隣恋Ⅲ~のたりかな~ 45話


※ 隣恋Ⅲ~のたりかな~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※

※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 ~ のたりかな 45 ~

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 肩を引かれるままに身体を重ねようとした。

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「あ、まって?」

 相変わらずとろんと甘えた声で制止がかかる。

 ――お、思わせぶりな事しておいて、ストップはないでしょう……!?

 と胸中でのみ叫ぶ。こんな本能剥き出しな叫び、彼女には聞かせられない。
 なんて私が考えているだなんて、全く、思っていないんだろうなぁ愛羽さんは。私の事たまに、天使だ、とか言うくらい恋愛フィルター掛かってるから。

 私はそんな綺麗な人間じゃなくて、欲にまみれまくってる悪い人間の象徴みたいなもんなのに。

「はい。腕ぬいて?」

 すでに腰紐の解かれていたバスローブを、なぜか、脱がされている。
 まぁ別に断る理由もないし、今から行為の続きをするにせよ、寝るにせよ、直接肌同士がくっついた方が気持ちいいことは、彼女から教えてもらったし、素直に脱ぐ。

 甲斐甲斐しく私の脱衣の世話をしてくれた彼女がどこかへバスローブを置いてくれた。真っ暗すぎて、どこに置いたのかそれすら見えない。
 照明を消して間も無く、目が暗闇に慣れていないからというのもあるが、目が慣れたとしても、これでは彼女が顔を赤らめても青ざめても、視覚的に感じ取ることは不可能だろう。

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「ん。おいで?」

 ……服を脱がせてもらったからだろうか。
 愛羽さんの中の母性が活発化したのか、「きて」から「おいで」に変わった。

 声の甘さは変化しておらず可愛いままだけれども、「きて」が”甘える言葉”ならば「おいで」は”甘やかす言葉”に該当する。

 年上の女性に弱い私の性質にガツンとくる。

 胸の奥がきゅんと絞られたような感覚に怯んで、喉奥で唸る癖は辛うじて抑えられたが、動けなかった。

 暗闇できっと、愛羽さんからも私の顔色も表情も見えてはいないだろう。照明を消してくれたことに改めて感謝して、私は静かに鼻から息を吸って自分を落ち着けた。

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「なぁに? 脱いだから照れてる?」
「そういう訳では」

 平静を装った声を出すけれど、まだどきどきしている。
 だって、愛羽さんの声が優しくて甘くて、彼女が言葉を発する度に、心臓の奥の所がきゅっとなるせいだ。

「うそ」
「え」
「何か今、うそ吐いたでしょ」
「み、見えてるんですか……」

 一体全体、どうして見抜かれたのか。この暗い中でも、愛羽さんの瞳は暗視ゴーグルでもかけたみたいに、こちらの動向・表情を読み取れているのか。

 彼女の言葉にギクリと体を震わせてから、まじまじと見下ろしてみるけれど、まったく、見えない。

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 くすくすと笑い声が聞こえて、私の両腕に愛羽さんの手が触れて、肘、肩と伝ってゆく。その様子から、彼女も視界良好な訳ではなくて、見えていないのだと分かるが、そうなるとやはり、どうして先程の嘘がバレたのか謎は深まるばかりだった。

「見えてないけど、声でわかるもの」

 毎日一緒に居るんだからそのくらい、ね? と囁くように言う声はとろとろに甘い。「好き」だなんて、電気を消してから一度も言われていないけれど、その声の成分には「好き」がふんだんに含まれている。

 どうしていきなりそんな変化をしたのか。と疑問が沸く。
 見られていないという安心感から、羞恥心が減ったせいなのか。もしもそうだとしたなら、この暗い中で彼女と行為をした場合……愛羽さんは乱れに、乱れるんじゃないのかとよからぬ期待を過ぎらせてしまう。

「雀ちゃんだって、分かるでしょう?」
「ぇ、ぁ……と、た、たぶん……?」

 ま、待て待て。なんだその会話の流れ。もの凄く焦る。
 だって、愛羽さんは言い当てて、私が当てられなかったらそれって凄く問題あるぞ。

「じゃあ、わたしが今、何して欲しいと思ってるか、当ててみて?」

 ――…………やばいぞ、これは……。

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