隣恋Ⅲ~夕立騒ぎ~ 8話


※ 隣恋Ⅲ~夕立騒ぎ~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 首が弱いのは知っている。

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 ~ 夕立騒ぎ 8 ~

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「愛羽さん、気持ちいい?」
「……ん、ぅん……」

 私の問いかけへの返事とも取れなくもない、喘ぎ声。
 吐息混じりのそれは可愛らしくて、ふっと笑みが零れてしまった。

「ゃっ、あ……」

 濡れた肌に息がかかって、ゾクとしたのだろう。首を竦めた愛羽さん。
 跳ねるようなその仕草は可愛いと同時に、私の中の加虐心の頭を擡げさせる。

 私は余計、感じさせたくなって一時離れていた彼女の首筋へと舌先を近付けた。

 舌の先端を肌へ触れさせるところから、更に接地面積を広げるところまで、じっくりと時間をかける。そうすると徐々に、徐々に、大きくなってくる愛羽さんの甘声。

 ――かわいい。

 目を細めながら、私はその舌で彼女の首筋を辿ってみせた。

「ぁ……っ、あ……っくぁ、は……ぅ……」

 えっちな気分を引き起こしたんだから責任とって。と言ってくるだけに、今日の愛羽さんは一段と可愛い声を聞かせてくれる。
 ぞくぞくするくらいにいい。

 下から上へ。のぼっては、おりて。
 何度も何度も筋をなぞるようにして首を攻めると、私の服を掴んでいた手が縋りつく力さえも失ったのか、ずる、と、滑った。

「ぁっ……ん、だめ、やだぁ……」

 手が滑ったのは不意の事だったのか。慌てたように再度服を握ろうとする愛羽さんへ、私は問う。

「嫌なら、やめます?」

 やだ、と言うのなら。やめますか?

 体を離せば、するりと冷たい空気が二人の間に入り込む。
 今までどれほどに火照った空気を互いに纏っていたのか、いやでも再確認させられる瞬間だった。

 私は熱っぽい呼気を吐き、冷たい空気で冷静さも取り戻しながら彼女を見下ろす。
 こちらの問いに声を小さく詰まらせた愛羽さんの目は、蕩けていて、明らかにもっと私を欲しがっている。

 一度力を失くしていた手なのに、私の服をくぅと引いているくらいだ。
 その仕草は今、止められたくないと云っている。

 それは分かるんだけど、私は、その可愛い口に、言わせたいんだ。

 頬へ手を添えて、柔らかい肌を撫でて、軽く、すこしだけ唇を重ねた。
 だけど啄むことも、もちろん深くすることもしないで離れ、添えていた手も退ける。

「して欲しいなら、どうすればいいか……分かってるでしょう?」

 溶けた瞳は、私を見上げながら簡単に揺れた。

 もう既に愛羽さんは私の言うままにはなっている精神状態だろう。
 けれど、完全なる傀儡ではなくて、恥ずかしがり屋の性質が発動しているせいで口は重い。

 それに、見つめ合っていたせいで照れたのかもしれない。
 彼女が逃げるように視線を下にずらした。

 だから私は、

「愛羽?」

 彼女の顎を指先で持ち上げる。

「こっち、見て?」
「……」

 何も言いはしないけれど、大人しく従う愛羽さんはやっぱりMだよな。

 年上なのに。立派な社会人なのに。
 7つも下の私なんかの言うこと聞いて。

 現状を整理してそう考えるだけで、私の背はゾクとしたものを抱えながら熱くなる。
 そのうえさらに、もっとと欲が増す。

 気持ち良くなってほしい。
 欲しがってほしい。
 求めてほしい。

 ――もっと、貴女に。

 見つめ合ったまま、私は熱っぽい息を吐いた。
 愛羽さんに対する欲を抱けば抱くほど、あっという間に冷静さを失ってしまう。

 駄目だ。
 自制を効かせようとするけれど、なかなかブレーキを踏み込めない。

 アクセルを全開にしたい気持ちと、辛うじてまだ残る良心がケンカをしている中でも、私は彼女の顎を支えていた手を、胸元へと向かわせた。
 顎から下へ、ゆっくり伝わせる。

 ゆっくり。

 ゆっくり。

 胸の谷間を通り、鳩尾、臍、下腹。

 ゆっくりと辿り着いたのは、私の指が彼女の内部へ入った時到達する辺りかもしれない。
 最奥の丁度、真上と言っていい場所へ、とすんと、指の腹を当てる。

 見つめ合っている視線は依然そのままだった。けれど彼女の瞳は指がそこを指し示した瞬間に大きく揺れた。

 彼女が、本当は触って欲しがっているそこ。
 服の上から、すこしだけ押さえて、私は意地悪に言った。

「嫌なら、止めますけど?」

 揺れる瞳が、一段と潤む。

 ――ああ……かわいい。

 それしか考えられなくなりながら、私は、自分を止めるのに必死だった。
 自制を意図的に効かせなければ、きっと愛羽さんの言葉を待てずに襲い掛かっているだろう。

「……す、ずめちゃ……ん」
「うん?」
「あ、の……」

 うん、よし。
 そう心の中で頷くほど、愛羽さんには陥落の気配が見て取れた。

 きっとこのまま放っておいても、もう、ここまでくれば彼女は私の望む言葉を告げてくれるだろう。
 だけど私は、下腹部を押す指を退け、唇を重ねた。

 意地悪の後、こうして優しくされると愛羽さんは途端に可愛くなるから。
 今もかわいいんだけど、もっと、もっと、格段に、可愛くなるから。

「……も、っと……気持ちい……こと、して……ください……」

 あぁ……ほら。

 ――すっげぇ、可愛い。

 ゾクゾクッと駆け抜けたそれは、征服欲か支配欲か。
 凶暴なものに近い何かを抱えながら、私は彼女の服に指をかけ、軽く引く。

「いい子」

 褒めながら額へキスして、囁く。

「脱ごうか」

 疑問符さえ付けずとも、彼女は小さく頷いて、自らの服へ指を掛ける。

 脱がせる工程も好きだけど、こうして、自分で脱いでもらうのも、結構好き。
 私だけが求めてるんじゃなくて、愛羽さんもしたいと思ってて、私を求めてくれてるんだと判るから。

 下着姿になった恋人に、キスをする。
 あまく、甘く、たっぷりとした口付け。

 この後、どうされるのか、嫌でも想像してしまうような時間をかけたキスを終えた私は、愛羽さんの濡れた唇の端を指で拭いながら、

「いやになるくらい気持ちよくしてあげます」

 と、宣言をした。
 間近で見つめる彼女の瞳は溶けきっていて、もう完璧に、こっちのペースでこの後はいけそうだ。
 内心でほくそ笑む私だった。

 が。

 愛羽さんは蕩けた瞳で、すこしだけ弧を描く。
 拭いきれていなかったどちらのものかも分からない唾液をてらりと部屋の照明に反射させながら、口角をあまく持ち上げ、告げる。

「雀ちゃんになら、めちゃくちゃにされてもいいよ?」

 不覚にも、胸が跳ねた。
 こっちのペースでいけると思っていたのに。早々に、そんな不意打ち。

 くやしい。
 大人な彼女を、こういう時だけは支配できる優越感を悉く、粉砕された気分だ。

 あぁぁ……もう。
 あーもう。

 ……っ……………めちゃくちゃ……っかわいい……!

 その可愛さに悩殺されそうな中で、上手く出来るかわからないが、私は決意した。

 ――その殺し文句、言ったことを、後悔させてやる。

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