隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ 109話


※ 隣恋Ⅲ~過去 現在 未来。嫉妬~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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  ~ 過去現在未来。嫉妬 109 ~

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 雀ちゃんの額から唇を離したわたしの目の前で、彼女はなんとも言えない顔をした。

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 その表情の意味が理解できなくて、彼女の両頬から手を外し、首を傾げてみせる。
 雀ちゃんの悔しそうでもありバツが悪そうでもあり、また嬉しそうでもあるその複雑な表情は、何を感じ、何を思っているのか見当がつかない。

「…………かなわないなぁ」

 ポツン、と漏らした言葉は、やっぱりその表情に似つかわしい声色。
 敵わない? それとも、叶わない?
 どちらを用いるのかもわたしには判断が付けられなくて、相変わらずに雀ちゃんを見下ろした。

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 雀ちゃんは後ろ頭をカシカシとかくと手を下ろす。その手でテーブルにあったミネラルウォーターを掴んで、ストローから数口、飲み干していく。

 たぶん、これを飲んだあと、事情というか心情を説明してくれるんだろうなぁと予想しながら、わたしは彼女を見守った。

「愛羽さんには、かなわないなぁと思って」

 わたしが予想していた通りの行動で、雀ちゃんはテーブルにペットボトルを戻してからこちらに視線を向けた。
 苦笑を浮かべている雀ちゃんのかなわないは、どうやら”敵わない”を用いるべきのようだった。

 しかしどうして、わたしに敵わないと思ったのだろう。

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「嫌われたらどうしようとか思って消極的な行動ばかりしていた私と違って、愛羽さんは……なんていうか物事の解決の為に最善で最短ルートをすぐに見つけて、怖がりもせずにその道を行くから」

 だから、敵わないなぁと思うんです。
 と言い切った雀ちゃんの瞳は、羨ましそうに細められ、わたしを見つめる。

 だけど。

 その羨望の眼差しを向けられていい程、わたしは勇敢でも果敢でもない。
 雀ちゃんは「怖がりもせずに」と言うけれど、実際のところわたしは怖い。例えば将来の約束を即座にしてあげられなくて雀ちゃんに嫌われたらどうしようと怖がったばかり。

 ただ、怖いけれどそうしなければならないという気持ちが上回って行動できているだけで、怖がっていない訳じゃない。

 どうやってそのことを説明しようかと考えを巡らせていると、雀ちゃんはわたしの思考の真ん中にこんな台詞を置いてゆく。

「私もグズグズしてられないなって思いました」

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「いやグズグズっていうよりはマゴマゴかな?」

 軽く首を捻りながら自分の言葉を訂正した雀ちゃんは、相変わらずわたしに羨望の眼差しを向ける。
 その上、どこかさっぱりした顔つきに変わっていて、わたしは口を挟めずに彼女の顔を見つめた。

「恋人の愛羽さんが手も届かないくらいスゴイ存在のひとになっちゃう前に、わたしもちゃんと、成長しなきゃ」

 にっこり笑う雀ちゃんに目を丸くする。
 だって、なんていうか、はやい。立ち直りが。

 若いからかしら……?

 わたしだって怖がっていることはあるのよと説明する暇もなく、そんなふうに前向きになられたら、ネガティブな話題が出せずに、口を噤んだ。

「だから、ちゃんと聞きます。我慢せずに、いろいろ」

 そう宣言した雀ちゃんはサッパリした表情で、わたしの頬にキスをすると立ち上がって、ドライヤーをとりに姿を消した。

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