※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ 宿酔の代償 12 ~
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彼女の胸元の服を握った手に、伝わってくる鼓動が、少し速い。
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――これは、気のせいかしら?
雀ちゃんに重ねてもらった唇を、わざと、ゆっくり離しながらそんなことを考える。
男のひとみたいにカサついていない唇は、離す動作を緩慢なものにすればするほど、名残惜しそうに互いを引っ張り合うみたいにして、やっとその粘膜は離れる。
この離れる感じが好きで、わたしはたまに、意図的にゆっくりと唇を離すのだけど……今回ばかりは、単純にこの感覚が好きだからという理由だけではない。
彼女の服を握ると、その胸に接触する曲げた指先と手のひらの下部分。じんわりと彼女の体温が伝わってくるそこに、わたしは意識を集めた。
手のひらと指の甲で感じる鼓動。その速さを計ることに気が行って、余計、わたしの動きは緩慢になる。
唇を触れ合わせていた距離から数ミリ。数センチ、と顔を離してゆく。
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――たぶん、勘違いじゃない。
瞼を開ける仕草さえも、じれったいくらいに遅くして、雀ちゃんと視線を交わした頃には、彼女の鼓動が速いかも? という疑惑は、確信に変化していた。
帰ってきて、顔をみて、抱き締めて、キスを2回した。
そのくらいで、鼓動を速めてくれる初心な彼女が、可愛いくて仕方ない。愛しくて、仕方ない。
だから。
「雀ちゃん、ドキドキしてる?」
確信した事実なのに、そう問うて。
「……ハイ」
ヤバイ、気付かれた。みたいな表情をする彼女を目に映して。
彼女の羞恥心をすこしだけくすぐって。
わたしは目を細める。
「じゃあ。もっとドキドキしよっか」
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照れくささに視線を泳がせていた彼女の目が、驚きに見開かれる。
その瞬間、非常に無防備になる唇に、今度は自ら口付けにいく。
つま先に重心を傾けて、軽く背伸びする。それと同時に、掴んでいた雀ちゃんの服を放して、スススと上へのぼり、肩に手をかけた。
まー程ではないけれど、わたしと雀ちゃんの身長差はあるから、こっちから仕掛ける時は不便でならない。
まぁ……わたしが女性の平均身長よりも小さいから、そう思うんだけど……。それはいくら言っても、この年になって背も伸びないだろうし、仕方ない。
――いいのよ、世の中には小さい女が背伸びしただけで可愛いと思ってくれる人だっているんだから。
完全な負け惜しみを胸中で吐きながら、背伸びして唇同士をくっつける。
柔らかい彼女の唇は、何度重ねても、重ね飽きない。
――柔らかくて、マシュマロみたいだけど……あんなにカサカサしてなくて、ぷるぷる。
わたしの帰宅から数分で、あまりの展開についていけてないのか、雀ちゃんの動きが若干鈍い。
それをいいことに、わたしは重ねた唇を薄く開いて、彼女の下唇を、はむ、と挟んだ。
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さすがに、柔らかくて美味しそうだからと歯で噛んだりはしない。
「ん……」
意図的ではなく、鼻から声が抜けた。
なんだか、わたしがいつもより焦れている……?
いや、焦れると言うよりは、欲すると言った方が的確か。
彼女の唇の柔らかさを、少しでも多く堪能しようと、挟んだ唇を軽く引っ張るようにして啄む。
それこそ、帰宅して彼女の顔を見て、1分以内で。
明らかに、がっついている。
思春期の男子か。
自身にツッコんでみるものの、その柔らかな感触に憑りつかれてしまって、どうにも、キスを終わらせられそうにも無かった。
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