※ 隣恋Ⅲ~のたりかな~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ のたりかな 46 ~
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こういう時、時間をかけてはいけない。
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答えるのに戸惑えば戸惑う程、時間があけばあく程、よくない。
「抱き締めてほしい、とかですか?」
さらっと。
そう、自然体を装って、さも分かってましたよ、みたいに、私は告げた。
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バスローブを脱いで涼しくなったはずなのに、背中にじっとり汗をかく。それは多分、冷や汗だ。
いきなり与えられた愛羽さんからの質問に、正解しなくてはいけないプレッシャー。はんぱない。
「ふふふ……せーかい」
――よ……! よかったぁぁ……!!
心の中でガッツポーズ。
拳を振り上げるイメージで、もう、全身で喜びと安堵を表現。
私の肩に触れていた両手が、引き寄せるみたいに指先に力を入れ始めたので、誘われるままに私は愛羽さんの身体に覆い被さった。
「え、わ……!?」
驚きの声をあげたのは私だ。
どうしてそんな声をあげたかと言えば、愛羽さんと素肌同士が触れたから。
私は彼女のバスローブの腰紐を解いて前を開けさせた覚えはあるが、脱がせた覚えはない。だから、あのもふもふしたタオル生地がどこかに触れるものと思って身体を重ねたのに、覆いかぶさってみればそんなものは存在せず、しっとりとした彼女の絹肌が待ち受けていたのだ。
「脱いじゃった」
ぺろりと舌でも出していそうに、ちょっと悪戯っぽくおどけて言う愛羽さんは、私の首に両腕を回して抱き着いた。
あぁそういえば、抱き締めて欲しいんだったか、と薄れていた記憶を思い出して、彼女の両肩を手の平で包むようにして抱き締めた。
起き上がっていれば、背中や腰に腕を回して抱き締められるんだけど、愛羽さんが仰向けになった状態だと、抱き締めるにはやや不便な部分があるのだ。
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それでもなんとか抱き締めるに近い体勢をしばらくとっていると、私の耳のすぐ横で小さな笑い声が立てられ始めた。
「当ててみよっか?」
「なにをです?」
「本当はどんな答えをぱっと思いついたか」
――え。どうして、……それを。
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実は、だ。
実際口にだした「抱き締めてほしい」という答えの前に思いついた解答は一つあったのだ。思いついたあとにすぐ打ち消して言わなかったのだが、どうして愛羽さんがそれに気付いているのか。
彼女はなんだ? サトリなのか? テレパスでも使えるのか?
「キスして欲しい、って答えようとしたでしょ?」
「な……」
んで、正解が……分かるのか愛羽さんは。マジこわい。え、なんで?
「抱き締めてほしい、とかですか? の、”とか”って予防線まで張っちゃって。可愛いんだから雀ちゃん」
「な゛……」
ん゛で…………分かるのか。
私は愕然として、言葉を失った。
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首に回していた腕を解きながら、くすくすと笑みを零す愛羽さんが私からゆっくり離れた。
合わせるように寄せていた身体を離して、愛羽さんを見下ろすけれど、ぼやぁっと輪郭が分かる程度にしか見えない。
「正解?」
「せ、せいかい、です……」
コクコクと頷く。
見えないと分かっていても、そういうジェスチャーはすぐにしてしまう。
「ほんと。可愛いんだから、雀ちゃん」
「……私ってそんな、分かりやすいですか……?」
流石に、そんな心の中の考えまで読まれているとなると不安になる。
愛羽さんの横で、「今日も色っぽい。抱きたいなぁ」とか考えてたのも、全部、もしかしてバレていたんだろうか?
「んー……素直な分、わかりやすい、かな? でも」
「でも?」
ススス、と肩や首を撫でるように伝ってきた手が、私の頬に触れた。
親指が肌をゆっくりと撫でていく間、どんな言葉が後に続いてくるのかどきどきしながら私は待った。
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