隣恋Ⅲ~媚薬~ 7話


※ 隣恋Ⅲ~媚薬~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 吊り上がる口角。
 眇められた眼。

 その表情の変化一部始終を見てしまって…………。

 この先の行為に期待する自分が居た。

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~ 媚薬 7 ~

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「……っおねがい、止め、ないで……」

 縋るよう告げたわたしを見下ろして、雀ちゃんは自分の下唇を舐めた。ゆっくりと動くその舌は彼女自身の唾液を拭う為なのかもしれない。でも、仕草が艶めかしく映り、わたしはシーツを握る手を解いて、彼女へ伸ばす。

「もっと欲しくなっちゃった?」

 と、彼女は全てを理解しているような表情で愉しそうに言う。
 そんな雀ちゃんの頬に手をあて、耳裏へと滑らせ彼女の顔を引き寄せる。

 くすりと笑う彼女は大人しくわたしの誘導に従ってくれるものの、唇同士が触れ合う前に鼻同士をくっつけた。

「ねぇ、何して欲しいか言って?」
「……っ」

 至近距離でおあずけを喰らわされる。
 わたしは直ぐにでも貴女に食べられたいのに。

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 普段、こんな事しないのに寸前で意地悪を言う雀ちゃんは全て解っているんだろう。
 すぐに、わたしが陥落することを。

 それがなんだか悔しくて、ちょっとだけ、反抗する。

「く、くすり盛ったくせに」

 ふ、と笑んだ吐息をわたしの頬へ流す彼女は、わたしの予想を軽々と超えた。

「媚薬は、ウソだけど?」

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 後々聞けば、まーは本当に媚薬をわたしのグラスに盛ったそうなのだけど、今、この時のわたしには雀ちゃんの言葉を信じるしか選択肢がない。
 そもそも、媚薬なんて物はどこでどうやって手に入れるのか疑問な所もあるから最初からそこは「本当に媚薬なんて盛られたのかしら……?」と思っていたくらいだし。

 余裕、と顔に書いてあるくらいの表情でからかうような笑いを見せる雀ちゃんに、開いた口が塞がらない。

「う……そ……?」
「そう。愛羽に媚薬なんか飲ませてない。ただお酒飲んだその勢いじゃないかな」

 鼻同士をくっつけていた距離を少しだけ離して、雀ちゃんは冷静に言う。
 そんな余裕綽々の様子を見せ付けられれば、酒に酔い、媚薬を盛られた状態のわたしの脳は雀ちゃんの真っ赤な嘘を信じ込んでしまう訳で。

 さっきまで盛っていた自分が恥ずかしくなって、ボンと顔が発火した。

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「ぇ、あ…、ちょ、っと待って」

 本当に媚薬を盛られたのか? と疑っていても、頭の隅では「媚薬を盛られたのならこんな濡れ易くても仕方ない」とその事実に頼っていた部分もあった訳で、今となってはそれが恥ずかしくてしょうがない。

「なにを待つの? あんなに欲しがってたくせに」

 にぃと唇を弧にする雀ちゃんから降ってくる揶揄する言葉。
 それに余計顔は熱くなるし、恥ずかしいし、また彼女の顔を見れなくなる。

 そんなわたしに対して、雀ちゃんの容赦はない。

「ここ、どうなってるの?」

 低く低く、囁いた雀ちゃん。
 いつの間に脚の間に膝を割り込ませていたのか。膝頭を強めにわたしの股間に押し当てる。

 もう何度も彼女と身体を重ねた経験からだろう、どのあたりをどうすればわたしが感じるのか判っている雀ちゃんは、的確に蕾に圧力をかけてくる。

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「んっ、んんッ」

 下唇を噛みしめて唐突に与えられた快感を耐える。思わず、彼女の顔に添えていた手で雀ちゃんに縋ってしまった。
 強引に引き寄せる形になっても、雀ちゃんは薄く笑んだままでわたしを愉しそうに観察でもしているかのよう。

