隣恋Ⅲ~のたりかな~ 72話


※ 隣恋Ⅲ~のたりかな~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 ~ のたりかな 72 ~

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 熱を持った蕾は私の舌よりも熱いのだろうか。

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 力を抜いて柔らかくした舌を、隙間なくぴったりと蕾に密着させた。
 丁度、舌にピアスを開ける場所だろうか。あの辺りに、愛羽さんの蕾がある。

「ん、んン……っ、は……ぁ……っ」

 押し付けられている舌がこれからどんな動きをするのか、期待と一種の恐怖に苛まれながら、愛羽さんが不安そうな甘声を漏らした。

 この暗闇の中で、私は一つ、発見したことがある。
 喘ぎ声には意外と、感情が込められているという事だ。

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 まぁ、人それぞれに喘ぎ方はあるだろうけど、私の恋人である愛羽さんはどちらかと言えば、息を詰め、声を押し殺すタイプの人だ。

 昔、まだ付き合っていなくて、ただの隣人同士だった頃、毎週火曜日にギシアンが聞こえていた。
 その頃は結構大胆に喘いでいた愛羽さんだけど、私と身体を重ねるようになって、その喘ぎ方は顕著な変化を見せたのだ。
 どうしてそんな急に変化が起きたんだ? という疑問が沸いたけれどもまさか本人に「昔と喘ぎ方変わりましたけどどうしたんですか?」なんて、聞けやしない。

 真相は闇の中、という感じで聞くに聞けない状態が続いているのだけど愛羽さんは、元々の喘ぎ方はこういうものだと言わんばかりに、急に大人しくなったのだ。

 簡単に言えば……元カレとの行為では、派手。私との行為では、地味。そんな喘ぎ方だった。

 ――いや地味って言う言葉もなんかちょっと語弊があるんだが。

 壁越しに聞いていたあの感じよりは随分控えめではあるものの、「地味」と言い切るには少し違う。
 身体へ篭る快感と熱が、堪え切れずに嬌声として漏れてしまったようなこの喘ぎ声は……聞いていて、こちらが堪らなくなってくる。

 喉に力を入れて締め、大きな声を出さないよう気を付けてはいるが、どうしても溢れて、零れてしまう。そんな声。

 甘くて、切なくて……。そして、私を随分と容赦なく煽る芳醇な婀娜を含む声。

 そんな形容がしっくりくるような喘ぎ方をする愛羽さんの声色は、息遣いや蕩け具合で響きが七色の変化を見せてくれるのだ。

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 ちなみに今の彼女は、私の次の愛撫の動向が読めない状態で不安なのと、快感への期待を含む控えめな声だ。

 ――ま……こんな冷静に解析できてるのも、最初のうちだけなんだけどな。

 セックスが深まるにつれて、私の昂りも増して、いつの間にか、分析することも忘れ、彼女をめちゃくちゃにしてしまうのだ。

 もっと理性を鍛えなくてはと、毎回、情事の後に思うのだけど、どうも上手くいかない。
 と、私の懺悔をしている場合ではなかった。

 舌を蕾へ押し当てたままじっと動きを止めていた私に焦れた愛羽さんの腰が、揺れ始めたのだ。

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 彼女が腰を揺らせば、当然、舌と蕾は擦れる。

「ひンッ、はっ……ぁ」

 ――ああ……そういうのも、いいな。

 ぞくんと痺れる脳でそう呟いて、私は一旦舌を引っ込めた。
 舌に残る愛液を喉へ流してから熱くなる食道に悦楽を感じる。

「そんなに動かすくらい、気持ち良くなりたかった?」
「……ち、が……うもん……」

 ふぅん? と笑みを含めて相槌をうって、逃げられないように抱えている脚を撫でる。

「でも今、自分で動いて、気持ちよくなってたよね?」
「……」

 否定、しない彼女。
 ……いや? 否定”できない”のか。

 無意識でなく、腰を動かした自覚はあるらしい。

 ――好都合過ぎるよ、愛羽。

 どうして貴女はそんなにも、私の思う通りになってくれるのか。

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「続き、していいよ」

 太腿の内側へキスマークを一つ付けてからそう告げた私は、先程と同じように、舌を蕾へぴったりとくっつけた。

「あっん……」

 再び触れた舌の感触に声をあげた愛羽さんは、その後、黙る。
 それはそうだ。
 私が一切の動きをしなくなって、与えられる快感が一つもないのだから。
 まぁ唯一あるとすれば、私の呼吸から生まれる風くらいなものだが、それもごく静かに繰り返しているので、彼女にとっては物足りなさを助長させる存在に違いないだろう。

「……っ、す、ずめちゃん……」

 そんな可愛い声で呼ばれたって、動かないよ。
 心の中でそう返すけれど、愛羽さんに聞こえるはずもなく。

 おずおずと催促するみたいに髪を引かれるが、私は動かない。

「……ねぇ」

 震える声が、懇願の色を混ぜて呼びかけるが、動いてあげない。

「ほんとに……?」

 ……しなきゃ……だめ……? と聞き取るのにも苦労するほど、囁きに近いような声で、愛羽さんが呟いた。

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