃんの視線に耐え続けていた。

 だって、恥ずかしいどころの話ではない。
 普通に生活していてこんな派手でえっちな下着、着る経験なんてない。

 まだ裸でいた方が恥ずかしくない。そんな感情が芽生えるくらいに、恥ずかしい状態。

 雀ちゃんはさっきから黙ったまま何も言わない。ジッと見てるだけ。
 早く、何か言って欲しい。いやむしろ、これからえっちするなら、さっさと脱がせて欲しい。

 顔は熱いし、体も恥ずかしさから体温が上昇していて熱い。
 わたしの顔はさぞ、赤いことだろう。

「……っ……」

 ――もう、むり。

 ついにと言い表して良い程の時間耐えた訳ではないが、わたしは我慢の限界を迎え、せめて、とばかりに両腕で自分の体を抱くようにして雀ちゃんの視線から隠した。

 それでも、ここから移動して目の届かない場所へ逃げ出したりしていない分、褒めてほしいくらいの心境だ。

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 だけど。
 やっぱりわたしは甘かった。
 完全にSモードの雀ちゃんを前に、そんな行為。
 彼女を煽るだけだったようだ。

「誰が隠してもいいって言いました?」

 口調は丁寧。物腰も柔らかい。
 ただ、ただ、その身に纏う雰囲気だけでわたしを圧倒していく。

 ぴくりと肩を震わせて生唾を飲み込むわたしに向けて手を伸ばした雀ちゃんは、ブラジャーの細い肩紐を辿るように肩から胸へかけて、あてがった人差し指一本で、ツゥ……と肌を撫でた。

「……ぁ」

 ただ、指一本で触られただけ。
 それだけなのに、指が鎖骨にさしかかったとき声が洩れた。

 愛撫と言うには程遠く、えっちの始まりと言うには稚拙なその接触。
 それだけで、ぁ……喘ぐなんて……。

 羞恥により、また孕む熱を高くしながら、自分の体を抱いていた腕を片方ぱっと解いて、わたしは慌てて口を押さえた。

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 こんな下着を着て、こんな状態で。
 そう簡単に喘いでいたら、過激な下着の趣味でもあるのかと思われそうで、手の下で唇を引き結ぶ。
 それなのに。

 彼女の指が肩紐から離れて、わたしの骨格をなぞるように骨の上を辿ると、どうしようもなく、体が震える。

 そして……声が、漏れそうになる。

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 引き結んでいたはずの唇は簡単に解けて、ひきつった吐息を漏らす。

 わたしの体を辿る指は、肩から二の腕までをゆっくりと歩き、身体を開かせる。
 派手な下着を纏う体を少しでも隠そうと残していた片腕を優しく引き剥がし、体側へ。

 力づくでされた訳でもない。
 なのに、わたしは彼女に従い、左手をお尻の横に着く。

 右手は口を覆い、声を堪える補助にしていたのだけれど、そちらの腕にも雀ちゃんの人差し指は及び、そっと、引き剥がされた。

 ドクドクドクと速い心音を聞きながら、わたしは目の前のひとのジーンズを見つめる。
 背の高い雀ちゃんは当然脚も長くて、わたしがベッドに腰掛けていると丁度視線の高さは下半身へと向く。その上、恥ずかしすぎてわたしが俯きがちなので、太もも……いや、膝くらいを視野の中心にもってきているくらいだ。

 結局、ほんとうに、指一本だけで体を隠す左手も、口を覆う右手も、退けられた。
 その偉業を達成した雀ちゃんは飽きる事もないのか、腕から肩へと撫で戻り、ゆっくりと、ゆっくりと、肩口の骨を首方向へむかって進んでいる。

 ――……いつも、思う、けど。

 もう彼女との行為もそれなりの回数を重ねてきた。
 だけど、度々、思う。

 その年齢で、よく、その余裕を持ち合わせたえっちが出来るな、と。

 彼女はまだ10代だ。近頃の子は初体験も早いと出所の分からない風の噂で聞くけれど……仮にそうにしたって、雀ちゃんには余裕というものがあり過ぎる。
 前戯に至っては、わたしばかりが息を乱して、声を零している。
 こちらばかりが盛っているのかと心配になるくらいで、ふと不安に駆られて彼女を見遣れば…………火傷しそうなくらいに熱の籠った瞳と出会う。

 そうして目が合った拍子に、「すげぇかわいい」などと、いつもの口調と異なる呟きを聞かされると、もう、もう、堪らない。
 自分だけが昂っているのではなかったという安心や、求められる悦びが、わたしの身体の感度を上昇させるのだった。

 ふ、と。
 自分が数瞬考えにトリップしていた事実に気付き、はっと我に還る。

 雀ちゃんの指はいつの間にかわたしの首に差し掛かっているではないか。
 これは、……まずい。
 だって、わたしは首が弱い。

 そんな所を辿られると……どうなるのかは目に見えている。

 しかし最後の抵抗だ。
 わたしはベッドのシーツを強く握り、声だけはどうにか我慢しようと試みる。
 唇にもくっと力を入れ引き結ぶ最中、雀ちゃんの人差し指が首筋を撫でてきた。

「……っ、……ん……」

 無駄な、抵抗だった。

 わたしの身体を知り尽くした彼女に抵抗できるかもだなんて考えこそが、間違い。
 あっけなく、わたしは声を洩らした。

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 あああもう。と心の中で叫びつつ顔を赤くしていると、

「どうしてそんなに可愛いんです?」

 上から降ってきた質問。

 可愛くない、といつものように断言できればいいんだけれど、今、それをすると、雀ちゃんの引き金を引いてしまうかもしれないことが予想されて、わたしは彼女を見上げるだけに留めた。

 ……それがまるで、誘っているように彼女の目に映るとも知らずに。

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