※ 隣恋Ⅲ~ブラジャーの日 後日談~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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どうして今日はこんなにも、彼女をいじめたくなってしまうのだろう。
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~ ブラジャーの日・後日談(2019年加筆修正版) 12 ~
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わたしの言葉に、雀ちゃんがビクリと身体を震わせて、息すら一緒に止めて停止してしまった。
その初心な反応に思わず、唇から笑みが零れる。
「その可愛い顔、見たいんだもの。わたしに見せて?」
例えば逆の立場で、雀ちゃんにこんなふうに言われたら……わたしならどうするか。
まず、恥ずかし過ぎて、顔なんてあげられない。それどころか、隠し続けてしまうと思う。
あ、ほら。雀ちゃんだって、うつ伏せで耳や首まで赤く染めて、枕に顔を埋めてる。
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まるで、枕にしがみ付くみたいにして顔を隠す雀ちゃんの可愛さ。
普段はあんなにクールだし、カッコイイ所もあるのに、この可愛さ。
多分、世界中でわたししか知らないんじゃないかしら? と自惚れたくなる。
恋人の可愛らしさに胸を鷲掴みにされながら、わたしは彼女の背中にキスを落とす。
汗ばんだ肌はしっとりとしていて、手で撫でれば吸い付くみたいだ。感触を楽しみながら、ゆっくりと這わせた舌で、浮き出る肩甲骨を撫でて骨格を辿る。
「ん、っ、ア……ッ」
枕でくぐもった声。
もっと明瞭にその甘い声を聞きたいけれど、くぐもった声も、それはそれで、情緒があって良い。
どこかのえっちなおじさんみたいな事を頭の隅で考えながら、わたしは更にねっとりと舌を背中へと押し付ける。
「ぁ、あいはっ……さん……!」
焦った声音が、可愛い。
そんな声でわたしを呼ぶなんて、焚きつけるだけよ?
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可愛い可愛い雀ちゃんの顔を拝みたいのはやまやまなんだけど、それとは別に、可愛い声ももっと聞かせてほしい。
葛藤するふたつの欲求に心を揺らしながら、肩甲骨から舌を徐々にずらして、下へと下る。
昔バスケをやっていたという身体は腰がくびれていて、とっても綺麗。
そんなラインを辿っていくと、雀ちゃんが切羽詰まったような声でわたしを呼ぶ。
名前の合間に、待って、と言われた気がしたけれど、待ってあげられない。
こちらが抱く立場なのに。
愛撫をされている訳でもないのに。
息が乱れて、鼓動は速くなる。
――……コントロールできない。
溶けそうな脳で、そう考えた。
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わたしの舌は彼女のショーツを掠めるようにして腰まわりを辿っていく。
時折、下着の下に潜り込む舌の感触を雀ちゃんはどう感じてるかしら?
じれったい? それとも、気持ち良い?
どんなふうに思っているのか、口に出してみて欲しい、などと願うものの……その願いはきっと叶わない。
何故ならそれは、わたしですら、恥ずかしくて出来ないことだから。
「ん」
チゥ、と甲高い音を唇の隙間から零しつつ、腰に紅華を咲かせると、ついに、身を捩るようにして雀ちゃんが動き始めた。
さっきまで、どうにかこうにか、枕やシーツにしがみつくだけだったのに。
今は意図的に身動いで、持て余す快感を逃がすようになったのだ。
「ぁ……ッ、ハ……んんっ……」
上擦った喘ぎ声。
詰まらせる息。
魅力的な彼女の全てに、当たり前に、わたしは溺れる。
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――その声、もっと、頂戴。
彼女の腰へと吸い付き、更に紅い華を咲かせながら、脳内でそう告げる。
相手に届いていないのは分かっている。だけど、語り掛けずにはいられない。
咲かせた紅華をペロと舐め、さらに下へと下っていくわたしの舌。
彼女のショーツを越え、臀部を越え、太ももの裏にキスを落とす。
雀ちゃんの身体は基本的に筋肉質だ。
女の子らしい柔らかさもあるんだけど、どちらかと言えば、締まった体をしている。
キュッとした脚へいくつもキスを落としながら、指先でするりと撫でた。
身体全体をくまなく可愛がる前戯が後程の快感に、どれほど影響を及ぼすかは、体験済。
前戯の長さと濃さは、最終的にえっちの満足度に直結していると言っても、過言ではない気がする。
そんな事を考えながらふくらはぎまで下っていったところで、わたしの目の前から、脚がスッと姿を消した。
なんて早業。
見れば、雀ちゃんが仰向けで脚を引っ込め、上半身を起こしてこちらを見ていた。
それはそれは、可愛いカオで。
「も、もう限界です……っ」
可愛いセリフで。
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背に圧し掛かっていたわたしが体を浮かせ、更に脚の方へ移動した一瞬の隙を突いて、雀ちゃんは逃げ出した。
物凄く素早い動きで体を起こしていたけれど……与える快感が足りなかった?
わたしの経験上、あまりにも気持ち良いと上手く動けなくなるんだけど、この子にはまだ、余裕があるみたいだ。
密かにジリリと焦げるような加虐心を抱きつつ、わたしは逃げていった人物を眺めた。
無意識なのか意識的なのか、快感を強制的に与えてくる人物から遠ざかろうとして、ベッドに座り、ヘッドボードへ背をくっつけるほどに退がる雀ちゃん。
ただその仕草だけを見れば、拒否されているようでヘコみそうになるけれど、彼女の表情を見れば訳が違ってくる。
上気した頬、寄せられた眉、まだおさまりきっていない乱れた呼吸を繰り返す半ば開いた唇。
困ったようにわたしを見つめる潤んだ瞳には、欲情に蕩けた色と、炎。
……そんな可愛い表情見せ付けられて、わたしが止めるとでも思ってるのかしら?
