※ 隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ 過去現在未来。嫉妬 22 ~
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大人の会話が理解できなくて、困り果てた顔で愛羽さんに助けを求めると、優しく苦笑を返された。
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「雀ちゃんはいい子ねって話」
……いい子ならなんであんな呆れたような顔されるんだろうか。
更に、謎が深まった。
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私が首を傾げていると、ユニフォームに着替えを済ませた健介さんが姿を現した。と、次の瞬間、顔が歪む。その視線の先には、蓉子さん。
「お久しぶりね、健介」
「あ゛…ぅ、お、お久しぶりです、蓉子さん……」
硬い表情で挨拶をする健介さんは、蓉子さんが苦手らしい。
なんでも、同じ男なのにどうしてあんなにエロいのか。ちょっとでも気を抜くと見惚れてしまいそうな自分が居て嫌なのだそうだ。
一度、店長が冗談で健介さんに「蓉子さんに抱かれてみれば?」と言ったことがあるらしい。
そのときの彼の反応は、真っ赤になって「だから嫌なんスよ! 抱く側じゃなくて俺が抱かれる側でしょ!? 俺は抱きたいのに!」と、叫んだらしい。
蓉子さんが抱かれてくれるならば全然アリなんだが、絶対に抱かれる側になるだろうから嫌なんだと。
まぁ、正確に言えば、「蓉子さんが苦手」ではなくて、「蓉子さんを好きになってしまいそうで一緒に居るのが苦手」なのだそうだ。
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シャムに入ってきたときは後ろ姿しか見えなくて、蓉子さんが来ていると知らなかった健介さんは、カチコチのまま手指消毒を済ませて、私に向き直った。
「すまん」
1時間シフトを交代したことの謝罪だろう。
「構いませんよ」
軽く首を振って、店長と健介さんに「お疲れ様です。お先です」と告げてスタッフルームへ引っ込む。
健介さんはすごく申し訳なさそうにしてくれてるけれど、こちらとしては、22時までの仕事が1時間早く終わってラッキーだな、くらいにしか思っていないので、気にしないでほしい。
そんな事を考えながら、私はロッカーを開けた。
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スタッフルームからバーに戻ると、早速、健介さんがシェイクの定期検査を受けていた。
あれは他の人が指導されているのを見ても、なんだか背筋が冷える。
私に気が付いた愛羽さんが自分の隣の席をぽんぽんと叩く。
「お疲れさま」
「愛羽さんもお仕事お疲れ様です」
ビシバシ指導を受けている彼を他所に、こちらはほんわかムードだ。
席に座って、労いの言葉に頬を緩めていると、健介さんの相手をしていたはずの蓉子さんが「そこイチャつかない」とツッコんでくる。
「そうだぞ、安藤」
俺が指導されている時に、と健介さんが言ってくる。
なんだよ、シフト代わってあげたのに。
唇を尖らせていると、小さく笑った愛羽さんがカウンターに軽く頬杖をついて、健介さんを上目遣いに見上げた。
「だめ?」
む。
愛羽さん、健介さんにそんな色仕掛け使わなくていいのに。
蓉子さん程ではないけれど、そこはかとなく漂う大人の色気に、健介さんはシェイクの手も止めて「全然大丈夫っす!」と鼻の穴を膨らませている。
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「こーら。邪魔しないの」
「はぁい」
怒られちゃった、というふうに舌をぺろと覗かせておどける愛羽さんが可愛い。
彼女を叱った蓉子さんは、軽く手を振りデレデレしている健介さんにシェイクを再開させた。
「すーちゃんも何か飲む?」
グラスを磨いていた店長がこちらに視線を投げてくる。
うーん、まだお酒は飲めないから何かノンアルコールの……。
「あ、レッド・ソンブレロがいいです」
こう、スカッとしたものが仕事終わりには飲みたくなる。
「じゃあ健介に作ってもらいましょうか」
指導を終えた蓉子さんが、にっこり笑った。
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