隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ 1話


※ 隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※

※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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  ~ 過去現在未来。嫉妬 1 ~

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 ―― 雀の場合 ――

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 大学の食堂。
 昼ご飯を食べて、次の1コマ空きなのでこのままここで過ごすか、図書館に行って勉強をするか迷う。

 丁度日当たりの良い席で、背中に日差しがあたって気持ちいい。
 プラス、唐揚げ定食でお腹もいっぱいになって眠い。

 ――そういえば、今日のバイトのシフトってどうなってたっけ……?

 ぼやぁっとした頭で、学校が終わった後の予定に首を傾げて、スマホを取り出す。
 私は基本的にスケジュール帳を持たない。忘れてはいけない予定は、スマホのスケジュール管理アプリに入れておくタイプ。
 愛羽さんはちゃんとしたスケジュール帳をもっていて、いろんなことを書き込んでいたと思う。

 わざわざ鞄から取り出して、ペンを出して、書き込む。
 それがどうも面倒で、数年前デザインが気に入って買ったスケジュール帳を真っ白なまま年を越してしまった経験から、もう自分は購入しないでおこうと心に決めたのだ。

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 ――そもそも、アプリならタダだし、片手操作だもんなぁ。

 取り出したスマホ。半月分のシフトがバイト先のスタッフルームに貼り出されているのを撮った写真が確か……。
頬杖をついたまま片手で操作して、写真フォルダを開く。

 フォルダに最新の写真から順番に表示されてゆく画面を見た瞬間、ピタリと手が止まる。
 眠気に包まれていた頭が若干、驚きと共に覚醒した。

 視線を走らせて、まわりに人がいないのを確認してから、一番新しい写真をタップする。
 拡大表示されたその写真は、愛羽さん。私の恋人の寝顔の写真だ。

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 頬杖をついていた手を顎の下へずらし、手のひらに顎を預けた状態で口元をうまく隠す。
 だって、写真が可愛いすぎて、口元が緩むのを自制できない。

 これは数日前の朝、私が愛羽さんよりも早く目を覚まして、隣で眠る彼女を激写したものだ。

 丁度横向きに寝ていて布団は二の腕あたりまでかかっている。あと数センチ布団が下にずれていれば桜色に色づく胸の尖りが見えるだろうに、残念ながら図ったように布団で覆われている。がしかし、横向きになっているから胸の谷間はいつもよりくっきりと出来上がっていてドキドキする。

 寝乱れた髪が広がっているけれど絶妙に裸の首筋や胸元に色気を振り撒くみたいに髪が流れていて、綺麗だ。

 それだけでも写真に収める価値はあると思うのに、更にだ。

 カーテンの隙間から丁度朝日が差し込んでいて、まるで映画のワンシーンみたいに彼女にキラキラと降り注いで、これはもう後でバレて怒られても構わないから、撮影すべきだとスマホを構えたのだ。

 前日、私が頑張り過ぎたせいで眠りが深かったのか、撮影音が鳴っても愛羽さんは目を覚まさずにいてくれて、無事、保存できたのである。

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 撮影してから、多分、一日5回は眺めているこの写真。
 溜め息が出るくらい綺麗だし、可愛いし、色っぽい。これぞ、大人の女性、と言った感じが出ていて、これはもうプリントアウトして飾っておきたいくらいだと思っている。

『恨んでもいいから、その気持ちも次のえっちでわたしにぶつけて』

 脳内で再生される恋人の台詞。

 耳元で囁かれた息遣いまでもが再生されて、思わず私は生唾を飲み込んだ。

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 一瞬で体がカッと熱くなって、スマホの画面をホームに戻す。

「……」

 あの、写真の朝の前夜。
 ハロウィンの時仕事で放置してしまったお詫びだと愛羽さんが自らお誘いをしてくれて、私は散々彼女をいじめた。
 それでも最後に、あんな台詞を言ってくれる彼女には、自惚れでなく、それなりに好かれているんだろうと思える。

 私はまだ未成年だし、大学生だし、社会人である愛羽さんをしっかりと支えられる自信はない。
 自分に自信がないから、ああいう事を言ってもらえると、人一倍、喜ぶ。

 あれを言われた直後、すぐに襲ってしまいたくなったくらいで、それを我慢するのに苦労した。

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 数日経っても、あの台詞はこうして蘇ってくるし、いつまでも私の心臓を鷲掴みにする。

 ここだけの話だが、この写真を撮影した日の夜に、あわよくばセックスできないかと思っていた。
 が、愛羽さんはどうやら筋肉痛になってしまったらしくて、できなかった。

 まぁ……彼女が筋肉痛になるくらい、前日の夜、感じていてくれたってことだ、と自分を納得させたのも、記憶に新しい。

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 食堂のスピーカーから、昼休憩の終わりと授業始まりのチャイムが鳴り響く。
 辺りを見回せば、いつのまにか随分と人が減っていた。
 それにも気が付かないくらい、愛羽さんの写真に熱中していたみたいだった。

 そういえば、シフト。
 ふと思い出してスマホのホームボタンを押す。
 当然、出てきたのは愛羽さんの写真で、またドキリと胸が鳴る。
 付き合って結構経つけれど、写真でこんなにどきどき出来るのはありがたい事だと思う反面、よく本人を目の前にして、あんなことやこんなことが出来るな自分、と呆れてしまう。

 画面に目を戻して、愛羽さんの写真からバイトのシフトの写真に切り替え、今日の日付をたどる。
 今日は6時から10時だ。

 シャムのお昼のカフェ営業は6時で一旦閉めて、8時からバーに切り替えて開店するのだが、そのインターバルで買い出しや仕込み、掃除、テーブルの配置変えなんかもあるので、意外と、2時間まったり休憩、ってな訳にもいかないのだ。

 この食堂でまったりしていても何も生まないし、図書館行って、課題やろう。
 スマホを仕舞う前にもう一度愛羽さんの写真をチラっと見てから、ポケットに入れる。

 食器をのせたトレーを持ち上げた私の口元は、かすかに、緩んでいた。

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