※ 隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ 過去現在未来。嫉妬 50 ~
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滅多に見られない光景を目に焼き付けたい。
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感覚の鋭い手を攻められる雀ちゃんが漏らす吐息はその量と頻度を、少しずつ少しずつ、増やしている。
小指から始めて、今は人差し指に辿り着いている。
バーテンダーという水仕事ありきの業務に耐えているこの手は、ところどころにささくれやかさつきがみられた。
だけどそれが、バイトの身とはいえお仕事を頑張っている証拠。
今日だって、彼女は頑張っていた。
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蓉子さんから指導を受けている雀ちゃんを初めて目の当たりにした。
普段、店長さんと雀ちゃんが一緒にバーカウンターの内側に立っているときでも、あんなふうにあからさまに指導されている場面はない。
というか、雀ちゃんが注意とか、指導とか、されている場面なんか一度もなかったと思う。
まぁ、店長さんが気を利かせてくれて、恋人の前で指導される姿を晒さないように手を貸してくれていたのかもしれないけど。
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余程蓉子さんがコワイのか、ちょっぴり緊張ぎみでビクビクしながらシェイカーを振っていた彼女の手。
その時の顔を思い出して、わたしはつい、ふっと笑みを零してしまった。
「……?」
喘ぐ声を堪えていたところに、わたしが急に笑い始めるものだから、雀ちゃんはその顔に「何がどうしたんですか?」と書いてありそうな表情で、こちらを見上げてくる。
「ごめんね。今日、この手で頑張ってシェイカー振ってたなぁって思ったら思い出して笑っちゃった」
自己責任とはいえ、笑ったせいでなんだか朗らかなムードになってしまった。まぁ、いいか。今夜は、彼女へ気持ちを伝えるのが一番の目的だし。
「雀ちゃんの頑張ってる姿、好きよ?」
手の甲に唇を触れさせてから、視線を絡めて、目元を柔らかく細める。
キスに照れたのかそれとも言葉に照れたのか。
彼女はわたしから視線を逃がして、何か言いたげにむぐむぐと唇をもごつかせた。
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「なぁに?」
「だって、あんなふうに指導されてるの、恰好悪いじゃないですか」
何を言いたいのかと首を傾げてみせながら、雀ちゃんの両手を、わたしの両手で包み込む。
女同士なのに、わたしよりも大きいその手に、なんだか、キュンとしてしまった。
わたしの胸キュンを他所に、雀ちゃんはバツが悪そうに顔を背ける。
――うーん。よくある若い子の”頑張るのって格好悪い”的な感覚なのかしら? そんなふうに思う必要ないのに。
「恰好悪いだなんて、今日一度も思わなかったけどなぁ、わたしは」
「え?」
意外だ、なんて響きを持たせた雀ちゃんの驚きの声。
指導されてるぅ格好わるーい、とか思っているんだろうと予想してました、とバラしているのと同じなんだけどな、その反応。
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「指導される事は悪い事じゃないもの。もしあの場で、指導をひとつも受け入れないとかなら、物凄く恰好悪いと思うし、そんな雀ちゃんを見たら叱ります」
め。とちょっと眉を寄せて厳しい顔付きをしてみせて、すぐに破顔する。
だって、彼女は今日、とても頑張って指導を受け入れて自分を修正していたんだもの。
「でも雀ちゃんはちゃんと言われた事をこなそうとしてたし、なんにも悪い事してない。むしろ、頑張ってる姿を見せてもらえて、わたしは嬉しかったくらいよ?」
両手で包み込んだ彼女の手にまたキスを贈る。
これは、愛撫ではなくて、労いに近い。もちろん”好き”も篭っているから、全てが労いではないんだけど。
「レッドソンブレロ……だったっけ? ストローが無いっていうのに気が付いていた雀ちゃんは恰好良いって思ったし、今日はずっと、恰好良いよ?」
嘘とか気遣いとか、そんなの全部なくて、本当にそう思っている。
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