隣恋Ⅲ~ブラジャーの日 後日談~ 10話


※ 隣恋Ⅲ~ブラジャーの日 後日談~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 いつもと逆、っていうのも、なかなかいいものね。

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~ ブラジャーの日・後日談(2019年加筆修正版) 10 ~

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 幸運な事に、わたしが彼女の後頭部から手を外すと、雀ちゃんは逃げるかのように腕の力で自分の体を浮かせた。
 あ、ラッキー。などと心の中で喜びながら、背中に回していた腕もさりげなく外してわたしと彼女の体の間に滑り込ませて、雀ちゃんの胸に触れる。

「……っ」

 声すら上げなかったものの明らかに照れて、雀ちゃんがさらに体をもちあげ、わたしはほぼ自由に動けるようになった。
 開いた空間を利用してするりと体をずらし、雀ちゃんの真下から横へ抜け出す。

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「逃げちゃ駄目じゃない」

 体勢が自力で変えられなくて困っていました、なんておくびにも出さず、わたしは嫣然とした笑みを顔に浮かべ、雀ちゃんが体を支える為に着いている腕の関節を手刀で打つ。
 関節は曲がる方向への攻撃に弱い。わたし如きの力の手刀でも彼女の体は簡単にベッドへ落ち、短く慌てる声をあげた雀ちゃん。

 そこですかさず、背中にのしかかるようにして彼女の動きをまた、封じた。

「ちょ……愛羽さん」
「んん?」

 雀ちゃんの声が、焦ってる。
 そりゃあそうね。
 普段とはまるで逆位置だもの。いつも抱く側の人間の雀ちゃんにしてみれば、焦り以外には不安くらいしかないだろう。

 一体、何をされてしまうのか、という不安。
 それに返す答えは、こんなものでいいだろう。

「気持ちいい事、してあげるから」

 じっとしていなさい。と、彼女の耳に、吐息と共に、囁いた。

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 うつ伏せ状態の彼女の背へ圧し掛かっているわたしは、鼻先で雀ちゃんのふわふわの髪を掻き分けて、辿り着いた首へと唇を落とす。
 たったそれだけで、ビク、と反応するのだから、彼女も育て上げればわたし並みに感じ易い身体になるのではないかと考えが過ぎる。

 頭の隅に湧いた展望に笑みが深くなるけれど、そんな悪い笑みを雀ちゃんに見せる訳にはいかない。
 ま、背にいるわたしの顔が見えないと分かっているから、遠慮なく笑ってるんだけど。

「……ちょ、っと……愛羽さ、ん」

 表情の見えないわたしを窺うべく、首を巡らせようとするうつ伏せの雀ちゃん。
 もう。じっとしてなさい。って言ったのに。無駄な抵抗するんだから。

 大人しくしない彼女に嘆息を吐きたくなるが、流石にそれはしない。代わりに、動きを遮るように彼女の首の後ろ……つまりうなじをペロリと舐めてあげる。
 途端、小さく、くぐもった声がわたしの鼓膜に届いたけれど、まだまだ足りないと不満を覚えた。

 ――もっと、雀ちゃんの声が、ききたい。

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 行為の際、雀ちゃんがよく、

「愛羽さんの声、もっと聞かせて」

 と言うのだけれど、その気持ちがそっくりそのまま、わたしに乗り移ったみたいだ。

「かわいい声。わたしにちゃんと聞かせて?」

 唇から紡いだ要求は、きちんと彼女の脳を侵食してくれるだろうか?
 そんな希望を抱くが……。

「かっ、かわいくないですし」

 ……んー……だめだったみたい。
 わたしは抱かれている時、雀ちゃんに要求されたら……脳の中が甘くなっちゃうんだけど、彼女は違ったみたい。
 人それぞれってこと、なのかしら?

 まぁ、抱かれ慣れていない雀ちゃんにしてみれば、恥ずかしさが込み上げ抵抗し続けたくなるのかもしれない。
 あぁ……あと、わたしがまだ、女の子を抱くのが下手、っていうのもあると思う。

「私より愛――」

 背後を向かせてもらえないならばせめて、と言った具合に雀ちゃんは右頬を枕にくっつけて、横を向いた。
 そうしながら、更に続けて何かを言い募ろうとした雀ちゃんは必死な様子。
 どうにかして、わたしに抱かれるのを回避したいらしい。

 が。

 彼女の唇に指を押し当てて言葉を遮り、雀ちゃんの左耳に、わたしは唇を寄せた。

「――黙って?」

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 わたしの言葉に、雀ちゃんの喉がコキュリと生唾を飲み込んだ。
 ちょっとイイ声を出すつもりでやったけれど、なかなか影響力の強い囁きだったみたい。

 横を向いている雀ちゃんのほっぺがどんどん赤くなっていく。
 かわいい。

「わたしは、貴女の声が聞きたいの」

 こちらの求めるものを寄越しなさい。と云わんばかりの宣言をして、彼女の左耳に舌を伸ばす。
 まるで耳を塞ぐかのようにねっとりと、人より長い舌で外耳を舐めあげれば、彼女の呼吸が一瞬、乱れた。

 ――やっぱり、感じやすいのかも……?

 恋人を観察しながら、悪戯っぽく耳朶を舌先で揺らしたり、口に含んで吸ったりしてみる。
 その度、雀ちゃんは短く息を零したり、ベッドのシーツを握り締めたり、引っ掻いたりしている様子は、たまらなく可愛いし、そそる。

 しかし、しばらく耐えていた彼女はずっと気になっていたのか、

「……な、んで、急……に……?」

 途切れ途切れに、尋ねてきた。

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 なんで急に?
 こんな状況になったのかって?

 ……そりゃあ、もちろん。

「雀ちゃんとのキスに、興奮しちゃったから」

 決まってるじゃないの。

「だ、ったら……私、が」
「駄ぁ目」

 いつもと同じように自分が上になると言い始めた雀ちゃんの耳は真っ赤で、ちらっと覗いている頬も、ずいぶん、赤い。
 耳への愛撫を耐えていたが、恥ずかし過ぎてそう言い始めたのだと分かると余計に、苛めたくなってしまうのはどうしてかしら?

「今回は、わたしがしたいの」

 有無を言わさぬ強い響きを言葉に乗せたあと、わたしは耳たぶに噛みついてやった。

「いっ」
「大人しく言う事聞かないと、もっと噛むわよ?」

 噛みついた耳たぶを舌で優しく撫でてから脅すと、雀ちゃんは小さく唸って、顔を隠すように額を枕に擦りつけた。

 どうやらこれでやっと、彼女を攻める為の下準備が整ったみたいだ。

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