隣恋Ⅲ~湯冷めた頃に~ 2話


※ 隣恋Ⅲ~湯冷めた頃に~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 ~ 湯冷めた頃に 2 ~

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 他のアルコール類と違って、ビールというのは結構その匂いが鼻につく。
 そう思うのは、わたしがビールを飲めない人種だからかもしれない。

 こんなにも、この匂いで頭がいっぱいになってしまうのは、そういう理由だからであって、わたしが、あの温泉の夜の事を淫らにも思い出しているからではない。
 頭の中の恥じらいが、そう固く否定しても、心はどうも、そうはいかないみたいだった。

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 後頭部に添えられた手が、ゆっくりと髪を梳いていく。
 それだけでも気持ちいいのに、雀ちゃんはどれだけ器用なのか、舌先でわたしの舌の先端をちろちろと小刻みに舐めてくすぐってくる。

 それと同時並行して、後頭部に回した手がスルリとうなじを撫でて、わたしの肌がざわつきを覚える。

 ――っだから……だめなんだってば……っ。

 頭ではそう否定して、懸命に彼女の胸に手をあて押し返すよう突っ張るけれど、小さな快感が燻る身体は、どうも上手く雀ちゃんを完全拒否できていない。

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 うなじを撫でる指が、角度を変えて爪をあててくる。皮膚に触れる固い感触が3つ。それがつぅ……と斜めに、そこを通る。
 髪の生え際、ざらつくそこを、ゆっくりと通過した。絶対に、わざと、ゆっくりなんだ。

 わたしを、煽るために。

 雀ちゃんのその魂胆が分かっていながら、反応してしまうこの体が、心が、にくい。
 今すぐ、彼女の熱い舌に自分のそれを絡めてしまいたくなる。そんな自分のいやらしい気持ちと、それを抑えようとする理性も、にくい。

 ジレンマさえなければ。
 快感を素直に求められれば。

 こんなに下腹部を熱くしながらも、彼女の手に落ちまいとしなくても済むのに。

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 ――ああぁっもう!

 叫びたい気分だった。

 いっそ、雀ちゃんの酔いがわたしに伝染すればいいのに。そうしたら多分、汗をかいた体だのお風呂だの気にせず、彼女の腕の中でとろける事が出来るのに。

 歯噛みしたい気持ちが表れてしまったのか、いつの間にか、上下の歯が彼女の舌を軽く噛んでいた。わたしがそれに気が付いて、慌てて雀ちゃんの舌を開放すると、するりと口内から逃げていった。

 ごめん、痛かった? わたしがそう口を開く一呼吸前に、彼女が、「くっ」と堪え切れない笑いを漏らした。

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「え?」

 なに? 何か変な事した? 確かにキスの最中に相手の舌を噛むとかおかしいかもしれないけど。

「いや…だって」

 含みをもった声音で雀ちゃんは言う。

「そんな欲しそうなカオで抵抗するんだもん、愛羽さん。可愛いくて」
「ほっ……そ、そんな顔してないから…!」
「してるよ」

 急速に、顔に熱が集まっていく。隠したくても、雀ちゃんの手が後頭部に添えられていて動きがとれない。キスを終えた角度のまま彼女を見上げて、瞳を揺らすしか出来ない。

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 雀ちゃんはそんなわたしを見返して、小さく微笑む。
 後頭部の手がするりと頬まで回ってきて、親指が肌を撫でる。優しいという言葉が一番しっくりくる表情で、そんな仕草をされると、貴女に惚れている身としてはもう、たまらないのだけど。

 わたしの心中なんて知りもしないのか、知っていてわざとやっているのか。
 雀ちゃんの顔が近付いてきて、触れるだけのキスを幾度か与えられる。

「可愛い」
「かわいくない」
「言うと思った。可愛いよ」
「るさい」
「言うと思った」

 お決まりの問答をやり取りしながら、わたしは困り果てた。
 さっきから薄々気が付いていたけど……雀ちゃんの語調が崩れている。敬語じゃなくなっている。

 それもまた、わたしの心を擽る要因だ。
 だって、普段のえっちの時でも相当入れ込まないと崩れない敬語が、今日はアルコールのせいで端から崩れているのだ。
 警戒心ゼロで、尻尾を大きく振りながら寄ってくる犬みたいなものだ。わたしを可愛いと言うけれど、雀ちゃんの方がずっと可愛いと思う。

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 そんな事を考えている最中も、わたしの顔中にキスの雨を降らせている雀ちゃんは、どうしようもなく上機嫌らしい。
 加えて、どうあっても、わたしを解放してくれそうにない。

「ね、ぇ」

 小さなキスに遮られながらも、なんとか彼女を呼ぶ。

「お願いがあるの」
「なに? もっとココにキスが欲しい?」

 ぴと、と人差し指が唇に当てられる。
 それは貴女がしたいことでしょ、と心の中でツッコミを入れながらも、目で違うと訴えた。

「じゃあ、なに?」

 楽しそうに笑って、また額にちゅうと音を立てたキスをひとつ贈ってくれる。お化粧落としてない顔なのに、よくもまぁそんなにちゅっちゅできるものだと感心する。

 それはさておき、だ。
 この今すぐやりたい星人を撃退することは、多分、不可能だ。
 でもわたしは、女の恥じらいでどうしても、お風呂へ入りたい。

 となると、残された道は、ひとつ。

 わたしは意を決して、息を吸い込んだ。
 コクリ、と生唾を飲んで。

「……雀ちゃんに、体、洗ってほしい」

 今まで言った事の無いセリフを、彼女に告げた。

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