※ 隣恋Ⅲ~媚薬~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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伸ばす舌を可愛がる貴女。
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~ 媚薬 3 ~
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可愛いなら、もっとキスして。
そんな要求、今まで生きてきてしたことなんて無かった。
でも、こんなに身体が疼いて、心が求めていたら口から零れ落ちた。
だって、彼女が欲しくて欲しくて、欲しくてたまらない。
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焦がれるように欲しがるわたしが放った言葉に、雀ちゃんの表情が一瞬で変化した。
蕩けた目のその奥に確かに燻っている火種が、ゆらぁと膨らんで、大きく燃え始めたのだ。
どちらのものか分からない唾を飲み込んで、雀ちゃんは唇を開いた。
「あんまり煽らないで、ください」
「え?」
煽る? どういう意味?
何処かたどたどしく雀ちゃんが言った言葉に問い返そうとした時には、彼女の唇にわたしは口を塞がれていた。
紡ごうとしていた言葉は「んぅ」とくぐもって消え、するりと入り込んできた雀ちゃんの舌にわたしの舌先を舐られる。
もちろん、抵抗なんてする訳もなくその熱い舌に自分のそれを絡めた。けれど、数回撫で合ったらすぐに雀ちゃんのそれはわたしの舌の感触を楽しむ様子もなくするりと口から引き抜かれた。
「ふ、ぁ」
我ながら、足りなくて、物欲しそうな声。
しかしそれが、事実。
行かないで。もっと舐めて。舐めさせて。
気持ちいいキス、もっとちょうだい。
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彼女の濡れた唇へ視線を注いだまま、腕を使って彼女を引き寄せる。
けれど、雀ちゃんの手によってやんわりと阻まれ、果ては彼女の首に絡めていた腕も外されてしまった。
……さっきまで……結構お互いがっついていたと思うのに、どうしてストップをかけるように腕を解くのか。
雀ちゃんの意図が理解できずに口から洩れる疑問の言葉。
「なんで……」
「愛羽さんが煽るから」
彼女の首から解かれた腕が、枕の横、ベッドに押さえつけられる。
両腕をそれぞれ左右の手に拘束されて、手首をしっかりとベッドへ押し付け動きを封じられた。
「虐めたくなった」
わたしを見下ろしてくる瞳が、すぅ……と細められて息をのんだ。
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ドク、ドク、ドク、と血の巡りが速くなる。鋭さを増した彼女の瞳を見上げたまま、先程の雀ちゃんの言葉の意味を考える。
煽った覚えなんて、ない。
しかも…。
い、苛めたくなった……って……。
しかも……雀ちゃんがベッドで丁寧語を外したってことは……。
過激なセリフに、頬を赤らめるどころか、顔を青ざめさせなければならないかもしれない。
元来、穏やかに丁寧にしゃべる彼女。
そんな彼女でも、言葉を崩すときがある。
わたしの知っている限り、それは、本気になった時。
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さっきまで、彼女が欲しくてたまらなくて蕩けたように熱くなっていた頭が、少し冷静になる。
けれどそんな事はお構いなしに、雀ちゃんは言う。
「舌、だして」
「ぇ」
「した、出して」
もう一度くらい、問いかけ直したい所だけど、そんなことしたら問答無用で口に指を突っ込まれそうだった。
それ程鋭い目で、炎を宿して、わたしを見つめてくる彼女の言葉に従って、僅かに、唇を開く。
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わたしの中の興奮や、欲求が、無くなった訳ではない。すこし、腰が引けている状態だというだけ。
気持ちいい事の為になら……と、薄く開いた唇の間からわたしはゆっくりと舌を差し出す。
そろりと覗かせた舌に対して、予想していた通りに、雀ちゃんは冷ややかに言う。
「もっと、出せるよね」
普段なら「もっと出してください」とか「もっと出してみてください?」とかそういう感じで言う筈の雀ちゃんが、この口調である。
不覚にも、ギャップにどきりとした。
そして、更に。
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氷のように冷ややかなそのセリフと裏腹に、雀ちゃんがわたしの腕を抑えていた右手を外して、さらりと頭を撫でた。
髪を梳くようにして優しく一度。
梳いた髪の乱れを直すよう撫でつけてもう一度。
頭を、撫でられた。
その、言葉と行動のギャップに……不覚にももう一度……ドキリとした。
否、もう一度というにはおかしく、二度目のときめきはもう……ときめきどころではなく、胸を鷲掴みにされたと言っても過言ではない。
さらに速くなっていくわたしの心臓を叱責しようにも、すぐ傍で「愛羽」と呼び捨てで名前を呼ばれてしまっては、もう、従うより他なかった。
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こんなタイミングで呼び捨てとか……卑怯。
心中ではそんなぼやきを残しつつも、行動は素直で舌を長く、伸ばす。
あっかんべをすると自分の顎に着く長舌のわたし。
真っ直ぐ舌を外に出せば、やはり普通のひとよりも長めだと、視界にちらつく自分の赤い舌を見て思う。
その舌を満足そうに眺めて、雀ちゃんは再びわたしの手首を押さえつけるように両腕を配置して、ゆっくりとこちらへ顔を近付けてきた。
何をするかは……大体予想がついている。
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伸ばした舌。その先端に触れたのは彼女の唇。
まるでそれがわたしの唇かのようにキスをして、先端からゆっくりと唇で撫でていく。
長く伸ばしているせいで、固い状態の舌。それよりもずっと柔らかい唇が触れていく感触はもう……婀娜が溢れている。もっと平たく言えば、えっちぃ、としか言いようがない。
「は……」
快感に耐えるとき大抵は口を閉じているけれど、今はそうもいかない。
わたしははしたなくも蕩けた声を漏らして、雀ちゃんの愛撫を受け入れる。
……いや、はしたないと言うならば、それはもう自ら営みをしようと誘った時点ではしたないと言うべきだったかもしれないけど。
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そんな事を滔々と考えている間に、雀ちゃんの唇は幾度もわたしの舌を撫でて、啄み始めた。
まぐまぐと先端を唇が挟み、ちゅるりと微かに吸う。
……あぁ……もっと……。
柔らかな感触。
それが、もどかしい。
もっと、たくさん触れて欲しい。
もっと、深く咥えて欲しい。
両腕を拘束されて思うよう動けず、全く快感がない訳でもなく、弱弱しい愛撫で僅かな快楽を与えられる。
それが余計、わたしを欲しがらせていた。
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ちゅぷ、ちゅぅ。
雀ちゃんがわたしの舌を小さく吸う音が、耳に届く。
鼓膜を犯すその水音を聞いて思うのは、唯一つ。
もっと。
欲しがるわたしの身体は素直で、伸ばした舌をより彼女の口内へ押し込んで舐めてもらおうと、枕から頭を浮かせた。
両腕をベッドへ押さえつけられていても、頭を浮かすくらいは出来るもので、これで彼女の口内へもっと侵入できる。と思ったものの、ぱっと離れてクスリと笑う彼女の気配。
「動かないで」
快感が欲しくて欲しくてたまらないわたしにとって、その言葉は……死刑宣告に聞こえた。
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