※ 隣恋Ⅲ~湯にのぼせて~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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体が熱くなる。
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~ 湯にのぼせて 28 ~
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困ったような声で、一度、名前を呼ばれた。
声のした方に目を向ければ、わたしの恋人が居る。その表情は声と同じく困惑したそれだった。
「完っ全に酔ってるじゃないですかぁ。飲むペース早過ぎますよ」
雀ちゃんはがしがしと頭をかいて、わたしの手から缶を抜き取った。軽くそれを振って中身がないことを確認して、彼女はテーブルに置く。
「スポドリ……よりお茶がいいか」
呟いて、自分の持っていた飲みかけのビールの缶をテーブルに置いて、冷蔵庫の側へ寄っていく彼女の後ろ姿をぼんやりと眺める。
雀ちゃんが「完全に酔っている」と言う通りに、わたしは随分とアルコールに侵されている。
だって、あまり、思考が上手く回らないもの。
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ぽやーっとした思考で、「あぁわたしに飲ませてくれる為に冷蔵庫を覗き込んでるんだな」と考える一方で、視界に入ったのはビール缶。
テーブルに置かれたそれを持ち上げてみると、中身はまだある。
――中身があるなら、飲んでみようかな。
何故かそんな考えが浮かんで、わたしはその缶を傾けた。
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「はい、これ飲んでくだ…ちょちょストップ! ストップストップ」
お茶のペットボトルの蓋を捻り開けながら振り返った雀ちゃんは、ぎょっとした顔で、わたしが喉を鳴らして飲む缶を掴んだ。
そのままわたしの口からゆっくりとそれを離して、「うわ、大分飲みましたね」なんて言いながら、わたしがすぐ手にとれない位置にコトリと置いた。
「にがい」
舌に残る苦みを訴える。
やっぱりビールは、苦い。
「そりゃあビールですから。ほら愛羽さんはこっち飲んで」
手に与えられたのは冷え切ったお茶。
たぶんコレは、苦くない。
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「まったくもう、目を離した隙に」
ぼやく雀ちゃんを尻目に、お茶を三口ほど飲む。うん、美味しい。
テーブルに置いてあった蓋を閉めようと手にとると、ぽろりと手から零れ落ちた。
「あれ」
拾わなきゃ。と手を伸ばしたわたしよりも先に、彼女の手がそれを拾って、ペットボトルを支えながら蓋を閉めてくれた。
「ありがと」
彼女の優しさに笑顔をむけると、つられたように雀ちゃんも笑った。
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雀ちゃんがゆっくりと笑みを収めたと思ったら、優しい顔でこちらを見つめてきた。
その表情があまりにも柔らかくて、愛しさと同時に触れたいという欲求が溢れてくる。
ペットボトルを置いて、自身に沸き上がったその欲求に従い、彼女へと手を伸ばす。腕を伸ばしきるまでもなく柔らかな頬へ触れ、撫でる。
「指、冷たい。ていうか、濡れてますね」
小さく笑いながら雀ちゃんが言う。
ペットボトルが結露して、わたしの指先には水滴が僅かについていたみたいだった。
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指の背で彼女の頬に触れると、確かにそこが湿っている。拭うように指を擦りつけて、わたしは何故か、身を乗り出した。
「ぇ」
と、小さく雀ちゃんが声を上げたけれど、構わず、床に手をついて乗り出した体を支えながら、雀ちゃんの濡れた頬にキスをする。
柔らかな頬の感触につられて、ぺろりと舐めあげると、雀ちゃんの肩がピクリと跳ねた。
「ほっぺた、やわらかい」
囁くように言うと、見る間に彼女の肌がぷつぷつぷつと粟立った。
浴衣から覗く首や頬の鳥肌を間近で見つめていると、なんだか面白い。
この鳥肌は……どんな感触がするのだろう。
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「ねぇ」
「はっ、はいっ」
至近距離でそれを見つめたまま問う。
「もっと、舐めてい?」
「は? え、ちょ……舐め、てって愛羽さん?」
焦ったような声が彼女の口から零れるけれど、この鳥肌を舐めてみたいんだもん。
爪先でぷつぷつした肌をひっかくように撫でてみると、余計、粟立つそれ。
「いたくしないから」
彼女の返事が是でも非でも関係なく、返事をもらう前に、わたしは唇を開き、伸ばした舌で、雀ちゃんの頬を舐めた。
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ザラザラ。ぶつぶつ。
舌の感覚は髪の毛一本でも察知できるくらい、繊細。
その舌が伝えてくる感覚は、とても細かい凹凸。
その凸すべてが毛穴だと思うと、なんだか面白かった。
「ぁ、の……っ」
少しだけ掠れた声が、耳の近くで聞こえる。
切羽詰まったようなそれは、なんだか、わたしの悪戯心に火をつける作用でもあるみたい。舌先は頬から少し下へさがって、顎のラインをすすすと登り、耳たぶを掬うように舐めた。
「ぅ、…く」
何かを堪えるような声を喉奥で漏らして、雀ちゃんの首筋がまた、鳥肌になる。
そのあからさまな反応が楽しくて、彼女の耳たぶにちゅうと吸い付いた。
「んっ」
口から零れそうになった声を寸前で止めたような、慌てた声。
噤んだ口はすぐに薄く開かれ、短く浅い呼吸を繰り返す。
耳の近くで彼女のそれを聞いているうちに、わたしはアルコールとは別の理由で体が熱くなってくるのを、確かに感じた。
――どうしよう。
「ねぇ、雀ちゃん」
心臓を中心に体内がカッカと熱していくこの感覚。以前にも、こんな感覚に陥ったことはあった。
彼女の可愛い反応を目と耳で感じて、膨れ上がるこの熱。
「…ぇ……?」
わたしが問い掛けるように雀ちゃんの名前を呼んだ事に、数秒遅れで気が付いた彼女の反応にもまた、熱が増幅する。
密着していた体を少し離して、彼女の半分ほど蕩けた瞳を見つめた。
「しても、いい?」
何を、という無粋な質問は返ってこなかったけれど、意味に気が付いた彼女が驚いたように目を開いた。それから、落ち着きを無くす瞳の動きに少し目元を緩めて、彼女の唇を奪う。
唇同士を離して、至近距離で、吐息と共に囁いた。
「いたくしないから」
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