隣恋Ⅲ~媚薬~ 15話


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 待ち侘びていたこの瞬間。

 身体を。

 脳を。

 快感が支配した。

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 ~ 媚薬 15 ~

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「ひ、ゃっ、あああっ」

 声の加減なんて、出来なかった。
 隣の部屋に響くとか、うるさかっただろうかとか、全く考えられずに口から出た嬌声。
 だって、待ちに待って、その挙句奥までズブリと貫かれたらもう、気持ちいい事しか考えられなくなって当然だと思う。

「あっ、ぁ……は、ぅ」

 奥まで入った指をそのままの状態にしていてくれるのは、雀ちゃんのやさしさ。
 酷い男の人だと、自分の気持ち良さを優先してすぐに動き始めるから、こちらの快感処理が追い付かなくて一度、本気でえっちの最中に泣いてしまったことがある。

 その出来事は……今でも苦い思い出として仕舞ってある。

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 しかしその点でいうと、雀ちゃんは大概、こちらのギリギリ対応可能な所を要求してくる。
 今だってほら、こちらが落ち着くまでは待ってくれているのだ。それはそれは、獣みたいなギラギラした瞳で見下ろしながら、だけど。

「は、……ん、はぁっ、は……っ」

 一瞬にして乱れきっていた呼吸がなんとか落ち着いてきて、指を埋め込まれたそこも気持ち良さのメーターが振りきれる値よりは下がってきた。
 きつく握っていた彼女の服を離して、キスを求めるよう雀ちゃんの頬へ手を添えた。
 ギラついた瞳が僅かだけれど柔らかいものに変化して、顔を近付けてくれる雀ちゃんに口付ける。と、同時にわたしのナカに入っている指がクンと曲げられ、唇を塞がれたまま、つい声をあげてしまった。

「っんん……!」

 雀ちゃんは愉しそうに瞳を弧にしながらわたしから離れる。
 口付けを終え、くぐもった声が解放されたわたしの口からはだらしなく蕩けた喘ぎが漏れる。

「んぁ……や……はん……っぁあ」
「可愛い。しかも、すごい締まる」
「……っるさ、ぃ……言わなくて、んんっ…ひぁ、い……っ」

 自覚のないナカの事情をそうやって実況されると、恥ずかしさから頭がカッと熱くなって、…………それがまた気持ちいい。そんな事を思っているなんてバレたらまた雀ちゃんに揶揄われてしまうから言えないけど。

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 ナカの指はぐっちゅ、と卑猥な音を立てながらギリギリの所まで引き抜かれ、また奥まで埋め込まれていく。
 その緩やかな動きのストロークでさえ、身体はびくびくと動くし、腰をくねらせてしまう。蜜壺の奥から次々と溢れ出す愛液がその快感の度合を表していた。

「ふ……ぁっ」
「気持ちいい?」

 彼女の問いかけにコクコクと頷く。
 気持ちよすぎて、腰の奥に溜まってゆく疼きがわたしから思考力を奪う。

「ちゃんと口で言って? 気持ちいい?」

 とことん、意地悪。
 それまでゆっくりと出し入れされていた指はピタリと動きを止めて、わたしの答えを催促する。

「気持ち……いい」
「もっとして欲しい?」

 こ、の……。
 睨むこの顔は絶対、怖いとか威嚇とか感じられないだろうけれど、彼女を睨む。だって、答えの分かりきった問いかけをしてくる上に、今の流れから頷くだけの返事をするのが愚行だというのは明白。つまり、彼女はわたしの口から言わせたがっているのだ。

 それをわたしが拒む手段は……ない。

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「もうして欲しくないなら、止めるけど?」

 ぬるる、と最奥から引き抜かれていく指の気配に、待って、と咄嗟に縋る。けれど遅く、蜜壺から完全に引き抜かれてしまった。
 異物感の無くなった感覚と共に襲い来るのは、物足りなさ。寂しいとも感じてしまうその感覚に耐えきれずに、わたしは口を開く。

「……もっと、して……欲し、ぃ……」
「いい子」

 満足そうに笑んだ雀ちゃんの指が、壁をかき分けてズブリと突きさされた。その、違和感の大きさに、思わず目を見開く。

「ひ、ぁッ……!?」
 

 ふと、い……!?
 咄嗟に指の本数を増やされたのだと考えに至るけれど、わたしに出来るのは大きすぎる快感に耐えること。
 枕の端を握り締めて、きゅうと瞼をきつく閉じて身体を走る気持ち良さを堪えた。

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「あぁ、やばい。そういうのスゴイ……もっと苛めたくなる」

 ひく、ひくと無意識に跳ねる腰。下唇を噛みながら耐えていると雀ちゃんから降ってくる声。
 こ、これ以上の意地悪があるの……?

 今ですら結構精一杯なのに、更に? と雀ちゃんを見上げる。
 視線がぶつかると、彼女はぷっと噴き出した。

「そんな不安そうな顔しないで。大丈夫。酷い事はしないから」

 そ、そんな表情してたのかしら。となんだか恥ずかしくなってそっぽを向くと、ふわりと耳元へ寄せられた彼女の唇から囁かれる。

「気持ちいい事しかしないから」

 笑みと意地悪を含んだその囁き。吐息とともに耳へ吹き込まれたそれに、ぞわ、と肌が粟立つ。
 その原因は、多分……快感への期待が大きい。

 自分のいやらしさを感じ取ってしまうと余計、恥ずかしさが増す。
 顔が熱くなる感覚に思わず、枕に縋っていた手で顔を覆うと、やはり、雀ちゃんに笑われた。

「今更照れなくても」
「……ぅるさい」
「いいよ。じゃあ、そのまま顔隠してて?」

 本数を増やした指をナカに馴染ませる時間は終わってしまったようで。
 顔を手で覆っているせいで見えなかったけど、たぶん、雀ちゃんはにやと笑った。

「いっぱい気持ち良くしてあげる」

 声が、凶悪すぎるほどに優しかった。

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