隣恋Ⅲ~のたりかな~ 55話


※ 隣恋Ⅲ~のたりかな~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 ~ のたりかな 55 ~

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 焦った声をあげたということは、それすなわち。

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 あるんだ……。愛羽さん、イッたふりとかあるんだ……。

「あのっ、わ、若い頃だからね? 雀ちゃんとのえっちでそんな事したこと、ないからねっ?」
「愛羽さん今も若いじゃないですか」
「四捨五入したら30だから」

 いつもはそんな事言いもしないくせに、私を慰める為か誤魔化す為か年齢の事まで口にする。
 怪しい……怪し過ぎる……。
 私とのセックスではした事ないって言うけれど……本当か……?

 真っ暗闇で見えないけれど、うすぼんやりとだけ分かる輪郭からアテをつけて、彼女の目辺りをじっと睨む。
 なにもみえないけど。

 私から見えていないとしても、もしかすると愛羽さんからは見えているかもしれない。そのときの為に、一応、ジトリと睨んでおくのだ。

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 黙り込んだ私にさらに慌てた様子の彼女が言う。

「ほんとに雀ちゃんとのえっちではそんな事しなくても感じてるからぁっ」
「本当に?」
「ホント! だってそんな事する必要ないくらいに気持ちいいから大丈夫」
「うーん……」
「いつも声出してるの、嘘っぽくないでしょ?」
「まぁ……気持ち良さそうではありますけど……?」
「だって本当に気持ちいいもん」

 胸を張って言っている愛羽さんだが、私を説得するのに必死すぎて、さっきから結構恥ずかしい言葉を連呼しているのに気付いてない。
 何度、「気持ちいい」と言っているだろうか。
 喘ぎ声混じりでこちらの興奮を煽らないけれど、そうやって冷静な感じでもはっきり「気持ちいい」と言ってもらえると、嬉しいものだ。

「本当に気持ちいいですか?」
「わざと喘ぐなんてしてないよ」
「気持ちいい?」
「ちゃんと気持ちいいから」

 言いきった。可愛い。
 全然気づいてないところもまた、可愛い。

「どんなところが気持ちいいんです?」
「どんなってそりゃあキスだって気持ちいいし、雀ちゃんの舌も気持ちい……て何言わせてるの……っ!」
「ああバレた」
「バレたじゃないわよ恥ずかしいなぁもう!」

 ばし、と二の腕を叩かれるが、服を着ていないので地味に痛い。

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「はー……もぅ……顔、あつ……なんて事言わせるのよ……馬鹿」
「愛羽さんがわざと喘ぐとか言い出すから」
「だから若い頃の話だってばー……あつ……」
「可愛い」
「るさい」

 どうやら、普段の愛羽さんの調子が戻ってきたみたいだ。
 声にも気怠さが消えてきたし、これならそろそろ、身体の回復を待つ休憩を終わらせてもいい頃合いだろう。

「愛羽さん」

 我ながら、声がうきうきしてるなぁ。自分の性欲に呆れがくるけれど、彼女を目の前にすると、どこからともなく沸き上がってくるのだから仕方ない。
 だって、こんなにも可愛いひとなんだし、性欲は尽きなくても当然かと思う。

 まだもう少し恥ずかしいのか、ちょっと照れたみたいにむすっとした声が、「なに」とだけ応える。
 輪郭と声の聞こえる方向からして、愛羽さんはどうやら横を向いている。
 手はさっき「あつい」といいながらパタパタと顔へ風を送るよう扇いでいたから、枕のあたりか、もしくは胸の上あたりに置いてあるかもしれない。

 その位置が把握できていないのは抵抗の心配が少しあって不安だが、まぁ、なんとかなるだろう。
 私はゆっくりと彼女の横向きの顔に近付きながら、もう一度、意図的に低くした声音で名前を呼んだ。

「な……に」

 うん。効いてる効いてる。

 途切れた声には若干の戸惑いと狼狽え。
 それまでのじゃれあう会話の時とはガラリと変わった声音に、何かを感じ取ったのだろう。

「もっと、気持ちいいこと、したくありませんか」

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