隣恋Ⅲ~謎の小瓶~ 1話


※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


次話→


===============

 ~ 謎の小瓶 1 ~

===============

 う、ん……?

 重たい瞼をなんとか押し上げると、差し込んでくる朝日が眩しい。

 どうやら、カーテンの隙間からの光が、私の顔を直撃しているらしい。

===============

 なんで……直撃……?
 ベッドに寝てて朝日が直撃するような配置じゃないはず……。と寝ぼけた頭で考えて、はっとする。

 そうか、ここは、愛羽さんの部屋だ。

===============

 そうだ。そういえば昨日、愛羽さんに背中を掴まれて、自分の部屋に帰れずに同じベッドで寝たんだった。
 状況をやっと把握したわたしは、手で光を遮りつつ、薄目しか開けられなかった目をやっと、平常通りに開けた。

 広がる視界に映り込むのは、紛れもなく、愛羽さんの部屋の天井だった。
 いやまぁ、同じマンションに住んでいるのだから、壁紙とかは一緒なんだけど。家具とかベッドの配置が違うので、見えてくる風景は全然違ってみえる。

 ――うーん、にしても眩しい。

 枕から首だけ起こして、ベランダのカーテンの具合を見遣れば、薄く隙間が開いている。
 昨日最後にあそこから出入りしたのは私だから、犯人は私だろう。
 あの時は急いでいたから、カーテンも適当に閉めちゃったんだな。

===============

 今何時か分からないけれど、あのカーテンをこのままにしておけば、いずれ、私の隣で眠っている愛羽さんの顔にも朝日がぶち当たる。
 それは申し訳なさすぎていけない。

 彼女を起こさないようゆっくりと、ベッドを揺らさないように抜け出して、そろりそろりとカーテンへと近付く。
 小さな車輪がカーテンレールを走る音を立てないように、少しずつ少しずつ引っ張ってカーテンを閉め終えて、ほぅと息を吐く。

 昨日あれだけ疲れていた彼女を、アラーム以外の音で起こすのは忍びなかった。

===============

 さて、今は一体何時だ?
 ベッドの傍へと戻って、自分のケータイを取り上げる。

 5:59。もうじき六時か。
 愛羽さんが平日起きる時間は、6時30分。
 たまに眠いときは40分まで寝てることはあるけれど、その時間になると、ノロノロとベッドから抜け出して、ぼんやりしながらでも朝ごはんの準備を始める。

 だから彼女は、あと40分は眠れるのだ。
 最低でも30分。

 朝の30分はとても貴重だ。

 私はもうすっかり目が覚めてしまったから、今からベッドへ戻ってもケータイゲームをするくらいしかない。
 指先だけでも、眠っている愛羽さんの横で動き回るのは、起こしてしまう可能性を高めるだけ。

 だったらいっそ、部屋に戻って何かしよう。
 あ、そういえば、昨日はバイトから帰ってすぐに愛羽さんを迎えに行ったので、大学の鞄がそのままだ。
 今日受ける講義の準備、してない。

===============

 出掛ける寸前に気付くとかじゃなくて良かった。
 胸を撫で下ろしつつ、出来るだけ音を立てないように部屋を抜けだす。

 本当なら、よく眠っている愛羽さんにキスのひとつでもしたかったけれど、それで起こしては申し訳ないので、止めておいた。

 そういうのは、彼女が目覚めてからでも、出来るのだから。

 部屋に戻った私は、普段以上に物音には気を付けて、学校へ行く準備を始めた。
 まず着替えを済ませて、そのあと鞄の準備。

 ああそうだ、昨日充電してないケータイの充電もしておこう。
 いざとなったら持ち歩いているモバイルバッテリーを使えばいいんだけど、出来る時に充電はしておこう。

 自分のベッドの傍によって、充電器を差し込む。と、視界の端にチラと映った小瓶。

「あ」

 それが今日初めて出した声だった。

===============


次話→


※本サイトの掲載内容の全てについて、事前の許諾なく無断で複製、複写、転載、転用、編集、改変、販売、送信、放送、配布、貸与、翻訳、変造などの二次利用を固く禁じます※


コメント

error: Content is protected !!