「感じてるね、すごく」

 言わなくていいのに、そういう事を言う。
 蕾を潰されれば感じて当然だし、おかしい事は無い。でも、言葉で表現されてしまうと恥ずかしい。

 続け様にぐりぐりと膝を押し付けられて、唇を噛む力が増す。それでも耐えられなくて口からは甘える子犬みたいな声が洩れた。

「服の上からでも、気持ちいいんだよね」

 確認でなく、同意を求めるようなその台詞に、頭も身体も、熱くなる。
 その通りだけど、それを認めてしまえばわたしは薬も盛られていないのに、こんなえっちな事を悦んでいるスキモノだと自分で言うようなものだと思う。
 ……それは、……恥ずかしい。

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「そんなに噛んだら傷になるよ」

 さっきまでわたしを煽るような台詞ばかり吐いていた雀ちゃんのくせに、突然そんな気遣う言葉を降らせてきて、指先でわたしの唇を撫でる。

「ほら、噛まないで」

 女というのはどうしてこうもカンタンな生き物か。
 意地悪をしてくる相手なのに、こんなふうに優しくされたら、胸がきゅっと締め付けられるような一種の快感を感じてしまう。

 おとなしく彼女に誘われるまま、唇を解放する。

「……痕ついてる」

 多分、上の歯の噛み痕だろう。
 彼女がわたしの唇を見下ろして言うけど、そこまで痛みもないし、唇についた痕なんてすぐに消えるだろう。そう思っていたら、雀ちゃんの顔が寄せられた。
 その拍子に膝がくいと蕾へ圧を掛け、「んぁっ」と短く喘いでしまう。

 それは彼女も予期していなかった愛撫になってしまったのか、雀ちゃんは「ごめん」と告げ様にわたしの下唇をぱくりと咥えた。

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 キスと表現するには少し違うようなその感覚に一瞬疑問を抱いたけれど、雀ちゃんがわたしの唇の痕を舌でなぞり始めて、彼女の意図が分かった気がした。
 下唇をゆっくりと撫でていくその舌は柔らかく、わたしの唇を労わっている。
 唇の真ん中あたりについているのだろう。重点的にそこを撫でていく雀ちゃんの舌に、優しさを感じる。

 大人しく彼女の行為を受け入れながら、その項へと手を回す。
 意地悪をしてきていたかと思えば、ふいにこうして優しくなる雀ちゃん。
 その態度の変貌ぶりはすこし戸惑うし驚くけど、その裏にあるのは彼女の性格だ。

 優しくて、完全にドSになりきれていない。
 たぶん、わたしを虐めて鳴かせたい気持ちはあるのだ。

 けど、泣かせたい訳でもないし、傷つけたい訳でもないんだろう。

 その不器用というか、気持ちに純粋な行動が、わたしの胸をくすぐる。
 優しい雀ちゃんのことだ、「媚薬はウソ」という言葉は事実だったのかもしれない。
 親しいとはいえ、友人であり会社の上司であるまーの前で、お酒の勢いに任せて盛ってしまった事を気遣って、わたしに「媚薬を盛られたから、欲情しやすくて当然」と思わせてくれようとしたのかもしれない。

 ああなんて優しくていい恋人を持ったんだと胸に染み入ってしまう。

 何度も言うが、後々聞けば、媚薬は本当に盛られていたらしい。
 だが、この時のわたしは非常に良い様に解釈をして、勝手に彼女の好感度をあげていたのだった。

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「痛い?」

 キス……というか、痕を舐める合間を縫って雀ちゃんが尋ねてくる。
 またそういう優しい行為にキュンとしてしまう胸の切ないような苦しいような嬉しいような感覚を抱きながら、わたしは首を軽く横に振った。

 そして、問い掛ける為離れてしまった彼女に強請るよう自分の唇を押し付けるのだ。

 もっと、舐めて。

 と。

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