隣恋Ⅲ~湯にのぼせて~ 77話


※ 隣恋Ⅲ~湯にのぼせて~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 無駄な抵抗。

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 ~ 湯にのぼせて 77 ~

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 私が軽いキスを送った耳は、いつの間にか赤くなっている。
 電気のついた部屋ではその変化はよく解って、その顕著な反応が可愛い。

「な、なんでそんな言い方…っ」
「言い方?」

 何かおかしい言い方したっけ? と一瞬前になにを言ったか思い出す。

「抱いてもいいですかがお気に召しませんでした?」

 する事自体はやっぱ駄目じゃないんだ、愛羽さんもスキモノだなぁ。なんて思う内心を隠しながら、冗談ぽく言ってみせた。

「だって……なんか、生々しいんだもん」

 私の腕に手をひっかけるように触れてくる愛羽さんの手は少し冷たい。今更セックスに対する緊張はないだろうし、多分、外が寒かったのだろう。
 恥ずかしがって前を向いたままの愛羽さんの言い分にちょっと笑う。

「生々しい言い方なんてもっとありますけど?」

 抱いてもいいですかなんて、結構柔らかい誘い文句だと思うんだけどなぁ。

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「エッチ、しませんか? とか」

 にやけながら言った言葉に、愛羽さんの指がピクリと反応した。
 反応に気をよくして、更に言ってしまう。

「セックス、しませんか? とか」
「よ、よくそんな事……! 言ってて恥ずかしくないの…っ?」

 堪りかねたように口を開いた愛羽さんが俯くようにして私から体を遠ざけるもんだから、抱き締めていた腕に力を込めて引き戻す。
 後ろから肩を抱き込むようにして彼女の肩に顎を乗せて、囁く。

「私より恥ずかしがってるひとが居るから、恥ずかしくはないですね」
「……っいじわる!」
「なんとでも」

 愛羽さんを軽く流して、私はまたその耳にキスをする。
 だって、彼女が前を向いたままだから、口には到底キスできない。
 こんなことなら正面から抱き締めればよかった、と後悔しながら耳朶を撫でるように唇を滑らせた。

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「ねぇ……愛羽さん」
「……っ、…なに…?」

 口から零れそうになる甘い声をなんとか吐息に変えた愛羽さんが、強がるように返事をする。
 いつも思うんだけど、愛羽さんはセックスの時、どこかで私に反抗やら対抗をしようとしてくる節がある。本人はかなり必死で頑張って私に抵抗するのに成功してると思っているみたいだけど、こちらから見ると、可愛くて無駄な抵抗。

 感じやすい愛羽さんの身体を知り尽くしている私にとって屈服させるなんて簡単だし、いざとなれば、力で彼女の身体を組み伏せる事だって容易い。

 それを分かっているのか、いないのか。

 愛羽さんはどこかで抵抗する。

 強がるその姿が、私を興奮させると気付かずに。

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「返事聞いてないんですけど」
「へ、……んじ……?」

 彼女が口を開くと同時に、耳を軽く咥える。といっても、軽く唇で挟むくらいのものだけど、愛羽さんを感じさせる事には成功した。
 途切れた言葉に満足しながら唇を離し、それでも3センチ以上は離れないようにして囁く。

「だから、セックスしていいかどうかの、返事」

 あえて直接的な言葉を選んでみれば、愛羽さんは首筋の肌を赤くしながら私の腕に爪を立てた。

「雰囲気で分かるでしょ…っ」
「分かりません。ハッキリ言ってください」

 彼女がそっぽを向くように首を動かしたせいで、髪の帳が開けて露わになった首筋。
 そうやって不用心に自分の弱点を晒すのは、いつも私を誘っているのかと勘違いしそうになるけど、多分、本人は素でやっている。

「なんでっ…」

 分かるでしょ、と言いたかったのかもしれない。
 でも、私が愛羽さんの弱点へフッと息を吹きかけたせいで、言葉が途切れた。

 詰まらせた息を震えながら解放した彼女に、要求する。

「ハッキリ、言ってください」

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 私の言葉に彼女が数秒固まった。
 観念したのか、愛羽さんは私の腕をきゅっと握る。

「……する」

 小さく、恥ずかしそうな声を聞いて、にやける口元。

 あぁ……やっぱり背後から抱き締めたのは正解だったかもしれない。
 だってこんなふうに意地悪に笑っているのを見られなくて済む。

「何をですか?」

 逆に、固まっている愛羽さんの表情を覗けないデメリットもあるけれど。

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「何をするんです? ハッキリ言ってください」

 多分、正面から抱き締めていたら、睨まれていたと思う。
 真っ赤な顔で、潤ませた瞳で、悔しそうに。

 あの顔は、いつ見ても、何度見ても、興奮する。
 私は愛羽さんのあの表情に、耐性がつかない。つかなくてもいいと思うけど。

「……意地悪」
「自覚はしてます」

 小さく笑うと、愛羽さんは首を竦ませる。
 弱点である首に私の息が触れたのだ。

「……どうしても言わなきゃだめ…?」
「返事が欲しいだけですよ」

 返事なんて「する」と言われた時点でもらっているようなものなのに、意地の悪い私は嗤う。
 そんな私の要求なんて、突っ撥ねようと思えば出来る。

 それこそ、抱き締めている腕を振り払って、こっちを向いてキスでもしてくれれば雰囲気は出来上がってそのままなだれ込むのに。
 それをしない愛羽さんも相当のドMだ。

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「……っち……る……」
「聞こえませんが?」

 本当は、聞こえたけど。
 もう一度言わせたくて。

「……~~~っ、えっちする……っ」

 半分、ヤケクソだ。
 まぁまぁ大きな声で言った愛羽さんが可愛くて、私は腕の力を緩めて、彼女の身体を腕の中で反転させた。

 やっと見えたのは、首や耳まで真っ赤な肌で、泣きそうなくらいまで潤んでいる瞳で、私を睨みつけている顔。

「可愛い、愛羽さん」
「るさいばか……!」

 憎まれ口を叩きながらも、首に腕を回して自らキスをしてくる彼女が、やっぱり可愛くて仕方なかった。

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