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まるで獣のように四つん這いになって、ベッドの上をゆっくりと進む。
視線はもちろん、獲物から外さず。
わたしの動きにあわせて、ギシ、ギシと音を立てていたベッドが静かになった頃、わたしの眼前には口をへの字にした雀ちゃんがいた。
……どうしよう、可愛いんだけど。
普段とのギャップに、きゅんとしちゃう。
なに、この子。
無駄に可愛い。無性にかわいい。煽る気なんてないんだろうけど、いじめたくなっちゃう顔してる。
平常時こんな表情を見せられたなら、うりうりと頭を撫で回して抱き締めているところだけれど、今は、ちがう。
「限界?」
赤い顔の彼女が首を横に振るのは分かりきっていた。だからこそ、投げかけた質問。
本人に、”自分が認めたのだから”という自覚を抱かせると同時に、心積もりをしてもらうのだ。
「キスも、駄目?」
きちんと答えを貰ってからでないと、上手くコトは進まない。
城を陥落させるには手順というものが、あるのだから。
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わたしのねだるような台詞に、「ぅ」と小さく漏らしながら目を泳がせる彼女。
限界だと言って逃げたものの、それが本気でこれ以上の接触や愛撫を受け付けたくはない! という強固な主張ではないと、わたしは初めから分かっている。
例えて言うなら「死にたい」=「南の国へバカンスに行きたい」のような感じで、雀ちゃんの「限界です」=「休憩させてください」ぐらいなのだ。
だからこそわたしは、彼女の頬へ手を添えて、指先で優しく撫でる。
「好きよ」
「ぅ」
「ね? 雀ちゃん。もうちょっとだけ、キスさせて?」
「……ぅ……」
「だめ?」
語尾を僅かに上げて確認をとれば、雀ちゃんは小さくコクンと頷いた。
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陥落した彼女に微笑んで見せると、とっても複雑そうな表情をした恋人は、「私もすきです」と教えてくれた。
キスを許したからには、そこから更に行為が続くぞと予期しているにも関わらず、ちゃんと気持ちを伝えてくれるところは、性格の良さや優しさが表れている。
「ありがと。大好きよ」
彼女の膝を跨ぎ、まるで対面座位のようにして座りながら微笑みかける。
恥ずかしいのか、照れるのか。より一層への字になる口。
それを解すよう、わたしは彼女の唇へ自分のものを重ねた。
「ん……」
普段ならば、背の高い雀ちゃんが俯き、背の低いわたしが上向く形でのキスをする。
けれど今は彼女の膝に座るわたしが俯き、雀ちゃんが上向いている。
いつもと違うその姿勢もなんだかわたしの興奮を煽るのだけれど、なんとか自分を抑えながら、彼女の固い唇に柔らかく触れていく。
啄むように、何度もそれを食んでいると綻んできた。
すき、とキスの合間に囁くよう告げ、彼女の鼓膜を震わせて、髪をかき抱くように手を後頭部へとまわす。
綻んだ唇はわたしの口付けに応じて啄んできて、その仕草に、腰がジンと痺れた。
雀ちゃんの事を感じ易い感じ易いといくら言っても、やはりわたしには敵わないのかもしれない。
わたしの方がこんなにも、感じやすいのだから。
「……ぁ、いはさ……」
止まることのないキスの合間に互いの名を呼び合う。
それがどれ程昂るものなのかをわたしに教えてくれたのは、他でもないこの雀ちゃんだった。
彼女と付き合う以前の人たちとのキスは……こんなふうではなかったから。
「雀ちゃん……すき」
唇を繋ぐ銀糸さえ愛しく見えて、わたしは心中で、「重症」と呟いた。
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惚れた人の唾液すら愛おしくなって、我慢できずに彼女の口内へ舌を伸ばす。
忍び込んだ先は温かく、迎えるようわたしの舌に絡んできた雀ちゃんの舌は、鳥肌が立つくらい気持ち良かった。
ぐちゅり、と卑猥な音が耳に届くけれど、他に誰が聞いているでもない。
わたしたちは互いを求めて、口付けを交わし続けた。
どのくらいそうして、互いの唇を重ね、互いの舌を絡ませ、互いの唾液を飲み干しただろう。
ふと気が付いた時には息を荒くしながら、離した唇で酸素を貪っていた。
伏し目がちの雀ちゃんの表情は、色っぽいとしか表現できなくて、その濡れた唇から零れたふたりの唾液が首筋を濡らしていて、さらに淫靡さを見せ付けてくる。
「……濡れてる」
わたしはぽつと呟き、乱れた呼吸を整えている雀ちゃんの顎へ手を添えて、横を向かせ、首元を開かせた。
そうすると、光の当たり具合で濡れた首筋がてらと光って、色気が匂いたつ。
我慢も出来ず、わたしは唇を押し当てた。
「あっ」
不意を突かれた雀ちゃんからしてみれば、あれよあれよという間に、攻め込まれた感じなのだろうか。
濡れた首筋を小さく出した舌で辿りながら、彼女を窺う。
「んぅ、っん」
子犬が甘えるような雀ちゃんの鳴き声。
もっと聞きたくなる、声。
濡れた首を拭っているのか、余計濡らしているのか分からなくなりそう。
そんなことを考えながらねっとり舐めたそこは、肌が光り、どうしようもなく、色っぽい。
――……あぁ……ほんと、もう……。
言葉に出来ない昂りに、胸の奥が熱くなっていく。
どうして今日はこんなにも彼女が可愛く映って、いじめたくなってしまうのだろう。
理由の分からない気持ちをぶつけるよう、わたしは彼女の鎖骨に、歯を立てた。
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