隣恋Ⅲ~のたりかな~ 56話


※ 隣恋Ⅲ~のたりかな~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※

※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 ~ のたりかな 56 ~

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 愛羽さんは、耳が弱い。

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 物理的に触れられる、舐められる、という接触にも弱いのだけれど、それだけではない。
 彼女は音に関しても弱い。

 だから声音を変えることで、彼女の心理をコントロールすることも少しだけならばできる。

 例えば今みたいに、低い声を使って囁き混じりにちょっとばかり色気のある事を言ってみると、あれだけ饒舌に喋っていた彼女がすっかり言葉を失ってしまっている。

 彼女の心を、一気に、性的な方向へ動かしたからだ。

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 別に心理学を専攻している訳ではないが、愛羽さんを見ていれば簡単に分かることだ。
 いつも、囁くとピクンと震えるところとか、声を低めれば堪らない様子で吐息を零すところとか。見ているだけで、攻略の鍵はいくらでもある。

 どこに彼女の手があるのかわからないので、ゆっくりゆっくりと近付けた唇がやがて、愛羽さんの耳の少し頬側に触れた。
 そのまま肌を軽く啄んでみれば、髪の毛の感触。もみあげあたりか、と瞬時に自分と愛羽さんの位置関係を把握して脳裏に全体図を思い描いた。

 私は両肘を彼女の横へ着いて体を支えていて、右脚は愛羽さんの脚の間、左膝は外側に着いている。
 そしてこの後、一旦離していた右脚を彼女の秘所へと押し当てようとしている、と。そういう計画だ。

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 相変わらず、黙ったまま吐息を漏らす愛羽さんの様子に少しだけ笑えば、息がかかって首を竦める彼女が可愛い。
 私はほんの僅かに唇を浮かせて舌を口腔外へと伸ばし、彼女のもみあげをざらりと舐め上げた。

「は……ぁんっ」

 温かく濡れた舌が這う感覚と、しゃりしゃりと髪の毛が擦られる音が鼓膜を揺すったせいで、甘声があがる。
 その声の発信源と受信先の距離が近いおかげで、私にもカウンターのように痺れが走り、うなじが粟立つ。が、ぎゅっと目を閉じなんとか堪えて、もみあげから耳の孔まで這うように舌を移動させた。

 わざと熱い息をかけてやりながら孔に舌先を軽く挿れてくるくると舐めて、右脚を秘所へと押し当てた。

「ん゛っ……ァッ……はっ……ぅ…ん…っ」

 甲高い声が甘くあがって、堪え切れずに私からも微かに声の混ざる息が零れた。

 ――どうして愛羽さんの声はこんなに……そそられるものがあるのか。……困る。

 攻めたい時にも、こちらの冷静さを奪うような催淫性のある声がたまらなくさせるのだ。これは本当に、困ってしまうが……この声が聴きたくて、わざと、意地悪をしてしまう私も私だとは思う。

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「ねぇ、聞いてるんだけど」

 彼女はさっきから喘ぎ声以外は黙ったままなので、答えをもらっていない。
 催促するよう言ってみれば、愛羽さんはすでに乱れ始めた呼吸混じりに「……ふえ?」と漏らす。

 ――あ……ぶな……っ…………。なんだその、可愛い声は……。落ち着け、落ち着け落ち着け。

 一瞬、我を忘れて、孔に舌を捻じ込んで啼かせてしまいたくなったが、寸前のところで我に還る。

「だから、気持ちいいこと、もっと、したくないの?」

 したいなら、ちゃんと、口で言って。と続けて言うが、興奮しすぎたせいで、どんどん自分の声が深夜帯の音域に近付いているのを感じる。
 最後には掠れてしまったが、まぁ耳に近過ぎる程近いから、何を言いたいかは伝わっただろう。

 したいなら口で言えというのに、いきなり、愛羽さんの両手が私の頬を包むようにして掴んだ。
 おっとそんな所に手はあったのかと驚いている私の顔をぐいと引き寄せながら、彼女が顔を横向きから上向きに変えたのは動きで理解した。その直後、唇が、重なった。

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