隣恋Ⅲ~媚薬~ 2話


※ 隣恋Ⅲ~媚薬~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※

※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


←1話

3話→


=====

 欲しくて、欲しくて、欲しくて。

=====

~ 媚薬 2 ~

=====

「あ、愛羽さん」

 困ったような声でわたしの名を呼ぶ雀ちゃんを、仰向けに寝転がったまま見上げながらお願いを続ける。

「だって、からだが熱いし、ジンジンする」
「じ、じんじん?」

 聞き返されて、そこに主語があいまいだった事実に気が付いて付け足すように教えてあげる。

「下のほう」
「した?」

 ……もう。焦らしてるのかしら。
 物分かりの悪い雀ちゃんの手を取って、「ココ」と言いながら服の上からわたしの下腹部に押し当てる。

=====

「っ、ちょ」
「ぁ」

 雀ちゃんの焦った声と重なるようにして、わたしの口から零れた喘ぎ声。
 だって、雀ちゃんの手がそこに当たっただけで、腰が痺れたんだもの。仕方がない。

 驚いたようにわたしを見下ろす瞳が見開かれたけれど、恥ずかしさよりも、快感欲求が勝った。
 強張った雀ちゃんの手を押し当てる力を増やしながら、言う。

「もっと。欲しい」

=====

 言葉に出してしまうと、何故だか歯止めが利かなくなってゆく。
 その心情の変化が内で起きていることを自分で察しても、恥ずかしさより快感を求めようとする心が止まらない。

 口をパクパクさせて真っ赤な顔で言葉を探している雀ちゃんの手はカチコチに硬直しているけれど、これが初めてのえっちって訳でもないのに、そうなる理由が分からない。

「さわって」

 強請るように告げると、雀ちゃんの喉がまた、ごきゅり、と妙な音を立てて唾を飲み込んだ。

=====

「あの……隣、まーさん居ますけど……いいんですか?」
「いい」
「……声、聞こえちゃいますよ?」

 隣の部屋だから声が確実に通ると暗に言っている彼女。どうしてそんなに断定した物言いをするのかしら、と一瞬疑問が沸いたけれど、今はどうでもいい。

「いいから。抱いて。雀ちゃんが欲しいの」

 わたしの言葉に驚いたのか大きく開かれた瞳。その後、一度、ぎゅっと目を閉じた雀ちゃんの瞼が押し開けられたとき、覗いた瞳にはもう、迷った様子はなかった。

「ベッド、行きましょう?」

 春が近づいてきたとはいえ、まだ朝晩は肌寒い。
 こんなところで裸になっては体に毒だと言い聞かされて、しぶしぶベッドへと移動する。

 わたしとしては、すぐにでも、床でも構わずに彼女と始めてしまいたかったのだけれども。

=====

 ベッドに移動して、仰向けに寝転び、上へと手を伸ばす。そこには、わたしに覆いかぶさるように四つん這いになった雀ちゃん。
 彼女の首へ腕を回して引き寄せると、待ち侘びていたキスが唇へと降る。

「ん」

 いつもなら、体温の低いわたしの方が冷たい唇なのだけれど、今日は何故だか、こちらの唇の方が熱い気がする。
 重なる唇にそんなことを考えながらキスに耽っていると、雀ちゃんの舌がぺろりとわたしの下唇を舐めた。

「……は……」

 淫らな感触に思わず声が漏れるけれど、いつもみたいに恥ずかしさに顔を背けようという気すら起きない。
 それどころか、待っていたと言わんばかりに唇を開き、自らの口内に彼女の舌を引き込むように舌を絡めてしまう。

=====

 普段のわたしなら、こんな事しないのに。
 頭の隅で、そう考えるけれど、止められない。
 彼女が欲しくて、たまらないのだ。

「んぅ……」

 深いキスの合間、くぐもった声が鼻から抜けていく。
 当然それは雀ちゃんにも聞こえているだろうけれど、気にならない。むしろ、自分の色香漂う声にすら興奮を覚えて頭がジンと痺れた。

=====

 部屋にリップ音と粘着質な水音が響き、それに混ざる微かな声。
 甘い甘い空間が出来上がってゆくその感覚に、背筋をゾクゾクしたものが這い上がってきた。
 悪寒にも似たそれは、耐えれば耐えるほどに快感を引き出すスパイス。

「ふ、ぁっ……すず、めちゃ……」

 息継ぎの合間に彼女の名を縋るように口にして、彼女の首に回している腕に更に力をこめた。そうでもして、何かに掴まっていないと、身体を這う感覚に耐えられない。
 何故か、いつもよりも強い感覚に。

=====

「……愛羽さん可愛い……」

 唇同士を銀糸が繋いでいるというのに、彼女は構うことなくわたしを見下ろし、そう告げる。
 快感にクラクラする頭と視界。やっと彼女に合わせられた焦点。
 そこに居た雀ちゃんの瞳は熱を湛えて、ゆらゆらと燃ゆる炎を宿して、わたしを射貫く。

 いつもみたいに、「かわいくない」と彼女の言葉を否定したいのだけれど、出来ない。
 プツリと途切れた銀糸を受け止めた唇で、わたしが口走ったのは、いつもとは真逆といっても過言ではないセリフ。

「……可愛いなら、もっとキスして……」

 強くねだる自分の台詞に、頭が正しく機能していないことを悟るけれど、どうしようもない。

 雀ちゃんが欲しくて、欲しくて、たまらないのだから。

=====


←1話

3話→


※本サイトの掲載内容の全てについて、事前の許諾なく無断で複製、複写、転載、転用、編集、改変、販売、送信、放送、配布、貸与、翻訳、変造などの二次利用を固く禁じます※


コメント

error: Content is protected !!