※ 隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ 過去現在未来。嫉妬 24 ~
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店内に流れるBGMに紛れて、携帯電話のバイブ音が耳に届いた。
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その場に居た3人がピクリと反応する。
蓉子さんと愛羽さんと私。
カウンター内にいるあとの2人は自分の携帯電話をスタッフルームに置いているから、軽く眉をあげた程度の反応だったが、私達は自分の携帯電話かどうか確かめるように懐を探る。
「あら」
取り出した携帯電話を眺めて、蓉子さんが声をあげた。
どうやら、着信は彼女の携帯電話だったようだ。
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「由香理に呼ばれたから帰らなくちゃ」
蓉子さんが携帯電話を仕舞いながらそう告げて、グラスに残っていた液体をぐいと飲み干す。
由香理さんというのは、蓉子さんのお店のスタッフさんの名前だ。
その人からの連絡ということは、どうやら彼女のお店のお客さんに呼ばれでもしたのだろう。
「由香理は元気にしてますか?」
「ええ。元気よ。また遊びにいらっしゃい」
「しばらく囲炉裏に会ってませんし、今度寄らせてもらいます」
店長と蓉子さんの会話を聞きつつ、愛羽さんと目配せをして私達も帰る準備をする。
グラスに残っていたものを飲み干し、席を立った。
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レジ前へ移動しながら財布を鞄から取り出そうとする愛羽さんと私を手で制したのは蓉子さん。
「私にツケといて」
「かしこまりました」
大人だ……。こうさらっと出来るのが格好良い。
愛羽さんが遠慮なく「ご馳走様です」と笑顔を向けているので、私も便乗してお礼を言っておく。
さらっと奢ってくれる蓉子さんも大人だし、それに素直に甘えられる愛羽さんも大人だなぁ。
「ありがとうございました」
「ありがとうございました」
店長と健介さんの声に見送られてシャムの扉を出た。
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「悪いわね。もう少しゆっくり飲みたかったでしょう?」
「んーん、大丈夫。雀ちゃんも早上がりだったし、ね?」
視線を向けられて、頷く。
まぁたまには自分の店で飲むのも悪くないけれど、皆がお酒を前にしている中で、一人ジュースを飲むのは少々居心地が悪い。
由香理さんからの連絡に助けられたなとも思う。
「雀も、また私の店にいらっしゃい。由香理のピザが商品化したのよ」
「え、そうなんですか。ぜひ、近いうちに店長と遊びに行かせてもらいます」
「待っているわ」
暗い夜道を歩きながら喋って、大通りまで来る。
たぶん、ここで蓉子さんとは別れる。彼女の店と、私達の帰り道は違う方向だ。
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立ち止まった蓉子さんは、一瞬愛羽さんに視線をやったあと、こちらに顔を向けてくる。
「ま。仲良くしなさいね」
なんだか含んだような言い方に首を傾げるも私は頷いて、愛羽さんはすかさず言い返している。
「ずっと仲良しだから大丈夫よ」
なんとなく、焦ったような声音に聞こえたのは、大通りの喧騒のせいだろうか。
小さく笑みを口元に浮かべた蓉子さんは、「じゃあね」と軽く手をあげ、踵を返した。
「ありがとうございました!」
その背中にお辞儀すると、見えていたみたいに肩越しにヒラリと手を振ってくれる蓉子さんの後ろ姿は、相変わらず、美しかった。
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